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【SUIREN】構想2年!? 結成時から考えていた『キングダム』のオープニングテーマ

2022.06.03
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音楽
インタビュー
1stシングル「黎-ray-」をリリースした音楽ユニット、SUIREN。この曲はTVアニメ『キングダム』第4シリーズのオープニングテーマにもなっているので、もう聴いたという人も多いのでは? ボーカルのSuiさんと、キーボーディスト / アレンジャーのRenさんのお2人に、楽曲についてはもちろん、SUIREN結成の理由、これから目指すところなどについてお聞きしました!


大好きな「キングダム」のコンペに参加するチャンスが!



──お2人の結成の経緯には、コロナ禍の影響が大きかったとお聞きしました。
 
Sui もともと僕もRen君も別々で音楽活動をしてたんですが、コロナをきっかけに音楽業界だけじゃなく、いろんな状況が変わったじゃないですか。その中で、あくまで僕の目線から話すと、コロナで一回活動がストップして、どうしようかなとなってた時にRen君から「一緒にやらないか」と誘ってもらったのがきっかけですね。
 
──それまでは、お互いがお互いに対してどういう認識だったんですか?
 
Sui 僕から見たRen君は、「どプロ」というか(笑)、バキバキに活躍していて、すごいプレイヤーだなと思ってましたね。音楽家としてすごく尊敬する先輩という感じでした。何度か一緒にプレイしたこともあったんですけど、僕からは「すごいキーボーディストだな」という、ただそれだけですね。
 
Ren 僕もシンガーソングライターの1人と認識してまして、彼がさっき言ったように以前、コロナ禍になるずっと前に一度セッションをしたことがあって、その時に「すごくいい声だな」と思いました。そこから各々活動していて、関わることはほとんどなかったんですけど、活動の状況は何となく外から見ていて、僕は自分で曲を作ったりしてアーティスト活動をもう一度頑張ってやっていきたいなと思っていたんですね。ただ自分では歌えないので、ボーカリストが必要だというところで、いろいろ探す中で以前に一度やった彼の声のよさとかポテンシャルの高さを覚えていたんです。ただそれぞれ当面の活動があったので、とりあえずSUIRENの構想も含めて「こういうことをやってみたいんだけど」という打診をしたのがスタート、という感じですかね。
 
──一番決め手になったのはSuiさんの声だったんですね。
 
Ren そうですね。僕は歌唱力というのはあまり期待してなくて、後から鍛えて伸びるもの、どんどん歌っていけばうまくなるものだと思ってるんです。でも声ってなかなか変えることは難しくて、その人の持ってる先天的なものだと思うんです。僕が彼の声ですごくいいなと思っているのは、中性的と言いますか、力強すぎも弱すぎもしないというか、男性ボーカルらしからぬ部分がすごく好きですね。僕がもともとやりたかった音楽というのは、「綺麗」とか「繊細」というワードがすごく大きな要素で、そこに合うボーカリストを考えた時に力強く「オリャー!」というタイプよりも儚く中性的なタイプというイメージがあって。でも、男性がよかったんです。そこが決め手になりましたね。
 
──お2人はこれまで、顔もハッキリと分かる形では出されていませんでしたよね。そこにはどんな意図が?
 
Sui ビジュアル面に関しては、あまり最初の段階から固定概念とか先入観を持ってほしくないなというのがあって、まず大前提としては僕らの音楽を聴いてもらいたいと。それでメディアとかSNSではあまり顔が分からないようにしてました。でもライブでは、ちょっと照明を暗めにしたりはしてましたけど、かぶり物とかしてるわけじゃないので、顔を見てる人もいるかもなという感じでやってきました。
 
──結成にあたって、最初に目指したところというのは?
 
Sui 僕ら1人ずつでは届かないところまで届けたいなというのがまずありました。2人でやる意味というのはそこにあるのかなと。僕も作詞も作曲もするんですけど、そこにRen君の音が加わるのがすごく大きいんです。僕1人じゃこうはならないなというのは、すごく感じます。実際、ソロでやってた音楽とは全然違いますし。
 
──そこで今回1stシングルとしてリリースされる曲、「黎-ray-」なんですが、これはTVアニメ『キングダム』第4シリーズのオープニングテーマということで、それありきで作られた楽曲なんでしょうか?

Sui そうですね。その頃、僕らは事務所とかも入ってなくて完全フリーだったんですけど、TVアニメ『キングダム』のオープニングテーマのコンペに参加させていただくチャンスを偶然いただけて。『キングダム』は大好きだった。ので、これしかないだろ!ってものを作って出させていただきました。

──『キングダム』がそんなにお好きなんですね。
 
Sui 大好きですね。でも、僕も読んではいたんですけど、Ren君の影響も大きいです。Ren君はSUIREN結成の時に『キングダム』にどハマりしてて。楽曲制作の作業でRen君の家に行くと全巻揃ってるんで、分業で僕の手が空いた時にはずっと『キングダム』を読んでて「いつか『キングダム』の主題歌とかやれたら最高だよね」って話をしてたんですよ。Ren君は『キングダム』が大好きすぎて、「俺たちがやるべきだ」「俺が作ったらこうなる」ってずっと言ってて、そしたら2年後ぐらいに本当に、偶然にも、コンペに参加させていただくチャンスが巡ってきて……という感じです。

Ren 『キングダム』は本当に僕にとってのバイブルというか、人生の中でも転機になるような作品なんですね。まず何と言っても熱さの部分。みんながまっすぐに戦いに向かって突き進んでいく熱さですね。あとすごく好きなのは、くすぐられるものがあるところなんです。戦略だったり考え方は千差万別で、みんな違うんですけど、その中で勢力拡大を狙っていると。そこにすごく面白さがあって、熱さと巧妙さみたいなものが一緒に味わえる、極上の作品です。
 

「存在証明」が作詞のキーワード



──その大好きな『キングダム』のTVアニメのオープニングテーマを作るにあたっては、どういうところからスタートしたんですか?
 
Ren 『キングダム』は漫画やアニメを通して、少なからずポップなイメージを抱かれると思うんですけど、実際の作品は戦の話なので、僕としてはポップな要素はないと思っています。本当に命をかけた戦いがテーマになっているので、僕としては非常に重い作品と捉えていて。それを音にするとなると、サウンドに重厚感を入れるというのは一つのテーマとしてありました。そこでSUIRENとして何ができるかと考えた時に、さっきも話に出た儚さ、美しさの部分。これが命をかけた戦いと相反するかというと、ぼくはそうは思わなくて、命をかけた戦いをするからこそ儚いというのはすごくあると思ってます。そこにSUIRENのエッセンスとして儚さ、美しさを入れた曲という感じですね。

Sui 歌詞については、僕は今回初めて何かの作品に対してのタイアップという企画に携わったんですけど、SUIRENらしさというのはサウンド面で十分出せていると思っていたので、それ以上に『キングダム』でも描かれている「何のために戦っているのか」とか、彼らが背負っている宿命みたいなものに没入して書いたというか。だから純度100%『キングダム』のために書いた詞なんですよ。明確に僕が思い描いているセリフとかシーンとかもあって、歌詞の中に散りばめられたりもしてるんですけど、だから日常の中で僕らが抱く感情とかの描写は極力削ぎ落として、この世界観というものを自分なりに描いたつもりです。

──その意味では、SUIRENのこれまでの曲とは真逆に近いような方向性になっていませんか?
 
Sui 詞に関してはそうかもしれません。でも人間が根本的に持っているものというか、僕は詞を書く時に「存在証明」というものを自分の中で意識しているんですね。それは「何のために生きているのか」とか、僕の目線だと「何のために歌っているのか」ということだし、僕らの音楽を聴いた人がそれを自分に置き換えた時には「何のために生きているんだろう」とか「でも僕はここに生きているんだ」ということになると思うんですよね。「黎-ray-」という曲は純度100%『キングダム』のために書いた曲だし、日常的な感情は削ぎ落としてるんですけど、歌っているのは彼らが何のためにその国に生まれて、今何のために生きていて、何のために戦っているのかということに関して、ものすごく命を燃やして自分が光となって生きていけっていうことなんですね。歌詞としては、もしかしたら『キングダム』が好きな人にしか伝わらないのかもしれないんですけど、そういう点では僕が今まで書いてきた詞とそう遠くはないんじゃないかと勝手に思っている部分はあります。
 
──サウンド的には先ほど言われていたように重厚感もあって、音数もすごく多いですよね。MVでは2人を含めたバンド編成5人プラスバイオリンの演奏が確認できますが。
 
Ren 音数は確かに多いと思います。それが重厚感を出しているかなと。SUIRENのサウンドの中でもすごくヘビーな方で、特にギターの比率がすごく高くて、それがまさに重厚感につながっていると思います。じゃあ、そこで美しさとか儚さをどう演出するかというところで、僕のピアノであったり弦楽器を入れています。あとは、中国のお話なので、後ろのほうから中国らしい音が聞こえてくるというのも意識して作りました。
 
──もうオンエアで流れていますが、視聴者の方の反響というのは何かありましたか?
 
Sui SNSをエゴサしたりして、いろんな意見を見ました。否定的な言葉も含めて、そこに僕は手応えを感じていて、要するに今まではそんなことすら言われてはこなかったんですよ。今までの僕の音楽活動の中で「アイツの曲、好きじゃない」と言われるような機会はなかったんです。僕の曲が不特定多数に届いていなかったから、そういう意見も聞こえてこなかった。そういう意味で言うと、こういう大きな作品で自分たちの曲が採用されたことで、「こんなにもたくさんの人たちに届いたんだな」と思えて、それはシンプルにうれしいですね。いい面も悪い面も含めて、たくさんの人にちゃんと届いてるんだなというのは感じられました。ただ僕はいい意見の方がうれしいので(笑)、「今回のオープニングは好きだ!」という意見にはすごくうれしさを感じています。

──avexからの第1弾がこの曲になるわけで、それがお2人の大好きな『キングダム』のテーマ曲ということで、すごくいいスタートですね。
 
Sui そうなんですよね。ただそもそもこの曲がなかったら、僕らがavexさんでというお話にもならなかったかもしれないので。
 
Ren 本当に、とてもいいスタートだと思います。ただ逆に言うと、これに見合うだけの活動をこれからしていかなきゃいけないというプレッシャーはもちろんあります。最初だけってことにならないように、きちんと1曲ずつ作り上げていくということを、これからもやり続けていかないとなとは思っています。
 
Sui 僕らを選んでくれた人たちとか、今の時点ですでに推してくれている人たちとかがいるし、チームも増えてくるじゃないですか。その人たちの期待は本当に裏切りたくないですし、「SUIRENと一緒にやっていてよかった」とか「SUIRENを応援していてよかった」と言われて、みんなが報われるようにしないととは思っています。
 

自分たちがカッコいいと思えるものを毎回更新していきたい!



──2曲目は「PLAYer」ですね。先ほど「存在証明」という言葉が出ましたが、この曲のテーマはそこかなと思っていました。
 
Sui まさにそうですね。僕らの曲の作り方って、たいていの場合はまずRen君がトラックというか、オケの部分を作って、そこに僕が、メロディーをつけて、歌詞を乗せていくんですよ。だから、出来上がった曲からインスピレーションを受けて詞を書くんですけど、「黎-ray-」と比べるとこれはだいぶ今っぽい曲、というかサウンドだなと思うんですよね。だから詞も今っぽいギミックというか、「存在証明」をどう表現するかという時に、例えばネット文脈であったりとか、ボカロ文脈だったりというところに親和性の高いものがパッパッと頭の中に浮かんできたんです。その中で今回はRPG、ロールプレイングゲームという言葉をネタとして使ってるんですけど、その中でどう存在証明を表現していこうかなという感じで書いた曲です。
 
──サウンドの方はピアノが生きていて、わりとジャジーな展開ですよね。
 
Ren おっしゃる通りですね。「黎-ray-」はロックな楽曲で、「PLAYer」の方はジャズやフュージョンだったりR&Bだったりっていうジャンルがベースになった楽曲だなと思っています。
 
──ピアノの躍動感が印象的でした。
 
Ren こういうのは僕の好きな感じです。本当の究極は、もっと音数の少ない音楽が好きだったりもするんですけど、音数が多くて躍動感がある曲って、刺激的じゃないですか。七味みたいな感じで、辛さの刺激につながるというか。自分の中でもそういうモードもあって、この「PLAYer」はまさに「ちょっとやったろ」っていう部分ですね。ちょっとスパイス入れてやろうという。
 
Sui 何曲か聴いてもらうと、けっこう振り幅があると思うんですよ。そこには、俺たちの音楽的な引き出しというのがここまであるんだぞというのをちょっと見せたいというのもあったりします。
 
──3曲目は「一縷 (Acoustic ver.)」はアコースティック・バージョンということもあって、SUIRENのキャッチフレーズにもなっている「水彩画のように淡く儚い音を描くユニット」という部分にもピッタリな曲になっているように思えました。
 
Sui 僕たちは2人のユニットで、その周りのものを一番削ぎ落とした形が「ピアノと歌」なので、その意味で一番SUIRENらしい楽曲になっていると思います。これも曲先行で作詞したんですが、この歌詞を読んだ時に恋愛のことを歌った歌だと思う人もいると思います。もちろんそれは否定しないですが、僕はどちらかというとこの曲で人間関係のことを扱ったつもりです。僕は「HUNTER×HUNTER」という漫画が大好きなんですけど、その中に出てくる幻影旅団という盗賊団の仲間同士の関係性を表したもので好きな言葉があるんですね。「俺たちをつなぐ関係はどんな糸よりも細い。だがこの糸はダイアモンドよりも硬い」というもので。僕たちにとって本当に大事な人との関係性って、一見したら本当に細い糸でつながっているように見えても、その糸の硬さというのはそれぞれ違うんですよね。僕とRen君の関係も、ただの友達でもないし家族でもないし、もちろん恋人でもないけど、それ以上でもあるし、同じ目標に向かっていて、いろんな見方ができると思うんですよ。その糸の話は、この曲を書くにあたってインスパイアされた部分ですね。
 
──この曲の演奏、Renさんのピアノに関しては、まさに本領という感じでしょうか。
 
Ren そうですね、こういう演奏が僕は好きです。今までのライブでもやってきたんですけど、ボーカリストと2人で呼吸を合わせてやるというのはすごく好きですね、僕は。
 
──ライブでの演奏については?
 
Ren 3月に一度だけ行ったワンマンライブでは、サポートでギターとベースを入れて行ったんですが、「黎-ray-」のMVみたいな編成でやりたいと思っています。最終的には後ろにオーケストラを従えて。これはまだ夢ですけどね(笑)。
 
──これからはライブの予定は?
 
Ren やりたいですね。アーティストみんなそうだと思うんですが、「作ること」と「届けること」はセットだと思っていて。作った曲を配信したりするのも大事ですけど、生の声で届けるというのもすごく大事だと思うんですね。もちろん、今はコロナとかでイレギュラーなことはたくさんあると思うんですけど、僕らなりのプラットフォームというか届け方というのは確立していかないとなと思っています。
 
Sui 3月のライブの時は初めてのワンマンだったので、当日を迎えるまでドキドキしてました。ちょうどまん延防止等重点措置が明けるかどうかというタイミングで、本当に開催できるかということでちょっとドギマギする中で準備してたんですけど、お客さんの入りがどうかとかいうことじゃなくて、初めてSUIRENとしてステージに立って、パッと照明がついた時に、お客さんの顔が見えるんですよ。そしたら泣いてる人もいっぱいいて、この2年間、僕らは表に出ずにインターネットの中だけでやってきたので、お互いがお互いの存在を初めて確認し合えた瞬間だったんです。その感動とかみんなの涙で、あの瞬間に本当の意味で僕らがSUIRENになったなと思いました。
 
Ren 結成当初からライブはやりたかったんですが、その頃はコロナのまっただ中だったし、やるならお客さんが来てくれなければ意味がないので、そこを含めてタイミングをずっと探っていたんです。3月は僕らの中で一つの区切りというか、メジャーでやり始めるにあたって環境も変わると思うので、そこまで自分たちがやってきたことの答え合わせを形にしてキチンと残したいということで開催したという感じです。


──この先はどうしていきたいですか?
 
Ren どこまでもいきたいよね(笑)。
 
Sui こういう質問って、よくあるじゃないですか。武道館でやりたいとか、アリーナでやりたいとか。どれもやりたいというのも事実ではあるんですけど、本質的なことを言えば、武道館で1万人の前でやるのも、路上ライブで1人の前でやるのも結局は一緒じゃないですか。自分のためにやってるし、目の前の人のためにやってるという意味では。でも、僕らは見てくれてる人たちを感動させるためにやってるし、ここまで行ったら満足とか、そういうのは際限がないんですよね。
 
──なるほど。
 
Sui 僕らがピュアな子供の頃に思い描いていた「歌う人ってこういう人」という漠然としたイメージって、アリーナとか武道館とかで歌ってる人なんですよね。だからそこに行くのは当たり前というか、そこには行かなきゃなと思ってます。だから具体的なこの会場・場所で、という感じではないですね。
 
──創作活動についてのビジョンは?
 
Ren あんまり具体的な何かというのはないんですけど、音楽というのは好き嫌いがありますから、たくさんの人に届けたいと思うのと同時に、好きになってくれるかどうかは、みんなが選ぶことだと思うんですよ。じゃあ何を頑張ってやるかというと、自分たちの限界を常に突破したいというか、自分たちがカッコいいと思えるものを毎回更新して作れるようになって、それを世に放つということをしていきたいですね。曲によっては「今回のはちょっと違うな」とかもあると思うんですけど、でも自分たちが常にMAXでやっていれば、その気持ちは必ず曲に乗って届くと思うんですよ。そこは妥協したくないと思っています。



「黎-ray-」
2022.5.25 ON SALE

TVアニメ「キングダム」 オープニング・テーマ

 
 


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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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