【井上紗矢香】応援の旗を振るような気持ちで歌っていきたい【「めざまし8」2022年2月度エンディングソング】
2月21日に新曲「旗印」を配信リリースする井上紗矢香さん。卒業の時期にピッタリの力強い曲と歌詞になっていますが、この楽曲が制作された背景とは? また昨年、3週間ごとに発表された10曲が同日にアルバム『my tiny days』として配信され、さらに2月26日にはバースデーライブが東京で初のワンマンとして行われ……と、話題満載でもあります。そのあたりも含めて、いろいろとお聞きしました!
新しいことを始める人、悩みを抱えた人の後押しになれれば
──2月21日に配信リリースされる「旗印」ですが、リリース時期とジャケットのビジュアル、そして歌詞の内容からすると「卒業ソング」なのかなと思ったりするんですが。
井上 そういう意図で作ったわけではないんですよ。コロナ禍の中で日々変わっていく状況の中で、「自分はどうしたらいいんだろう?」って悩むことが自分自身も多かったし、いろんな人にとっても多いだろうなと思った時に、状況やルールが変わっていくからこそ、「自分はどうしたいのか」というのをちゃんと明確に旗印として掲げて生きていけたらいいなという思いを込めて作りました。ただ、リリースされるのが2月の下旬ということで、受験だったり就職だったり、そうでなくても春先って新しいことを始められる方も多いと思うので、そういう悩みを抱える人たちの後押しとなれるような曲にできたらいいなと思っています。
──歌詞が、今回特に散文的だなという印象を受けました。出だしが「欲望の旗を掲げよ」という文章で始まっているためでもあるのかなと思うんですが。
井上 散文的にしようと特に思ったわけではないんですが、自分の中の悩みとか迷いを振り払うような力強い気持ちで作ったので、そういうところで語尾が言い切る形になったりしたのかなとは思います。
──「ようだ」「ない」など、他の楽曲よりも特に語尾が強い印象はありますね。
井上 いろんな曲を作っているので、力強い曲もあるんですけど、これはそういう系統ですね。
──楽曲全体も疾走感のあるバンドサウンドになっています。作詞される時点である程度メロディーラインもイメージされているというお話を以前に伺ったことがありますが、今回もそうだったんでしょうか?
井上 そうですね。いつも詞を書く時点で言葉とか曲の持つ雰囲気というのは自分の中でできているので、この曲は力強い、疾走感のあるものが自分の中で鳴っていました。
──今回、作曲にかわいえいじさんが入られているのは、そのイメージを具現化するため?
井上 はい。もともとこの歌詞が最初にできた時に、自分でメロをつけてみようかとも思ったんですけど、何パターンか作ってみて、自分の中でどうもしっくりくる感じがなかったんですね。それで一度はボツにしようかとも思ってたんですけど、その話をたまたまスタッフの方にした時に、「じゃあ他の人にメロをつけてもらうというのは?」というご提案をいただいて、かわいさんにメロをつけていただいて、共作という形になりました。その過程で、私がどういう思いで歌詞を書いたかとか、こういう雰囲気の曲にしたいということをお伝えしたら、かわいさんが素晴らしいメロとアレンジを作り上げてくださったので、これならぜひ世に出したいと思うようになりました。
──他の人との共作というのは初めてですか? 少なくとも公式にリリースされたものとしては初めてだと思いますが。
井上 リリースされたものだけでなく、初めてでした。
──初めての共作という点ではどうでしたか?
井上 いつもはハマるメロディーがなければどんどんボツにしていくんですよ。それでも、強い思いを込めた歌詞ができて、自分の中では完結できなかったけれども、どうにかそうやってメロを乗せてもらうことで、よりよい形になって、結果皆さんの元に届けられたのはいいことだなと思います。
──曲調に伴って、歌唱自体も力強く、かつ伸びやかだと感じました。そのイメージも作詞の段階からありましたか?
井上 そうですね。力強い曲にしたいなと思っていたので、生命力を損なわないように気をつけて歌っています。
──バンドサウンドということもあり、ここまで力強い楽曲というのは初めてなのでは?
井上 でも、自分でデモを作っている段階ではアップテンポのものだったりオシャレなものだったりと、いろんなタイプの曲があるので、私の中ではあまり珍しいことでもないんですよ。ただ、世に出ているものからすると少ないかもしれないですね。
自身の人生で岐路に差しかかった時の「旗印」は?
──これまでリリースされた楽曲からすると、聴いた人も「今回はちょっと違うぞ」という印象があると思います。ただご自分の中では、変化を意識したというわけではないということですね。
井上 そうですね、私からすると意外な部分ではないので、意識したわけではないですけど、でもそう思ってもらえるのであれば、そうやって楽しんでいただければとは思います。
──テンポももっと緩やかな楽曲の方が多いですよね。
井上 去年、3週間に1曲ずつ配信させてもらうという企画をやったんですけど、その時はアレンジも自分でやっていたので、そういうもっと緩やかな曲の方が多かったというのもあると思います。ただ、知らない人の方が多いだろうとは思うんですけど、エイベックスからデビューさせてもらう前、最初に出した『シンデレラ』というEPに入っている「FLY」という曲もすごく激しい曲だし、珍しいとは思ってないんですけど結果的に私の新しい面を感じてもらえるなら、それはそれでいいかなと思います。福岡にいた時代は、ライブとかでもいろんな曲を披露してきたので、それを知っている方からすると「こういうのもあるよね」となるかもしれません。
──なるほど。昨年のメジャーデビュー曲「無重力飛行士」以降からすると新鮮に聞こえますが、もともと持っていたものでもあると。
井上 はい。今、世に出しているものは、いろんな表現をしてきた中のごく一部だと思っています。
──ただ、井上さんのそういう面を知らなかった人からどんな反応があるかは、楽しみだったりしませんか?
井上 去年、10曲リリースした中でも「いろんなタイプの曲があって驚きました」みたいな声もいただいたので、そういう意味でも反応とか感想は楽しみではありますけど。やっぱりいっぱいもらえるとうれしいですね。
──歌詞も曲も、最後ブッツリと終わりますよね。
井上 歌詞は最後、「何食わぬこの世界を揺らして魅せたいから」という言葉で終わってるんですけど、何か言い切る形よりもこれがいいなと思って。アレンジも、こういう形でいただいた時に、私自身すごくしっくり来たんです。
──そこまで強い決意を歌ってきて、最後の部分で「なんて都合の良いことは言い切れないけれど」と、自分でひっくり返すような形になっていますよね。そこが面白いなと思いました。最後まで言い切るわけではないんだ、というところが。
井上 それは、自分自身が音楽の道に進むと決めたりとか、そこからうまくいかないことの方が大半だというのは重々分かっているので、単純に「頑張ればうまくいく」という歌にはしたくなかったというのもあったからですね。
──いいことばかりを言って終わることはできなかったと。
井上 はい。でも、都合のいいように進んでいくわけではなくても、その時にも旗印というか、自分の中でブレない軸とか「自分が決めた」っていう決意があれば、うまくいかない中でも進んでいけるんだという曲にしたかったので。
──この楽曲をライブで披露する際には、バンドをバックにとか、そういう可能性もあったりするんでしょうか?
井上 やっぱりバンドが似合う曲だと思うので、やってみたいなとはすごく思います。今までも要所要所でバンドでのライブもやってきたんですけど、弾き語る楽しさとはまた違った、音が合わさる楽しさがありますね。
──弾き語りの時とは、シンガーとして、パフォーマーとしての意識も変わるものですか?
井上 弾き語りは弾き語りで、その場のタイミングを全部自分でコントロールできるんですよ。「あ、ここでタメたいな」と思えばそれもできるし。それこそ、語るに近いようなことをお客さんと1対1でできるような楽しさがあるんですけど、バンドはより自分の中で鳴ってる音に近いものをお客さんに伝えられますし、単純に人がたくさんいるので、みんなの中でエネルギーが増幅していくというような感覚があるので、どっちも楽しいんですよね。だから、それぞれで違う感覚を味わいながら歌ってます。
──さて、人生における岐路だったり分岐点だったりというのがこの楽曲のイメージのベースにあると思いますが、ご自身にとっての岐路というと、上京されたことですか?
井上 いろいろあるんですけど、私の中で一番大きかったのは、上京よりも高校を卒業する時かなと思っていて。18歳で実家を出てひとり暮らしをするタイミングでもあったし、普通科の高校から音楽の専門学校に進学するという形だったので、完全に「音楽の道に一歩踏み出すぞ」ということで、一番大きかったなと思いますね。
──その時はけっこうな決意が必要でしたか?
井上 そうですね。やっぱり普通科から音楽の道に進むのはなかなか稀だったりもするので、親に「こういう道に進みたいです」と言う時だったりとか、学校に志望を提出する時とか、一つひとつが後戻りできない道を進んでいる感じがありました。趣味じゃなくてガッチリと音楽をやるということで、自分の中では決意みたいなものがありました。
──その時の「旗印」って、今思うと何だったんでしょう?
井上 何でしょうね(笑)。もちろん、楽しいことばっかりじゃないだろうし、苦しいこともたくさんあるだろうなということを予想して進んだ道ではあったんですけど、「どんなことがあっても、これからの道は自分で決めた道だから」というのは、自分の中で大きく掲げたものではありましたね。
──上京する時はまたちょっと違ったんですか?
井上 その時は、住む場所は変わるんですけど、一人で暮らすというのには慣れていたし、私は「声だけオーディション」というオーディションで今があるんですけど、それを受けた時はまだ福岡にいて、ちょこちょこ東京に通ったりもしてたんですね。だから東京に知り合いが全くいないということでもなかったので。まあ、どちらも大きな岐路ではあるんですけど、より覚悟を決めて進んだのは18歳の時だったなと思います。
──この楽曲はどういう人に聴いてもらいたいですか?
井上 迷ったり悩んだりしてる人に聴いてもらいたいですね。それで、「私はこうしていきたい」という気持ちの後押しになればうれしいと思いますし、私からはそれこそ応援の旗を振るような気持ちで歌っていこうと思います。
──ちなみに、ご自身にとってそういう存在の楽曲というのは、何かありますか?
井上 一番は、コブクロさんの「轍」という曲ですね。それこそ、もがき苦しみながら前に進んでいくという曲で、聴くたびに「頑張ろう」って思える曲かなと思います。この「旗印」も、誰かにとってそんな存在になれたらうれしいですね。
アルバム、バースデーライブ、そして今後の目標は?
──そしてこの楽曲は、「めざまし8」の2月エンディング曲に決定したんですね。
井上 はい。それを聞いてまずビックリしました(笑)。小学生の頃とかも、朝に見ながら準備したりしていたのを覚えているので、ウソみたいというか夢みたいというか(笑)。この曲は節目とか区切りを歌った歌ではあるんですけど、それって結局「始まり」ということでもあるので、朝にこの曲が流れるというのは、すごく似合ってるなと思って。晴れた青空の下が似合う曲だと思うので、選ばれてうれしいなと思いました。
──これを聴いて通勤なり通学に出発する人がいるわけですよね。
井上 それを考えると楽しいですよね。朝起きて、今から学校や仕事に行かなきゃいけないっていう時に「よし!」って思えるスイッチになれたらうれしいですね。
──「無重力飛行士」もドラマの主題歌でしたが、またTVからご自分の歌が聞こえてくるわけですよ。
井上 そうなんですよね、何回聴いても慣れないというか(笑)。
──「旗印」が配信される2月21日には、アルバムの配信も決まったそうですね。昨年、3週間ごとに配信リリースされた10曲が全部収録されるそうですが、この配信企画の時点で、アルバムにまとまるというのは決まっていたんですか?
井上 いえ、そういうわけではないです。でも去年は6月から12月までずっと、この配信リリースの曲のことを考えながらやってきた感じだったので、それが一つにまとまるというのはすごくうれしいなと思います。アルバムのタイトルが『my tiny days』っていうんですけど、私の曲は実体験もあるし、いろんなものを見たり聞いたりした中で感じたものの中から作ることもあるんですけど、生きていく日々の中で、私の心が揺れた瞬間に生まれてる曲だなと思うので、そういう私のまさに「tiny days」、ささいな日々がギュッと詰まったアルバムになると思います。だから一挙に聴いてもらえたら、また楽しいんじゃないかと思います。
──それぞれの楽曲は独立して作られたものですが、アルバムの中の1曲となると、また違った表情が見えそうですね。
井上 そうですね。続けて聴いたらまた面白いと思います。曲順はリリースした順番そのままなので、一緒に3週間、「次の曲は何だろう?」って心待ちにしてくださった方たちとかは、まさにその時間軸を追いながら聴けたりするんじゃないかと思います。
──曲順がリリース順のままというのは、結果的にそうなったということなんですか?
井上 そこはあまり迷わなかったですね。例えば「狐火」という曲はお盆っぽい雰囲気の曲だよねということで8月にリリースしていたりとか、最後の方の「風邪」という曲が冬にリリースされていたりということもあったので、時間軸に沿って収録というのは、一番自然な形だったりするのかなと思います。
──さらに2月26日にはバースデー記念ライブが行われるということですが、どんなものになりそうですか?
井上 もう歌う曲とかはだいたい決めているんですが、上京直後にコロナ禍に入ってしまったこともあって、なにげに東京で初のワンマンライブなんですよね。あと、福岡の頃も含めて誕生日当日にドンピシャでライブとかをやったことがないので、それも初めての試みなんです。去年配信リリースした10曲からももちろん歌いたいなと思ってますし、福岡にいた時代からずっと歌い続けてきた曲も歌いたいなと思ってます。またこのライブで初披露する曲もありますし、「旗印」も歌いたいと思っているので、今の私の全部を込めて歌いたいです。
──2021年は10曲リリースが活動のメインを占めていたかと思いますが、今年はそれがアルバムという形にまとまり、バースデーワンマンライブもあるという序盤を迎えています。この先はどうしていきたいですか?
井上 去年10曲出させていただいて、今年は早々に「旗印」も出てアルバムが出たりバースデーライブもあったりと賑やかに始まっていくので、その勢いそのままに、もっともっと活躍していけたらと思います。そして、私の好きな音楽をもっともっと発信していける1年になったらなと思います。
──今年、「これはやりたい!」ということはありますか?
井上 何だろう? ……今年かどうかはさておき、いつかは日本武道館でライブをしたい!という目標はありますけどね。私は空手をやっていたので、空手の大会を見に行ったことはあるんですけど、音楽の場としての武道館はまだ見たことがないんですよ。そういう意味でもすごく憧れですね。空手で行った時は「ここでライブが行われるんだな」という目線で見ていたので、いつかそういう場に立てたらと思います。
「旗印」
2022.2.21 デジタルリリース
フジテレビ系「めざまし8」2022年2月度エンディングソング
『my tiny days』
2022.2.21 デジタルリリース
井上紗矢香 Birthday LIVE 2022
2022年2月26日(土)
場所:下北沢Laguna
OPEN 12:30/START 13:00
前売 4000円(D別) 当日 4500円(D別)
*おみやげ付き
入場予約フォーム
https://tiget.net/events/161739
【井上紗矢香 Official Website】
https://avex.jp/sayakainoue/
【井上紗矢香 YouTube】
https://www.youtube.com/channel/UCam9iuq9w_PaS4VYg6IJLhQ
【井上紗矢香 Instagram】
https://www.instagram.com/s_sweet.h/
【井上紗矢香 Twitter】
https://twitter.com/inouesayaka0226
【井上紗矢香 TikTok】
https://www.tiktok.com/@inoue_sayaka
新しいことを始める人、悩みを抱えた人の後押しになれれば
──2月21日に配信リリースされる「旗印」ですが、リリース時期とジャケットのビジュアル、そして歌詞の内容からすると「卒業ソング」なのかなと思ったりするんですが。
井上 そういう意図で作ったわけではないんですよ。コロナ禍の中で日々変わっていく状況の中で、「自分はどうしたらいいんだろう?」って悩むことが自分自身も多かったし、いろんな人にとっても多いだろうなと思った時に、状況やルールが変わっていくからこそ、「自分はどうしたいのか」というのをちゃんと明確に旗印として掲げて生きていけたらいいなという思いを込めて作りました。ただ、リリースされるのが2月の下旬ということで、受験だったり就職だったり、そうでなくても春先って新しいことを始められる方も多いと思うので、そういう悩みを抱える人たちの後押しとなれるような曲にできたらいいなと思っています。
──歌詞が、今回特に散文的だなという印象を受けました。出だしが「欲望の旗を掲げよ」という文章で始まっているためでもあるのかなと思うんですが。
井上 散文的にしようと特に思ったわけではないんですが、自分の中の悩みとか迷いを振り払うような力強い気持ちで作ったので、そういうところで語尾が言い切る形になったりしたのかなとは思います。
──「ようだ」「ない」など、他の楽曲よりも特に語尾が強い印象はありますね。
井上 いろんな曲を作っているので、力強い曲もあるんですけど、これはそういう系統ですね。
──楽曲全体も疾走感のあるバンドサウンドになっています。作詞される時点である程度メロディーラインもイメージされているというお話を以前に伺ったことがありますが、今回もそうだったんでしょうか?
井上 そうですね。いつも詞を書く時点で言葉とか曲の持つ雰囲気というのは自分の中でできているので、この曲は力強い、疾走感のあるものが自分の中で鳴っていました。
──今回、作曲にかわいえいじさんが入られているのは、そのイメージを具現化するため?
井上 はい。もともとこの歌詞が最初にできた時に、自分でメロをつけてみようかとも思ったんですけど、何パターンか作ってみて、自分の中でどうもしっくりくる感じがなかったんですね。それで一度はボツにしようかとも思ってたんですけど、その話をたまたまスタッフの方にした時に、「じゃあ他の人にメロをつけてもらうというのは?」というご提案をいただいて、かわいさんにメロをつけていただいて、共作という形になりました。その過程で、私がどういう思いで歌詞を書いたかとか、こういう雰囲気の曲にしたいということをお伝えしたら、かわいさんが素晴らしいメロとアレンジを作り上げてくださったので、これならぜひ世に出したいと思うようになりました。
──他の人との共作というのは初めてですか? 少なくとも公式にリリースされたものとしては初めてだと思いますが。
井上 リリースされたものだけでなく、初めてでした。
──初めての共作という点ではどうでしたか?
井上 いつもはハマるメロディーがなければどんどんボツにしていくんですよ。それでも、強い思いを込めた歌詞ができて、自分の中では完結できなかったけれども、どうにかそうやってメロを乗せてもらうことで、よりよい形になって、結果皆さんの元に届けられたのはいいことだなと思います。
──曲調に伴って、歌唱自体も力強く、かつ伸びやかだと感じました。そのイメージも作詞の段階からありましたか?
井上 そうですね。力強い曲にしたいなと思っていたので、生命力を損なわないように気をつけて歌っています。
──バンドサウンドということもあり、ここまで力強い楽曲というのは初めてなのでは?
井上 でも、自分でデモを作っている段階ではアップテンポのものだったりオシャレなものだったりと、いろんなタイプの曲があるので、私の中ではあまり珍しいことでもないんですよ。ただ、世に出ているものからすると少ないかもしれないですね。
自身の人生で岐路に差しかかった時の「旗印」は?
──これまでリリースされた楽曲からすると、聴いた人も「今回はちょっと違うぞ」という印象があると思います。ただご自分の中では、変化を意識したというわけではないということですね。
井上 そうですね、私からすると意外な部分ではないので、意識したわけではないですけど、でもそう思ってもらえるのであれば、そうやって楽しんでいただければとは思います。
──テンポももっと緩やかな楽曲の方が多いですよね。
井上 去年、3週間に1曲ずつ配信させてもらうという企画をやったんですけど、その時はアレンジも自分でやっていたので、そういうもっと緩やかな曲の方が多かったというのもあると思います。ただ、知らない人の方が多いだろうとは思うんですけど、エイベックスからデビューさせてもらう前、最初に出した『シンデレラ』というEPに入っている「FLY」という曲もすごく激しい曲だし、珍しいとは思ってないんですけど結果的に私の新しい面を感じてもらえるなら、それはそれでいいかなと思います。福岡にいた時代は、ライブとかでもいろんな曲を披露してきたので、それを知っている方からすると「こういうのもあるよね」となるかもしれません。
──なるほど。昨年のメジャーデビュー曲「無重力飛行士」以降からすると新鮮に聞こえますが、もともと持っていたものでもあると。
井上 はい。今、世に出しているものは、いろんな表現をしてきた中のごく一部だと思っています。
──ただ、井上さんのそういう面を知らなかった人からどんな反応があるかは、楽しみだったりしませんか?
井上 去年、10曲リリースした中でも「いろんなタイプの曲があって驚きました」みたいな声もいただいたので、そういう意味でも反応とか感想は楽しみではありますけど。やっぱりいっぱいもらえるとうれしいですね。
──歌詞も曲も、最後ブッツリと終わりますよね。
井上 歌詞は最後、「何食わぬこの世界を揺らして魅せたいから」という言葉で終わってるんですけど、何か言い切る形よりもこれがいいなと思って。アレンジも、こういう形でいただいた時に、私自身すごくしっくり来たんです。
──そこまで強い決意を歌ってきて、最後の部分で「なんて都合の良いことは言い切れないけれど」と、自分でひっくり返すような形になっていますよね。そこが面白いなと思いました。最後まで言い切るわけではないんだ、というところが。
井上 それは、自分自身が音楽の道に進むと決めたりとか、そこからうまくいかないことの方が大半だというのは重々分かっているので、単純に「頑張ればうまくいく」という歌にはしたくなかったというのもあったからですね。
──いいことばかりを言って終わることはできなかったと。
井上 はい。でも、都合のいいように進んでいくわけではなくても、その時にも旗印というか、自分の中でブレない軸とか「自分が決めた」っていう決意があれば、うまくいかない中でも進んでいけるんだという曲にしたかったので。
──この楽曲をライブで披露する際には、バンドをバックにとか、そういう可能性もあったりするんでしょうか?
井上 やっぱりバンドが似合う曲だと思うので、やってみたいなとはすごく思います。今までも要所要所でバンドでのライブもやってきたんですけど、弾き語る楽しさとはまた違った、音が合わさる楽しさがありますね。
──弾き語りの時とは、シンガーとして、パフォーマーとしての意識も変わるものですか?
井上 弾き語りは弾き語りで、その場のタイミングを全部自分でコントロールできるんですよ。「あ、ここでタメたいな」と思えばそれもできるし。それこそ、語るに近いようなことをお客さんと1対1でできるような楽しさがあるんですけど、バンドはより自分の中で鳴ってる音に近いものをお客さんに伝えられますし、単純に人がたくさんいるので、みんなの中でエネルギーが増幅していくというような感覚があるので、どっちも楽しいんですよね。だから、それぞれで違う感覚を味わいながら歌ってます。
──さて、人生における岐路だったり分岐点だったりというのがこの楽曲のイメージのベースにあると思いますが、ご自身にとっての岐路というと、上京されたことですか?
井上 いろいろあるんですけど、私の中で一番大きかったのは、上京よりも高校を卒業する時かなと思っていて。18歳で実家を出てひとり暮らしをするタイミングでもあったし、普通科の高校から音楽の専門学校に進学するという形だったので、完全に「音楽の道に一歩踏み出すぞ」ということで、一番大きかったなと思いますね。
──その時はけっこうな決意が必要でしたか?
井上 そうですね。やっぱり普通科から音楽の道に進むのはなかなか稀だったりもするので、親に「こういう道に進みたいです」と言う時だったりとか、学校に志望を提出する時とか、一つひとつが後戻りできない道を進んでいる感じがありました。趣味じゃなくてガッチリと音楽をやるということで、自分の中では決意みたいなものがありました。
──その時の「旗印」って、今思うと何だったんでしょう?
井上 何でしょうね(笑)。もちろん、楽しいことばっかりじゃないだろうし、苦しいこともたくさんあるだろうなということを予想して進んだ道ではあったんですけど、「どんなことがあっても、これからの道は自分で決めた道だから」というのは、自分の中で大きく掲げたものではありましたね。
──上京する時はまたちょっと違ったんですか?
井上 その時は、住む場所は変わるんですけど、一人で暮らすというのには慣れていたし、私は「声だけオーディション」というオーディションで今があるんですけど、それを受けた時はまだ福岡にいて、ちょこちょこ東京に通ったりもしてたんですね。だから東京に知り合いが全くいないということでもなかったので。まあ、どちらも大きな岐路ではあるんですけど、より覚悟を決めて進んだのは18歳の時だったなと思います。
──この楽曲はどういう人に聴いてもらいたいですか?
井上 迷ったり悩んだりしてる人に聴いてもらいたいですね。それで、「私はこうしていきたい」という気持ちの後押しになればうれしいと思いますし、私からはそれこそ応援の旗を振るような気持ちで歌っていこうと思います。
──ちなみに、ご自身にとってそういう存在の楽曲というのは、何かありますか?
井上 一番は、コブクロさんの「轍」という曲ですね。それこそ、もがき苦しみながら前に進んでいくという曲で、聴くたびに「頑張ろう」って思える曲かなと思います。この「旗印」も、誰かにとってそんな存在になれたらうれしいですね。
アルバム、バースデーライブ、そして今後の目標は?
──そしてこの楽曲は、「めざまし8」の2月エンディング曲に決定したんですね。
井上 はい。それを聞いてまずビックリしました(笑)。小学生の頃とかも、朝に見ながら準備したりしていたのを覚えているので、ウソみたいというか夢みたいというか(笑)。この曲は節目とか区切りを歌った歌ではあるんですけど、それって結局「始まり」ということでもあるので、朝にこの曲が流れるというのは、すごく似合ってるなと思って。晴れた青空の下が似合う曲だと思うので、選ばれてうれしいなと思いました。
──これを聴いて通勤なり通学に出発する人がいるわけですよね。
井上 それを考えると楽しいですよね。朝起きて、今から学校や仕事に行かなきゃいけないっていう時に「よし!」って思えるスイッチになれたらうれしいですね。
──「無重力飛行士」もドラマの主題歌でしたが、またTVからご自分の歌が聞こえてくるわけですよ。
井上 そうなんですよね、何回聴いても慣れないというか(笑)。
──「旗印」が配信される2月21日には、アルバムの配信も決まったそうですね。昨年、3週間ごとに配信リリースされた10曲が全部収録されるそうですが、この配信企画の時点で、アルバムにまとまるというのは決まっていたんですか?
井上 いえ、そういうわけではないです。でも去年は6月から12月までずっと、この配信リリースの曲のことを考えながらやってきた感じだったので、それが一つにまとまるというのはすごくうれしいなと思います。アルバムのタイトルが『my tiny days』っていうんですけど、私の曲は実体験もあるし、いろんなものを見たり聞いたりした中で感じたものの中から作ることもあるんですけど、生きていく日々の中で、私の心が揺れた瞬間に生まれてる曲だなと思うので、そういう私のまさに「tiny days」、ささいな日々がギュッと詰まったアルバムになると思います。だから一挙に聴いてもらえたら、また楽しいんじゃないかと思います。
──それぞれの楽曲は独立して作られたものですが、アルバムの中の1曲となると、また違った表情が見えそうですね。
井上 そうですね。続けて聴いたらまた面白いと思います。曲順はリリースした順番そのままなので、一緒に3週間、「次の曲は何だろう?」って心待ちにしてくださった方たちとかは、まさにその時間軸を追いながら聴けたりするんじゃないかと思います。
──曲順がリリース順のままというのは、結果的にそうなったということなんですか?
井上 そこはあまり迷わなかったですね。例えば「狐火」という曲はお盆っぽい雰囲気の曲だよねということで8月にリリースしていたりとか、最後の方の「風邪」という曲が冬にリリースされていたりということもあったので、時間軸に沿って収録というのは、一番自然な形だったりするのかなと思います。
──さらに2月26日にはバースデー記念ライブが行われるということですが、どんなものになりそうですか?
井上 もう歌う曲とかはだいたい決めているんですが、上京直後にコロナ禍に入ってしまったこともあって、なにげに東京で初のワンマンライブなんですよね。あと、福岡の頃も含めて誕生日当日にドンピシャでライブとかをやったことがないので、それも初めての試みなんです。去年配信リリースした10曲からももちろん歌いたいなと思ってますし、福岡にいた時代からずっと歌い続けてきた曲も歌いたいなと思ってます。またこのライブで初披露する曲もありますし、「旗印」も歌いたいと思っているので、今の私の全部を込めて歌いたいです。
──2021年は10曲リリースが活動のメインを占めていたかと思いますが、今年はそれがアルバムという形にまとまり、バースデーワンマンライブもあるという序盤を迎えています。この先はどうしていきたいですか?
井上 去年10曲出させていただいて、今年は早々に「旗印」も出てアルバムが出たりバースデーライブもあったりと賑やかに始まっていくので、その勢いそのままに、もっともっと活躍していけたらと思います。そして、私の好きな音楽をもっともっと発信していける1年になったらなと思います。
──今年、「これはやりたい!」ということはありますか?
井上 何だろう? ……今年かどうかはさておき、いつかは日本武道館でライブをしたい!という目標はありますけどね。私は空手をやっていたので、空手の大会を見に行ったことはあるんですけど、音楽の場としての武道館はまだ見たことがないんですよ。そういう意味でもすごく憧れですね。空手で行った時は「ここでライブが行われるんだな」という目線で見ていたので、いつかそういう場に立てたらと思います。
撮影 長谷英史
「旗印」
2022.2.21 デジタルリリース
フジテレビ系「めざまし8」2022年2月度エンディングソング
『my tiny days』
2022.2.21 デジタルリリース
井上紗矢香 Birthday LIVE 2022
2022年2月26日(土)
場所:下北沢Laguna
OPEN 12:30/START 13:00
前売 4000円(D別) 当日 4500円(D別)
*おみやげ付き
入場予約フォーム
https://tiget.net/events/161739
【井上紗矢香 Official Website】
https://avex.jp/sayakainoue/
【井上紗矢香 YouTube】
https://www.youtube.com/channel/UCam9iuq9w_PaS4VYg6IJLhQ
【井上紗矢香 Instagram】
https://www.instagram.com/s_sweet.h/
【井上紗矢香 Twitter】
https://twitter.com/inouesayaka0226
【井上紗矢香 TikTok】
https://www.tiktok.com/@inoue_sayaka
- WRITTEN BY高崎計三
- 1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。