【hiroインタビュー】全て手放した後に見えてきた無限の可能性『0』
ニューアルバム『0』をリリースしたhiroさん。自身のアルバムとしては8年半ぶり、「hiro」名義としては何と19年半ぶりとなります。このタイミングで「hiro」名義でのリリースとなった理由とは? また、アルバム収録曲に込められた思いとは? いろいろと伺ってみました!
19年半ぶりに「hiro」名義になった理由とは……?
──アルバムとしては『私のオキナワ』以来8年半ぶり、「hiro」名義としては『Naked and True』以来19年半ぶりとのことですが……。
hiro ねえ!(笑) 「hiro」としては、その後にベストアルバム(2006年2月)があって、そこからしばらく動いていなかったですからね。
──このタイミングで、「hiro」名義にするきっかけは何かあったんですか?
hiro ……(小声で)たまたまです(笑)。去年「Something Great」という曲を配信リリースした時に、「『hiro』名義で活動するというのはどうですか?」というご提案をいただいたんですね。『私のオキナワ』は「島袋寛子」名義で出して、そこからはゲスト参加してのリリースがあったり、ERIHIROがあったりはしたんですけど、一人で出すことはなくて。「hiro」っていう名前もけっこう浸透してくれてたんだなあというのもあり、久々に踊ったりもするし、じゃあ「hiro」で出しましょうかという流れからアルバムにつながって……だから、「hiro」という活動がスルッとスタートしたという感じですね。流れができたので、逆らわずにそこに乗っかったという感じです。
──発表する名義によって、ご自身の中で違いはあるんでしょうか。
hiro 例えばジャズの「Coco d'Or」は、聴く人に島袋寛子という先入観をなくしてほしいということでプロジェクト名義にしましたし、『私のオキナワ』を出したタイミングというのは、その前にSPEEDの再結成があった時に本名に戻していたので、そこから沖縄の楽曲ということもあり、自然に本名で出すことにしました。で、今回は久しぶりに踊って、サウンドも「hiro」の延長線上にあるので、「hiro」にして。そんな風に、その時その時で作品と名義が連動しているところがあるので、やっぱり名前で変わりますよね。作品も変わるし、自分のアプローチも変わってると思うし。
──やりたいことによって名義が決まってくることもあるし、と。
hiro 今回に関しては「hiro」でやるのは自然な流れだったんですけど、今は出揃っている形なので、ジャズをやるとなれば「Coco d'Or」になるだろうし、歌って踊るとなれば「hiro」になるだろうし、沖縄の歌を歌うなら「島袋寛子」になるだろうし。そんな感じですよね。作品に対しての名前というのは、それぞれに思いがあってのことなんですけど、名義が変わるということについては、もうちょっとライトな感じで考えているかもしれないですね。
──先ほどお話の出た「Something Great」は、昨年8月にサプライズという形で配信リリースされました。その時の反応については、どう感じましたか?
hiro 私の声を聴いてくださっていた皆さんが喜んでくれていた印象があったので、こんなにたくさんの人たちが「hiro」の楽曲を聴いてきてくれていて、それぞれに思いを持っていてくれてたんだなというのは感じました。
──あの時点で、アルバム制作という心づもりはあったんでしょうか。
hiro ありましたね。「アルバムを出したい」というところがスタートだったので。空いてる期間も、制作はしながら、なかなかいろんなもののタイミングが合わなかったりというのがあったんですよ。今回の始まりとしては、レコード会社さんの担当の方が増えた時に、「アルバムを出したいです」というお話をさせてもらって。たいていのことは経験させていただいてきた中で、「今の私を伝えるために、今一番やりたいことはアルバムを出すことだ」というところでの配信という流れです。
──では、「Something Great」に好反応が得られたのは、アルバム制作に向けていい材料だったんですね。
hiro こんなにみんなが喜んでくれて、いろんな感想を寄せてくれたのが素直にうれしいというのはあったんですけど、じゃあアルバムを作ろうという時に「イエーイ、アルバムを作ろう!」じゃなくて(笑)いろんな感情が入ってきて。同じ時代を見てきた人たちだったり、今でも私の声が好きだって言ってくださるみんな、あとはファンの皆さんに対して、具体的な約束をしていたわけじゃないけど、作品という形でいつでも聴ける状態のものを出したいなという思いが強かったです。
──8年前の『私のオキナワ』もカバー曲が多かったのもあって、全編オリジナル曲のアルバムというのは、それこそ19年半ぶりということになりました。それだけ久しぶりの作業というのはいかがでしたか?
hiro いやあ、いろんな思いが巡りますね(笑)。だけど、ここ何年間かずっと大事にしてきた楽曲があったりとか、自分がやりたいことだとちゃんと自覚してとりかかったことだったので、いろんな思いとかいろんな感情が出てくる中でも、絶対に作って届けるという目的がありました。だから制作期間中は夢中になってましたね。歌うことだったり、制作ということにもものすごく集中できたと思います。
──アルバム全体としては、どのような方向で作ろうと考えられたんでしょうか。
hiro 今の私を伝えられたらいいなというのと、私の好きな楽曲、自分の「好き」が詰まっているので……もちろん今までの作品も全部「好き」が詰まってるんですけど、今回は全曲オリジナルで「好き」が詰まったものを作るというところに思いがあったので、ただひたすらそこに振り切ってましたね。ブレないようにというか。
──収録する楽曲はどのように決めていったんでしょうか。
hiro 楽曲を聴かせてもらって、自分がとても歌いたいと思ったというものが一つ。あとはYUKI JOLLY ROGERさんと一緒にやらせてもらっている中で、YUKIさんにお話をして生まれた曲も入っていたりというのもあります。
──タイトルと同じ曲名の「ZERO」をはじめ、アルバムの中でポイントになる楽曲はYUKIさんの作品ですよね。それを柱に考えたということでしょうか?
hiro SPEEDの再結成もそうだし、『私のオキナワ』もプロデュースで入っていただいたりと、ここ何年間かはYUKIさんとのやりとりも多くて、楽曲を生み出そうとする時にご相談することも多いんですね。曲を選んでいった時に、この10年間ぐらいはやっぱりYUKIさんが軸になっていたという感じで、歌もディレクションしてもらってます。YUKIさんの曲はこの10年ほどで私が出会って大事にしていて、「いつか出したい」と思っていた曲が加わっている、という感じです。
アルバムを貫いているのは、「いろいろな状況があった上でのポジティブ」
──「ZERO」は曲調といい歌詞といい、「新しいスタート」という感じに溢れていますよね。
hiro これはYUKIさんとコミュニケーションを取って、数年前に書いてもらった曲なんですけど、ここ数年間は常々こういうことを思ってきてたんだなという感じが自分にはあって。今の自分を受け止めて、スタートするという気持ちが強かったんだと思います。今もですけどね。
──最初からこの曲を1曲目にして、アルバムタイトルにもして、という方向だったんですか?
hiro そうではなかったですね。「ZERO」は「ZERO」で生まれていて、それは私の中で「全てを一回ヨシとして、また新しい一歩を」という思いが強くて、YUKIさんが「全てつまった(集まった)ZERO」という詞にしてくださっているんですけど、そういった可能性のある「ZERO」なんですね。で、アルバムのタイトルを決めようとなった時に、いろいろ候補がある中、「ZERO」というのもあって。タイトルの言葉としてはちょっと強いかな、というのもあったんですけど、でもまさに今の自分の気持ちだったり、過去でも未来でもなく上でも下でもない、「今ここ」の自分が大事にしたいことだし、そんな思いを持ってるんじゃないかということで、タイトルを数字の『0』にしました。それも「ZERO」じゃなく、丸みがあって全てが詰まった『0』ということがリンクしたので。やっぱりここ数年間、自分がそういうことを思ってきたし、そういう気持ちを大事にしてきたんだなというので、そこがつながって1曲目は「ZERO」にして。
──なるほど。楽曲のタイトルとしての「ZERO」は元からあって、それをアルバムタイトルにするにあたって、数字の『0』にしたということなんですね。
hiro そうですね。別な方向から出てきて、「ZERO」と『0』がつながったという感じです。それがアルバムのテーマとして、今大事にしたいことなんじゃないかと。
──「Iʼm Here To Stay」は福富幸宏さんが参加されています。福富さんとはCoco d'Orからのお付き合いだと思いますが。
hiro そうですね。Coco d'Orの「And The Melody Still Lingers On (Night In Tunisia)」という曲をプロデュースしていただいて、そこから時間は空いてるんですけど、1~2年前に楽曲を受け取って、その時には福富さんの名前じゃなくて、別のプロジェクト名義で来てたんですね。その曲を聴いた時に、「これは絶対歌いたい!」と思ったんです。そこからいろんな流れを経て、この曲をレコーディングできることになって。福富さんの曲だと知ったのは、その途中のことだったんですよ。知った時には「福富さんなの!?」みたいになって(笑)。その時に「Canʼt Be With You」も一緒に来ていたんですけど、その曲も制作過程の中でだんだんと「これはイケガミキヨシさんが作ってくださったのね」って分かっていったという感じでしたね(笑)。
──福富さんの曲と分かった時には「やっぱり!」という感じだったんですか?
hiro そう思ったんでしょうね、これだけカッコいいサウンドで。トラックダウンの時にお会いしたんですけど、その時に初めて分かったんですね。だから制作過程の最後の最後なんですよ(笑)。大事にされていた楽曲らしくて、そこで熱い思いを語ってくださって、「歌が入ることで魂が入った」と言ってくださいました。
──福富さんやイケガミキヨシさんの参加を見ても、これまでの活動の経験が生きていますよね。
hiro フタを開けてみたら、今回のアルバムは私が歌いたいと思った楽曲が詰まっていることからも分かるように、今までにご縁のあったメンバーの皆さんに参加していただいているので、本当にありがたいなと思っています。
──「Iʼm Here To Stay」はゆったりした曲調にポジティブな歌詞が乗っています。
hiro そうですね、分かりやすいというか、ストレートに。福富さんも、この2年間ぐらいの情勢の中で、「いろいろあるけど、みんな頑張ろう」という思いが強かったみたいで、そういった歌詞の内容になっています。私がすごく大切にしている思いだったりもするので、そこはすんなり歌えました。
──アルバム全体を通して、基本的には「ポジティブに自分をとらえる」という思いが貫かれているように感じました。
hiro ポジティブですか?
──自分はそう感じましたが……。
hiro ネガティブっていう言葉が正しいかどうか分からないですけど、その反動としてのポジティブですよね。みんなそうだと思うんですけど、いろんなことを感じたり、苦しんだり傷ついたりする中で、「それでも!」っていうところが強いんじゃないですかね。
──「ZERO」のお話の中で出てきた「受け入れる」という言葉にも通じますね。
hiro 受け入れだったり、全てなくしたと思っても、その後に自分の本当に大事なものが見えたり。手放した後に見えてきた可能性だったりというのが、『0』にはあると思ってるんですね。「全部手放して悲しい」じゃなくて、手放した後に見えてくる、本来の自分なのか、心の声、魂の声なのかは分からないですけど、そこに無限の可能性があるというメッセージを大事にできたらいいんじゃない?っていうことでの『0』なので。
MV撮影で得た、意外な「気づき」とは?
──「Iʼm Here To Stay」のMVはがっつりダンスですね。
hiro 久しぶりに(笑)。でも緩やかな楽曲なので、すごくバキバキという感じではないですけど、撮り終えたのを見てみたら、まさに「今の私」が歌って踊っていて、いい感じになってるかなとは思いましたね。久しぶりに踊る姿が映像になったので、「あ、今の私が踊るとこんな感じなんだ」と客観視できました。
──客観視した自分の踊りはいかがでしたか?
hiro いつも振りをつけてくださってるダンサーのKieちゃんが、今回も曲調に合わせて振りをつけてくださったんですが、自分の中でも「こういう風にしたい」というこだわりがあるんですよね。それも話して決めたんですけど、自分のこだわりが作品になった時にどう見えるかっていうのは、年数も空いてるので、若干不安もありつつ。ただ、素敵な振りをつけていただいたので、それを最大限に表現できるようにと取り組んだんですけど、完成版を見た時に、「今の私」な感じになってるし、それプラス、自分でも「今の私だなあ」と思えたので、私はこのMV全部まとめて好きです。
──「Something Great」もMVが制作されていますが、あのロケ地はどこだったんですか?
hiro あれは三浦半島です。
──もっと南の方かと思いました。
hiro ですよね(笑)。自然を感じられるところということで、私の生まれたところまで行きたい気持ちもあったんですけど、いろいろな状況もあって。でも、三浦半島に行ってみたらすごく気持ちよくて、しかもその時期はご縁があったみたいで、何度も行かせてもらっていて。素敵な画を撮らせてもらいました。……そうなんですよね、皆さん、見た時は沖縄だと思ったらしくて(笑)。
──映像がすごくうまく撮られているし、hiroさんからどうしても連想してしまいますよね(笑)。
hiro 映像の切り取り方もうまく仕上げていただいてますよね。やっぱり海の色とか、空気感とかは違いますけどね。ただ、三浦半島も個人的にすごく好きな場所で、お仕事とかでもすごくお世話になっています。
──やっぱりhiroさんにとって、海や自然というのは大事な要素ですか。
hiro はい。大事な要素ですし、「Something Great」のMVに関しては室内での撮影というのも考えたんですけど、室内と屋外では踊ってる時の自分の表情もだいぶ違うだろうなということが想像できて、この曲では外で踊ってる表情を捉えてもらいたいという思いがあって。海とか自然の中にいると、こちらも自然になって、作ることができないと思うんですよ。作ったものをやると、表現がわざとらしくなるというか。あの楽曲に対してそれがない状態で撮れたというのは、すごくよかったと思います。
──「Iʼm Here To Stay」でも踊られていますが、「Something Great」のあのシチュエーションだと、ダンスがすごくプリミティブに見えますよね。そこが対比として面白いなと思いました。
hiro そうですよね。やっぱり自然の中だと、全ての表現がありのままになるんでしょうね。
──撮影自体はかなりタイトだったようですね。
hiro 深夜からのスタートでしたからね(笑)。でもすごく気付いたことがあったんですけど、朝5時とかに起きて活動するより、深夜明けから活動する方が、意外に体ってもつんだなって。1時とか2時ぐらいからメイクして、一瞬だけ寝ましたけど、けっこうフルパワーでいけたんですよ。だから、朝5時スタートよりは深夜1時2時のスタートの方が、体には合ってるんだなって(笑)。
──貴重な気づきではあると思います(笑)。さて、他の収録曲で興味深かったのが、「PRAY」でした。まさに「今」を歌っている曲だと思うんですが、SPEEDが登場した時には時代の最先端の感覚を歌っていましたよね。そこを経たhiroさんが、「今」の時代を歌うというのがすごく面白いなと思ったんですが。
hiro 確かに、「今の時代」を歌うというのはあんまりなかったかもしれないですね。でもこれも、普段思うことだったりもしてるので、自然に出てきたというか。ただ、時代のリアルな感じが入ってくるというのは、特に最近はなかなかありませんでしたね。今回のアルバムの他の曲も、内面のことだったり、いつの時代に聴いても変わることのない、普遍的な内容になってますし。ただ「PRAY」に関しては……。
──今の時代を歌ったものを入れたい、という意図ではなかった?
hiro そうではないですね。たぶん、YUKIさんと話している中で、「大事にしたいもの」みたいなことで……「今のこの時代に大事なものって何だろう?」だったり、「その中で自分ができることとは」とか、そういう話の中で生まれた楽曲です。今回、レコーディングするにあたって、YUKIさんが何カ所か歌詞を変えてくださったところはありましたけど。
──「PRAY」の中ではSNSとの付き合い方についても歌われています。ご自身としては、SNSとの付き合い方はどう感じていますか?
hiro 難しいですよね(笑)。アーティスト活動をしている時は、SNSも盛んにした方がいいんですけど、アーティスト活動をしている時ほど、いろんなものを見ない方がいいというのもあって……(笑)。付き合い方はすごく難しいけど、今はこれが当たり前のことになっているし。ちょうどつい最近も、「みんなのプライベートが分かるって、すごいなあ!」って思ってたところだったんですよ。私は職業柄、そういうものがあるのかないのかって感じになってますけど、実はこれはすごいことで。それが当たり前になってる感覚をどうとらえていくかっていうのは、すごく大事なポイントだと思いますね。今はそれが普通な世代が中心になっているんですけど、それを「怖い」と思っている自分もいたりする中で、どうとらえていくか、どう扱っていくか。それがメンタルにも響いてくるので、大事ですよね。まあそこも自分との付き合い方だったりもするし、何にしても自分が大事っていうことはポイントだと思いますけど。
「今はこのアルバムを出すことに、すごくドキドキしています」
──アルバムのラストは「Dear」です。これは唯一、作詞にも参加されていますね。
hiro はい。YUKIさんにご相談しながら、一緒に作るというのが叶いました。ここ何年間か、自分で作った歌をライブで歌うことはあったんですけど、今回のアルバムには、はじめは入れようとは思ってなかったんですよ。「自分で作ったものをどうしても入れたい」というようなこだわりはなくて。ただ、ここ何年か、自分で作って歌ってきたということは、いつもライブに来てくださる皆さんはよく知っていることなんですけど、そうでない方や私を知らない方は分からないと思うし、そういった中で1曲入れてもいいんじゃないかと思ったんですけど、その提案をした時には曲がなかったんです。で、「PRAY」をレコーディングした時に、ものすごく夢中で歌えたんですよ。その感覚がすごく心地よくて、思い出した感じがあって。自分の中で喜びだったんでしょうね、翌日起きたら何かメロディが出てきたんです。それでデモを録ってYUKIさんに送ったら、2~3日ぐらいで作ってくれて、形になりました。ちょっと「今」を伝えて、この先にもつながる感じでできればいいかなということで、ラストに持ってきました。
──DVDにはライブパフォーマンス映像が収録されていて、その中で演奏されている3曲が「Dear」~「Sympathy」~「ZERO」と、アルバムの流れをさかのぼったようになっていますよね。
hiro なってますね。これも意図はしてないんですけど(笑)。最初「ZERO」から始めようかという話だったんですが、「Dear」から練習していたら「これからでもいけるね」という話になって。そこから自然な流れで、ああなったという感じですね。
──あの映像でのアコースティックの演奏も、アルバムとは違った印象でいいですね。
hiro バンドのアレンジで、やっぱりライブだとレコーディングとは違った感じになりますよね。「Sympathy」なんかもライブで歌う感じになりますし。バンドの皆さんはYUKIさんに紹介していただいて、お会いするのはみなさんはじめてだったんですけど、リハーサルの時から心地よくて。ここ何年か私もライブをやっているので、そのライブ感を出した方が喜んでもらえるだろうなということで、完全に生収録でやっています。すごく素晴らしくて、私も好きです。
──このリリースから、今年どうしていきたいですか?
hiro 「どうしていきたいか」を考えられないぐらい、今はこのアルバムを出すことにドキドキしています(笑)。それぐらい思いが詰まってるっていうのもありますし、気がつけばこれだけ年数が経っていて……いつもそうなんですけど、「やる」っていって始めた時は思いが走っていて、後々になって「あれ、実はすごく勇気がいる一歩を踏み出したんだな」と思うことが多くて。だから今回もすごくドキドキしています。今の自分を素直に表現して作ったアルバムが、今まで応援してくださった方や、知らない方とかにどう届くのかなあとか、いろいろ思っている段階ですね。だからこの先は一つずつ、落ち着いてやっていきたいなと思っています。
──ライブもありますよね?
hiro 「こういうライブがやりたいな」というのは、見えてはいます。ようやくですね。昨年末に作り終えた時に、一度全部出し切っちゃったんですけど(笑)、そこからまた「この曲をライブでこうやったら素敵だなあ」とかっていうのが見えてきたので、そこへ向かうエネルギーがワーッと湧いてきたら、突っ走ると思います。今はそういう感じで、湧き出てくる気持ちを大事にしています。
──ファンの皆さんは待ってるでしょうからね。
hiro ホントにこのアルバム自体、本当に長いこと、応援してくださる方たちを本当に待たせたなと思って。約束みたいな感じに思ってたので。「Sympathy」もライブでずっと歌っていて、いつでも聴ける形、手元に置いておける形にしたいと思っていたので、その約束は果たすことができたかなと思っています。
『0』2022.01.26 ON SALE
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19年半ぶりに「hiro」名義になった理由とは……?
──アルバムとしては『私のオキナワ』以来8年半ぶり、「hiro」名義としては『Naked and True』以来19年半ぶりとのことですが……。
hiro ねえ!(笑) 「hiro」としては、その後にベストアルバム(2006年2月)があって、そこからしばらく動いていなかったですからね。
──このタイミングで、「hiro」名義にするきっかけは何かあったんですか?
hiro ……(小声で)たまたまです(笑)。去年「Something Great」という曲を配信リリースした時に、「『hiro』名義で活動するというのはどうですか?」というご提案をいただいたんですね。『私のオキナワ』は「島袋寛子」名義で出して、そこからはゲスト参加してのリリースがあったり、ERIHIROがあったりはしたんですけど、一人で出すことはなくて。「hiro」っていう名前もけっこう浸透してくれてたんだなあというのもあり、久々に踊ったりもするし、じゃあ「hiro」で出しましょうかという流れからアルバムにつながって……だから、「hiro」という活動がスルッとスタートしたという感じですね。流れができたので、逆らわずにそこに乗っかったという感じです。
──発表する名義によって、ご自身の中で違いはあるんでしょうか。
hiro 例えばジャズの「Coco d'Or」は、聴く人に島袋寛子という先入観をなくしてほしいということでプロジェクト名義にしましたし、『私のオキナワ』を出したタイミングというのは、その前にSPEEDの再結成があった時に本名に戻していたので、そこから沖縄の楽曲ということもあり、自然に本名で出すことにしました。で、今回は久しぶりに踊って、サウンドも「hiro」の延長線上にあるので、「hiro」にして。そんな風に、その時その時で作品と名義が連動しているところがあるので、やっぱり名前で変わりますよね。作品も変わるし、自分のアプローチも変わってると思うし。
──やりたいことによって名義が決まってくることもあるし、と。
hiro 今回に関しては「hiro」でやるのは自然な流れだったんですけど、今は出揃っている形なので、ジャズをやるとなれば「Coco d'Or」になるだろうし、歌って踊るとなれば「hiro」になるだろうし、沖縄の歌を歌うなら「島袋寛子」になるだろうし。そんな感じですよね。作品に対しての名前というのは、それぞれに思いがあってのことなんですけど、名義が変わるということについては、もうちょっとライトな感じで考えているかもしれないですね。
──先ほどお話の出た「Something Great」は、昨年8月にサプライズという形で配信リリースされました。その時の反応については、どう感じましたか?
hiro 私の声を聴いてくださっていた皆さんが喜んでくれていた印象があったので、こんなにたくさんの人たちが「hiro」の楽曲を聴いてきてくれていて、それぞれに思いを持っていてくれてたんだなというのは感じました。
──あの時点で、アルバム制作という心づもりはあったんでしょうか。
hiro ありましたね。「アルバムを出したい」というところがスタートだったので。空いてる期間も、制作はしながら、なかなかいろんなもののタイミングが合わなかったりというのがあったんですよ。今回の始まりとしては、レコード会社さんの担当の方が増えた時に、「アルバムを出したいです」というお話をさせてもらって。たいていのことは経験させていただいてきた中で、「今の私を伝えるために、今一番やりたいことはアルバムを出すことだ」というところでの配信という流れです。
──では、「Something Great」に好反応が得られたのは、アルバム制作に向けていい材料だったんですね。
hiro こんなにみんなが喜んでくれて、いろんな感想を寄せてくれたのが素直にうれしいというのはあったんですけど、じゃあアルバムを作ろうという時に「イエーイ、アルバムを作ろう!」じゃなくて(笑)いろんな感情が入ってきて。同じ時代を見てきた人たちだったり、今でも私の声が好きだって言ってくださるみんな、あとはファンの皆さんに対して、具体的な約束をしていたわけじゃないけど、作品という形でいつでも聴ける状態のものを出したいなという思いが強かったです。
──8年前の『私のオキナワ』もカバー曲が多かったのもあって、全編オリジナル曲のアルバムというのは、それこそ19年半ぶりということになりました。それだけ久しぶりの作業というのはいかがでしたか?
hiro いやあ、いろんな思いが巡りますね(笑)。だけど、ここ何年間かずっと大事にしてきた楽曲があったりとか、自分がやりたいことだとちゃんと自覚してとりかかったことだったので、いろんな思いとかいろんな感情が出てくる中でも、絶対に作って届けるという目的がありました。だから制作期間中は夢中になってましたね。歌うことだったり、制作ということにもものすごく集中できたと思います。
──アルバム全体としては、どのような方向で作ろうと考えられたんでしょうか。
hiro 今の私を伝えられたらいいなというのと、私の好きな楽曲、自分の「好き」が詰まっているので……もちろん今までの作品も全部「好き」が詰まってるんですけど、今回は全曲オリジナルで「好き」が詰まったものを作るというところに思いがあったので、ただひたすらそこに振り切ってましたね。ブレないようにというか。
──収録する楽曲はどのように決めていったんでしょうか。
hiro 楽曲を聴かせてもらって、自分がとても歌いたいと思ったというものが一つ。あとはYUKI JOLLY ROGERさんと一緒にやらせてもらっている中で、YUKIさんにお話をして生まれた曲も入っていたりというのもあります。
──タイトルと同じ曲名の「ZERO」をはじめ、アルバムの中でポイントになる楽曲はYUKIさんの作品ですよね。それを柱に考えたということでしょうか?
hiro SPEEDの再結成もそうだし、『私のオキナワ』もプロデュースで入っていただいたりと、ここ何年間かはYUKIさんとのやりとりも多くて、楽曲を生み出そうとする時にご相談することも多いんですね。曲を選んでいった時に、この10年間ぐらいはやっぱりYUKIさんが軸になっていたという感じで、歌もディレクションしてもらってます。YUKIさんの曲はこの10年ほどで私が出会って大事にしていて、「いつか出したい」と思っていた曲が加わっている、という感じです。
アルバムを貫いているのは、「いろいろな状況があった上でのポジティブ」
──「ZERO」は曲調といい歌詞といい、「新しいスタート」という感じに溢れていますよね。
hiro これはYUKIさんとコミュニケーションを取って、数年前に書いてもらった曲なんですけど、ここ数年間は常々こういうことを思ってきてたんだなという感じが自分にはあって。今の自分を受け止めて、スタートするという気持ちが強かったんだと思います。今もですけどね。
──最初からこの曲を1曲目にして、アルバムタイトルにもして、という方向だったんですか?
hiro そうではなかったですね。「ZERO」は「ZERO」で生まれていて、それは私の中で「全てを一回ヨシとして、また新しい一歩を」という思いが強くて、YUKIさんが「全てつまった(集まった)ZERO」という詞にしてくださっているんですけど、そういった可能性のある「ZERO」なんですね。で、アルバムのタイトルを決めようとなった時に、いろいろ候補がある中、「ZERO」というのもあって。タイトルの言葉としてはちょっと強いかな、というのもあったんですけど、でもまさに今の自分の気持ちだったり、過去でも未来でもなく上でも下でもない、「今ここ」の自分が大事にしたいことだし、そんな思いを持ってるんじゃないかということで、タイトルを数字の『0』にしました。それも「ZERO」じゃなく、丸みがあって全てが詰まった『0』ということがリンクしたので。やっぱりここ数年間、自分がそういうことを思ってきたし、そういう気持ちを大事にしてきたんだなというので、そこがつながって1曲目は「ZERO」にして。
──なるほど。楽曲のタイトルとしての「ZERO」は元からあって、それをアルバムタイトルにするにあたって、数字の『0』にしたということなんですね。
hiro そうですね。別な方向から出てきて、「ZERO」と『0』がつながったという感じです。それがアルバムのテーマとして、今大事にしたいことなんじゃないかと。
──「Iʼm Here To Stay」は福富幸宏さんが参加されています。福富さんとはCoco d'Orからのお付き合いだと思いますが。
hiro そうですね。Coco d'Orの「And The Melody Still Lingers On (Night In Tunisia)」という曲をプロデュースしていただいて、そこから時間は空いてるんですけど、1~2年前に楽曲を受け取って、その時には福富さんの名前じゃなくて、別のプロジェクト名義で来てたんですね。その曲を聴いた時に、「これは絶対歌いたい!」と思ったんです。そこからいろんな流れを経て、この曲をレコーディングできることになって。福富さんの曲だと知ったのは、その途中のことだったんですよ。知った時には「福富さんなの!?」みたいになって(笑)。その時に「Canʼt Be With You」も一緒に来ていたんですけど、その曲も制作過程の中でだんだんと「これはイケガミキヨシさんが作ってくださったのね」って分かっていったという感じでしたね(笑)。
──福富さんの曲と分かった時には「やっぱり!」という感じだったんですか?
hiro そう思ったんでしょうね、これだけカッコいいサウンドで。トラックダウンの時にお会いしたんですけど、その時に初めて分かったんですね。だから制作過程の最後の最後なんですよ(笑)。大事にされていた楽曲らしくて、そこで熱い思いを語ってくださって、「歌が入ることで魂が入った」と言ってくださいました。
──福富さんやイケガミキヨシさんの参加を見ても、これまでの活動の経験が生きていますよね。
hiro フタを開けてみたら、今回のアルバムは私が歌いたいと思った楽曲が詰まっていることからも分かるように、今までにご縁のあったメンバーの皆さんに参加していただいているので、本当にありがたいなと思っています。
──「Iʼm Here To Stay」はゆったりした曲調にポジティブな歌詞が乗っています。
hiro そうですね、分かりやすいというか、ストレートに。福富さんも、この2年間ぐらいの情勢の中で、「いろいろあるけど、みんな頑張ろう」という思いが強かったみたいで、そういった歌詞の内容になっています。私がすごく大切にしている思いだったりもするので、そこはすんなり歌えました。
──アルバム全体を通して、基本的には「ポジティブに自分をとらえる」という思いが貫かれているように感じました。
hiro ポジティブですか?
──自分はそう感じましたが……。
hiro ネガティブっていう言葉が正しいかどうか分からないですけど、その反動としてのポジティブですよね。みんなそうだと思うんですけど、いろんなことを感じたり、苦しんだり傷ついたりする中で、「それでも!」っていうところが強いんじゃないですかね。
──「ZERO」のお話の中で出てきた「受け入れる」という言葉にも通じますね。
hiro 受け入れだったり、全てなくしたと思っても、その後に自分の本当に大事なものが見えたり。手放した後に見えてきた可能性だったりというのが、『0』にはあると思ってるんですね。「全部手放して悲しい」じゃなくて、手放した後に見えてくる、本来の自分なのか、心の声、魂の声なのかは分からないですけど、そこに無限の可能性があるというメッセージを大事にできたらいいんじゃない?っていうことでの『0』なので。
MV撮影で得た、意外な「気づき」とは?
──「Iʼm Here To Stay」のMVはがっつりダンスですね。
hiro 久しぶりに(笑)。でも緩やかな楽曲なので、すごくバキバキという感じではないですけど、撮り終えたのを見てみたら、まさに「今の私」が歌って踊っていて、いい感じになってるかなとは思いましたね。久しぶりに踊る姿が映像になったので、「あ、今の私が踊るとこんな感じなんだ」と客観視できました。
──客観視した自分の踊りはいかがでしたか?
hiro いつも振りをつけてくださってるダンサーのKieちゃんが、今回も曲調に合わせて振りをつけてくださったんですが、自分の中でも「こういう風にしたい」というこだわりがあるんですよね。それも話して決めたんですけど、自分のこだわりが作品になった時にどう見えるかっていうのは、年数も空いてるので、若干不安もありつつ。ただ、素敵な振りをつけていただいたので、それを最大限に表現できるようにと取り組んだんですけど、完成版を見た時に、「今の私」な感じになってるし、それプラス、自分でも「今の私だなあ」と思えたので、私はこのMV全部まとめて好きです。
──「Something Great」もMVが制作されていますが、あのロケ地はどこだったんですか?
hiro あれは三浦半島です。
──もっと南の方かと思いました。
hiro ですよね(笑)。自然を感じられるところということで、私の生まれたところまで行きたい気持ちもあったんですけど、いろいろな状況もあって。でも、三浦半島に行ってみたらすごく気持ちよくて、しかもその時期はご縁があったみたいで、何度も行かせてもらっていて。素敵な画を撮らせてもらいました。……そうなんですよね、皆さん、見た時は沖縄だと思ったらしくて(笑)。
──映像がすごくうまく撮られているし、hiroさんからどうしても連想してしまいますよね(笑)。
hiro 映像の切り取り方もうまく仕上げていただいてますよね。やっぱり海の色とか、空気感とかは違いますけどね。ただ、三浦半島も個人的にすごく好きな場所で、お仕事とかでもすごくお世話になっています。
──やっぱりhiroさんにとって、海や自然というのは大事な要素ですか。
hiro はい。大事な要素ですし、「Something Great」のMVに関しては室内での撮影というのも考えたんですけど、室内と屋外では踊ってる時の自分の表情もだいぶ違うだろうなということが想像できて、この曲では外で踊ってる表情を捉えてもらいたいという思いがあって。海とか自然の中にいると、こちらも自然になって、作ることができないと思うんですよ。作ったものをやると、表現がわざとらしくなるというか。あの楽曲に対してそれがない状態で撮れたというのは、すごくよかったと思います。
──「Iʼm Here To Stay」でも踊られていますが、「Something Great」のあのシチュエーションだと、ダンスがすごくプリミティブに見えますよね。そこが対比として面白いなと思いました。
hiro そうですよね。やっぱり自然の中だと、全ての表現がありのままになるんでしょうね。
──撮影自体はかなりタイトだったようですね。
hiro 深夜からのスタートでしたからね(笑)。でもすごく気付いたことがあったんですけど、朝5時とかに起きて活動するより、深夜明けから活動する方が、意外に体ってもつんだなって。1時とか2時ぐらいからメイクして、一瞬だけ寝ましたけど、けっこうフルパワーでいけたんですよ。だから、朝5時スタートよりは深夜1時2時のスタートの方が、体には合ってるんだなって(笑)。
──貴重な気づきではあると思います(笑)。さて、他の収録曲で興味深かったのが、「PRAY」でした。まさに「今」を歌っている曲だと思うんですが、SPEEDが登場した時には時代の最先端の感覚を歌っていましたよね。そこを経たhiroさんが、「今」の時代を歌うというのがすごく面白いなと思ったんですが。
hiro 確かに、「今の時代」を歌うというのはあんまりなかったかもしれないですね。でもこれも、普段思うことだったりもしてるので、自然に出てきたというか。ただ、時代のリアルな感じが入ってくるというのは、特に最近はなかなかありませんでしたね。今回のアルバムの他の曲も、内面のことだったり、いつの時代に聴いても変わることのない、普遍的な内容になってますし。ただ「PRAY」に関しては……。
──今の時代を歌ったものを入れたい、という意図ではなかった?
hiro そうではないですね。たぶん、YUKIさんと話している中で、「大事にしたいもの」みたいなことで……「今のこの時代に大事なものって何だろう?」だったり、「その中で自分ができることとは」とか、そういう話の中で生まれた楽曲です。今回、レコーディングするにあたって、YUKIさんが何カ所か歌詞を変えてくださったところはありましたけど。
──「PRAY」の中ではSNSとの付き合い方についても歌われています。ご自身としては、SNSとの付き合い方はどう感じていますか?
hiro 難しいですよね(笑)。アーティスト活動をしている時は、SNSも盛んにした方がいいんですけど、アーティスト活動をしている時ほど、いろんなものを見ない方がいいというのもあって……(笑)。付き合い方はすごく難しいけど、今はこれが当たり前のことになっているし。ちょうどつい最近も、「みんなのプライベートが分かるって、すごいなあ!」って思ってたところだったんですよ。私は職業柄、そういうものがあるのかないのかって感じになってますけど、実はこれはすごいことで。それが当たり前になってる感覚をどうとらえていくかっていうのは、すごく大事なポイントだと思いますね。今はそれが普通な世代が中心になっているんですけど、それを「怖い」と思っている自分もいたりする中で、どうとらえていくか、どう扱っていくか。それがメンタルにも響いてくるので、大事ですよね。まあそこも自分との付き合い方だったりもするし、何にしても自分が大事っていうことはポイントだと思いますけど。
「今はこのアルバムを出すことに、すごくドキドキしています」
──アルバムのラストは「Dear」です。これは唯一、作詞にも参加されていますね。
hiro はい。YUKIさんにご相談しながら、一緒に作るというのが叶いました。ここ何年間か、自分で作った歌をライブで歌うことはあったんですけど、今回のアルバムには、はじめは入れようとは思ってなかったんですよ。「自分で作ったものをどうしても入れたい」というようなこだわりはなくて。ただ、ここ何年か、自分で作って歌ってきたということは、いつもライブに来てくださる皆さんはよく知っていることなんですけど、そうでない方や私を知らない方は分からないと思うし、そういった中で1曲入れてもいいんじゃないかと思ったんですけど、その提案をした時には曲がなかったんです。で、「PRAY」をレコーディングした時に、ものすごく夢中で歌えたんですよ。その感覚がすごく心地よくて、思い出した感じがあって。自分の中で喜びだったんでしょうね、翌日起きたら何かメロディが出てきたんです。それでデモを録ってYUKIさんに送ったら、2~3日ぐらいで作ってくれて、形になりました。ちょっと「今」を伝えて、この先にもつながる感じでできればいいかなということで、ラストに持ってきました。
──DVDにはライブパフォーマンス映像が収録されていて、その中で演奏されている3曲が「Dear」~「Sympathy」~「ZERO」と、アルバムの流れをさかのぼったようになっていますよね。
hiro なってますね。これも意図はしてないんですけど(笑)。最初「ZERO」から始めようかという話だったんですが、「Dear」から練習していたら「これからでもいけるね」という話になって。そこから自然な流れで、ああなったという感じですね。
──あの映像でのアコースティックの演奏も、アルバムとは違った印象でいいですね。
hiro バンドのアレンジで、やっぱりライブだとレコーディングとは違った感じになりますよね。「Sympathy」なんかもライブで歌う感じになりますし。バンドの皆さんはYUKIさんに紹介していただいて、お会いするのはみなさんはじめてだったんですけど、リハーサルの時から心地よくて。ここ何年か私もライブをやっているので、そのライブ感を出した方が喜んでもらえるだろうなということで、完全に生収録でやっています。すごく素晴らしくて、私も好きです。
──このリリースから、今年どうしていきたいですか?
hiro 「どうしていきたいか」を考えられないぐらい、今はこのアルバムを出すことにドキドキしています(笑)。それぐらい思いが詰まってるっていうのもありますし、気がつけばこれだけ年数が経っていて……いつもそうなんですけど、「やる」っていって始めた時は思いが走っていて、後々になって「あれ、実はすごく勇気がいる一歩を踏み出したんだな」と思うことが多くて。だから今回もすごくドキドキしています。今の自分を素直に表現して作ったアルバムが、今まで応援してくださった方や、知らない方とかにどう届くのかなあとか、いろいろ思っている段階ですね。だからこの先は一つずつ、落ち着いてやっていきたいなと思っています。
──ライブもありますよね?
hiro 「こういうライブがやりたいな」というのは、見えてはいます。ようやくですね。昨年末に作り終えた時に、一度全部出し切っちゃったんですけど(笑)、そこからまた「この曲をライブでこうやったら素敵だなあ」とかっていうのが見えてきたので、そこへ向かうエネルギーがワーッと湧いてきたら、突っ走ると思います。今はそういう感じで、湧き出てくる気持ちを大事にしています。
──ファンの皆さんは待ってるでしょうからね。
hiro ホントにこのアルバム自体、本当に長いこと、応援してくださる方たちを本当に待たせたなと思って。約束みたいな感じに思ってたので。「Sympathy」もライブでずっと歌っていて、いつでも聴ける形、手元に置いておける形にしたいと思っていたので、その約束は果たすことができたかなと思っています。
撮影 長谷英史
Tシャツ¥9,350/マクゾゥ(ストックマン)ジャケット¥28,600/メムロード(ストックマン)パンツ¥23,100/メムロード(ストックマン)
問い合わせ先 ストックマン/03-3796-6851 151-0051渋谷区千駄ヶ谷2-30-1
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- WRITTEN BY高崎計三
- 1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。