COLUMNコラム

話題

【楽曲解説付き】NewAlbum『Black Humor』制作秘話をI Don't Like Mondays.に訊く!

2021.08.18
話題
アーティスト
音楽
インタビュー
I Don't Like Mondays.(アイドラ)が、4作目となるフルアルバム『Black Humor』をリリース。これは2019年末から今年にかけて配信リリースされた12曲に、新録5曲がプラスされたもの。この制作過程で様々なことにトライしたという彼らに、その内容や新録曲の詳細について、いろいろと伺いました!

Black Humor (Previews)

自分たちの個性と今の状況を言い表したタイトル、『Black Humor』

──4枚目のアルバム『Black Humor』がリリースされました。2019年11月の「gift」以降の配信リリース曲12曲に、新録5曲が加わった構成となっていますが、この期間でアルバムとして考えるようになったのはいつ頃ですか?

YU  配信リリースされる時も「この曲は次のアルバムに入れるだろうな」というか、入れたくなるぐらいのクオリティの曲を作り続けてきてたんですけど、具体的にアルバム・タイトルとかも含めてどういうパッケージにするかということを考え出したのは、昨年8月~12月の5ヵ月連続配信の直後ぐらいからですね。そのあたりから、アルバムに落とし込んでいくためにどういう箱作りをしようかと話し合い始めた感じです。

──そこでどういう結論になったんですか?

YU  もう一度、自分たちがどういうバンドなのかということを考え直したというのが第一にありますね。前のアルバムのツアーが終わって「自分たちはどういうことをやりたいんだろう」とか「どういうキャラクターで、どういう曲を歌うのが自分たちなんだろう?」というのをすごく掘り下げて考えてできた曲が、昨年、配信シングルの第2弾で出した「MR.CLEVER」という曲なんですね。この曲ができた時に、絶対次のアルバムには入るし、自分たちを分かりやすく象徴している曲だなあと思って。だからそれを基軸にアルバムを構成していこうかということを考えました。次にアルバム単位で自分たちを表現しようとなった時に、自分たちの得意なところとか、自分たちのオリジナルカラーがあるところってどういう部分なんだろうというのを、僕らだけじゃなくてスタッフも入れて会議をして。そこで出たのが「アイロニックなことをポップに歌う」ということで、そもそも「I Don't Like Mondays.」という名前自体にそういう要素があるよねと。毒づいてるけどポップさがある、みたいな。

-I Don't Like Mondays. / MR.CLEVER

──本当にバンドの根幹の部分ですね。

YU  そこに改めて気付いて、じゃあタイトルを決めていこうかとなって、僕らのテーマカラーが黒だということと、去年アルバムを出すはずだったのが中止になったりツアーも延期になったり、「冗談かよ」と思うようなこと……僕らとしては笑えないことだったんですけど……が普通に現実に起こったりと、そういうことを総称するにはどういうタイトルがいいんだろうと考えて、行き着いたのが『Black Humor』だったんです。自分たちのキャラクターと今の環境を全部言い表してるなということで。

──確かに『Black Humor』というフレーズ自体が、すごくバンドに合っていると感じました。

YU  すごくしっくり来ました。むしろ、自分たちがよく思いついたなと思って(笑)。

──今年4月にインタビューさせていただいた際に、SHUKIさんが「楽曲の作り方を変えた」というお話をされていましたよね。それはこの期間の中の話ですよね?

YU  そこから、またさらに変えたんですよ(笑)。

SHUKI  コロナ禍に入った時に一度作り方を見直して、「内面をもっと押し出そう」「みんなで騒げるパーティーソングじゃなくてパーソナルな曲が増えてきたから、そういう世界観をもっと押し出そう」ということで、YUの書く歌詞もそういう方向にどんどんなっていったんですね。じゃあ、その歌詞をもっとよく聴かせる曲作りの方法はないかということで、またやり方を変えて録ったのが「独り占め」と「馬鹿」と「ノラリ・クラリ」という曲です。それは、外のピアニストさんにスタジオに来てもらって、そこで一緒にコード進行をピアノで作って、それにみんなでメロディーを乗せて。だからメロディーとコード進行を最初に決めちゃうというやり方を、初めて試しました。その後で、それをいかに僕らっぽくするかというアレンジの作業を始めたので、やり方が結構変わりました。

 


YU  新録の曲全部じゃなくて、今SHUKIが言った3曲がそのやり方です。「MOON NIGHT」はもともとの我々の作り方ですね。

KENJI  もう1曲の「サボテン」は昔作った曲なので。

SHUKI  だからいろんな作り方が曲によって混ざってますね。

──今回は短い期間でさらに変わったということですね。

KENJI  連続で出してみた反応とかもありましたし。

YU  短いといえば短いんですけど、結構曲を作り続けていたので、このままいくとマンネリ化するなというのがあったんです。楽曲自体がルーティン化しちゃって、会社員みたいに「行って、作って、帰る」みたいになって、このままだといいクリエイティブができなくなるなっていう焦りもあって。それで何か新しいスパイスというか、自分たちの作曲マインドも刺激したいし、新しいインプレッションもほしいなということで、ガラッと環境を変えてみようと。逆に言うと、イベントとかがなくて作曲に打ち込めた期間だったので、意外と試せたというのもありました。

──今回は特に、「次のアルバムを作ります」と言って、例えば10曲とかを短い期間内に作るというのではなく、それぞれは単発の曲を作り続けていたわけですよね。

YU  そうですね。でも僕らって、いつもだいたいそうなんですよ(笑)。

SHUKI  このアルバムも、収録しようと決めていた最後の1曲を入れずに新しく作り変えたのが「MOON NIGHT」という曲なんです。もともとは「MR.CLEVER」みたいな曲を作ろうと思って作っていた曲なんですけど、最後の最後に「このアルバムにはもっといい曲ができる」と思って、ほぼ1日ぐらいで作ったもので。

──そうなんですね!

SHUKI  だから、「アルバムはこれでいく」と決めても、最後までやっちゃうタイプなんです(笑)。

YU  そう、ギリギリまで「もっといいものを」ってやっちゃうんですよね。

──既存の12曲と新録の5曲が揃って、全17曲になった時に改めて見えたものというのはありましたか?

YU  僕らとしては「メチャメチャ新しく作り方を変えた!」と思ってたんですけど、全部通して聴いてみると、意外となじんでたんですよね(笑)。

CHOJI  最初の曲から考えると季節が2回巡ってるんですよね。夏が2回来てるんですよ。



YU  確かにそうだ! 冬も2回来てるし、だから夏の曲と冬の曲が2曲ずつあるよね(笑)。

CHOJI  そうそう。「gift」と「東京エキストラ」とか、どちらも冬なんだけど違うテイストの曲が入ってるんで、楽しめるんじゃないかなと思いますね。

──そういう意味では、短期間に作るよりも幅ができたわけですね。

YU  バリエーションは相当富んでると思いますね。アレンジの手法とか音色の選び方も変わってますし。その時それぞれにモードとか、自分たちが好きなテイストもあるので。

──12曲でもボリューム的には十分1枚のアルバムに足るものがあると思うんですが、そこに新録の5曲を加えようと思ったのは?

YU  理由はいろいろあるんですけど……単純に、前回のアルバムからの期間が空いちゃってたというのもあったので、テクニカル的に「このへんで1枚出しといた方がいいよね」というavexさん側のアドバイスもあって。じゃあアルバムにしようかと思った時に、足りないピースをそこで作曲しようという流れでしたね。

KENJI  「アルバムにするなら、もっとこういう要素もほしい」というものを継ぎ足した感じですね。


メンバーによる新録曲徹底解説!

──先ほどお話が出た「gift」は“コロナ以前”の楽曲になります。この曲も含め、“コロナ以前”の曲は今の視点から見ると違って見えたりというのはありますか?

YU  もちろんあります。ただ厳密に言うと、コロナになってすぐにその影響を受けた曲が書けてたというわけでもないんですよ。試行錯誤してた時期もあったので。「Sunflower」とか「全部アナタのせいなんだ」とかもコロナ禍の中で作った曲なんですけど、コロナで受けた内面的な影響を全てそこで吐き出せてるかというと、自分にとっては疑問で。それがもっと色濃く出たのは、もっと後期の曲、「ENTERTAINER」ぐらいからかなと自分的には思うので、「ここから違う!」みたいなことはあんまりないかもしれないですね。

I Don't Like Mondays. / ENTERTAINER

──だとすると、“コロナ以前”の曲も収録することには抵抗はなかったと。

YU  なかったですね。実際、パキッ!と切り替わったわけでもないじゃないですか。皆さんそうだと思いますけど、「コロナ禍になったからコロナ・モードで!」っていうわけではなくて、みんな戸惑いながら、「これでいいのかな……?」みたいな感じで生活を送っていたと思うんですけど、その中でも僕らはずっと曲は作り続けていたので。


──きっと、この状況が明けてから振り返ると、また違った見え方をするでしょうしね。

YU  そうでしょうね。またこういう状況だから、全く違ったやり方をしても今までのファンの方々も許してくれるというか、世の中がすごくドラスティックに変わっていたので、それに紛れて挑戦できちゃうというのはありましたね。世の中の変化が後押しになったというか。たぶん、普通だったら「こう変えたら、今までのファンの人たちがついてこなかったらどうしよう」とか、いろんなことを考えて挑戦することが億劫になっていたかと思うんですけど、それはプラスに変えられたかなと思います。



──では、新録の5曲についてそれぞれ伺えれば と思います。まずはオープニングの『Black Humor』ですが、これは実質インスト曲と思っていいんですか?

SHUKI  そうですね。歌は入ってますけどその内容にはあまり意味はなくて、オープニングのテンションを高めるためというか。

KENJI  これは最初から「MR.CLEVER」につながりのいい曲として作りました。

YU  「MR.CLEVER」を作った時から、「これをアルバムの1曲目にするから、その前に何かほしいな」と思っていて。「MR.CLEVER」がすごく僕らっぽい曲にできたので、そこに『Black Humor』という概念的に説明を加えるという感じで。

──そんな時点から、この曲をアルバムの1曲目に、と決めていたんですか。

YU  はい。そもそも「アルバムの1曲目になる曲を」と目指して作っていたものだったので。

──次が4曲目の「独り占め」ですね。

YU  これが先ほど話した、ピアニストと一緒に作った曲の1つで、すごいトライというか。J-POPシーンに切り込んでいきたいなと思いつつも、洋楽を聴き続けて育ってきたグループでもあるので、今まではなかなか思い切って行けなかったんですけど、洋楽的な要素のものばかり作り続けても、ちょっと退屈な自分たちもいて(笑)。だからいよいよJ-POP的なものにトライしてみようと思って作った曲ですね。

SHUKI  アレンジでピアノとストリングスがかなり入っていて、その中で僕らの演奏をどうするかというところはかなりバランスを取って、何度も行き来しながら考えました。ストリングスのアレンジが固まったら、それを元に僕らの演奏を録ってとか、細かい調整を重ねて。

CHOJI  細かい話なんですけど、コード進行が2拍ごとに変わるんですよ。今までそんな曲はあんまりやったことがなくて。

YU  展開は早いよね。それと、転調も。ソロとかで転調することはあったんですけど、メロディーが乗っかってる中で、セクションで転調するというのは結構タブーにしてきたところがあったんですよ。それがJ-POPシーンと洋楽の結構大きな違いだなと思ってて、洋学的だなと思うものは同じコード進行がずっと繰り返されて、メロディーで違うアプローチをしていくという手法を取ってるものが多いんですね。僕らもそこを目指したいなということでずっとやってきたので、違うステージにも行きたいなということで、あえてJ-POP進行を取り入れつつ。でもJ-POPそのものじゃないというか、そのへんの人たちはやらないようなやり方を探るために、結構話し合いました。ピアニストの方とも相談しながら、バンドマンだけじゃ見つけにくいコード進行を見つけられて、すごく勉強になりました。

──全く新しいやり方を、しかも外部の方と一緒にやるというのは大変ではなかったんですか?

YU  いえ、一緒にやってくれた方がアーティスト寄りではなくて、プロデューサータイプというか。僕らが「こういうの、ないですか?」とか聞くと提案してくれるタイプだったので、すごくやりやすかったです。

──「独り占め」の歌詞は、叶わなそうな願いについて歌われていますよね?

YU  そうなんですけど、一番のテーマは「独占欲」と向き合ってみようと思って。この曲に関してはコード進行とメロディーを先に作ったので、そのピアノを先に聴いてのインスピレーションで「ああ、独占欲を歌いたいな」と思ったんです。それでいろいろ調べてみると、独占欲にフォーカスして書かれた曲って意外となくて。独占欲の全くない人なんてたぶんいないし、じゃあ書いてみようと。

──ゼロという人はいないかもしれないですが、人によって強い・弱いはあると思います。YUさん自身はどうですか?

YU  どうですかね? たぶん若い頃は独占欲が強かったし、でも大人になってくると彼氏・彼女を束縛したりするのはしょうもないなと思い始めて、さらに大人になると、それ自体も意外と大事なことなのかなと思ったりもして。そういう感じかな?

──ちなみに他の方で、自分で独占欲が強いなと思う方は……。

KENJI  どうなんだろう? 確かに若い頃はすごく強かったですけどね。本当にYUが言った通り、昔は強くて、それが「ダセぇ」ってなって、一周回って「いや、そういうことを思える気持ちも大事だな」って。やっぱりそれなんですよね。だからないわけじゃなくて、持ってはいるし、そういうことに対してドライな自分もいるし。だから難しいですよね。生きてる間に複雑になっていってるし。

 

──で、5曲目が8月4日に先行配信された「ノラリ・クラリ」。歌詞には「のらりくらり」「何だかんだ」「あーだこーだ」と、繰り返しのフレーズがいろいろ出てきますが。

YU  まさにそこからの発想ですね。車の中で何気なく口ずさんでいて、「のらりくらり」という言葉の響きが気持ちいいなと。それで後から他のフレーズを作っていったという感じですね。この歌詞全体が等身大の自分というか、僕が普段考えていることを本当にそのまま綴った感じなんですけど。恋愛のワンシーンから始まってるストーリーではあるんですけど、みんなどう頑張って生きてるのかなあというのを、自分も普段もがきながら生きてるので、自分と同じような境遇の人もきっとたくさんいるなあと思いつつ、書いた曲ですね。

──タイトルは「ノラリ・クラリ」なんだけど、実際は「のらりくらりしたいけど、なかなかできない」という……

YU  そうなんですけど、「そういう人って、結局のらりくらりしてるよな」っていうダブルミーニングというか。結局、冒頭で彼女が機嫌が悪いのも治してないし、何も決め切れてないっていう。

──この曲も先ほど説明していただいた作り方なんですよね?

SHUKI  そうなんですけど、ちょっと違う部分もあって。「馬鹿」と「独り占め」はその方にストリングス・アレンジもしてもらったりとか、結構一緒にアレンジも進めてたんですけど、この曲はメロディーとコード進行だけでアレンジしてます。挑戦したところで言うと、サビの方が音数が減るっていう、結構勇気のいるアレンジになってて。それが地味になりすぎないギリギリのところで、でも音は入れすぎないというところを考えながら。

──バンドとして考えると、音数を減らすというのは確かに勇気がいるでしょうし、そもそも抵抗はなかったですか?

SHUKI  抵抗というより、不安はもちろんありました。

YU  でも、抵抗よりも「減らしたい」っていう希望の方がデカいんじゃないですか。

KENJI  そうだね。

SHUKI  昔、音響を仕事にしている人たちを扱った映画を見たんですけど、その中で「地獄の黙示録」とかでアカデミー賞を取ったりしてる人が「最先端の人は常に人がやったことのないことをやってるから、常にみんな不安なんだ」ということを言ってて。そういう言葉に結構勇気づけられながらいろんな挑戦をしてるんですけど、その中でこの曲は音数を減らすという挑戦をしてますね。


これからそれぞれが実現したいこととは?

──次は、これも8月11日に先行配信された「MOON NIGHT」ですね。すごくネガティブな心情をすごく軽やかに歌うという、これこそアイドラ!という内容ですね。

YU  確かに。この曲は最後に作った曲なんですけど、去年出した「ENTERTAINER」が初めて女性目線の曲だったんですけど、今年出した「馬鹿」も女性目線で書いて、「これは男性・女性、どっちの目線で書こうかな」と考えた時に、男性か女性かとジェンダーで分けるんじゃなくて、もうちょっと違ったアプローチがしたいなと思い始めたんです。それでジェンダーをテーマに、ジェンダーレスを描いた歌なんですよね。主人公は「僕」と自称しながらも、言ってることは生理前の女の子みたいなことで(笑)、だから「MOON NIGHT」というタイトルがそこにつながってくるんですけど。

──ああ、なるほど。

YU  彼女が生理現象前にイライラしているのを見たりした時に、「女の人って大変だなあ」と思ったりしてたんですけど、でも自分も理由は分からないけど無性にイライラすることがあるけど、これってホルモンバランスのせいなのかなあ、とか。そういうのをいろいろ考えたりしてる中で、もちろん女性は大変なんですけど、誰でもそういう日はあるんだなあって自分は思ったんで、それを歌にしてみようかなということで、ジェンダーをテーマに「イラ・イラ」を書いてみました。この曲はポップなんですけど、それもブラック・ユーモアの一つの表現ということで。最後に作った曲だったので、ブラック・ユーモアの要素を入れないといけないという課題もあったんですけどね。

──このポップさはアルバムの中でもポイントになってますよね。

SHUKI  最後に作ったというのもあるし、歌詞とのギャップが僕らっぽいところでもありますよね。この曲はさっき言ったように差し替えて作ったんですけど、大阪でBillboard Liveでのライブを終えて新幹線で東京に帰って、そのままみんなで集まって作ったんですよね。2日後にレコーディングだったので、その日のうちにアレンジもほぼ固めたんですけど、そういう気楽さとかがよかったのかもしれないですね。アルバムの作業の中で最後ということもあって、「僕らっぽい曲を作ろう」というのは最初から頭にありましたし。

 

──手癖とは言わないまでも、ずっとなじんできたやり方で作ったということですね。

YU  そうですね。ずっと違うやり方にトライしてきたので、最後に1曲そういうやりかたでやろうということで、久々に帰ってきたっていう感じです(笑)。

──新録の最後が、11曲目の「サボテン」ですね。

YU  これはだいぶ前にできていた曲で、今回のアルバムの曲で言うとかなり初期にあたりますね。出すタイミングを見計らってたんですけど、配信で出すよりもアルバム曲として出す方が、この曲自体が映えるんじゃないかと思って。歌詞としては、「恋」というよりは「愛」について書いた曲です。愛についていろいろ考えた時に、自分の中では、「この日から生まれた」というものは恋であって、愛ではないなと。一目惚れとか、一瞬で恋に落ちたとかはあるけど、それは愛ではなくて。愛というのは、気付かないうちに育っていくものなんだなあということを思ったんですよね。それを歌にしようと思って、こういう歌詞になりました。僕も小っちゃいサボテンを育ててるんですけど、本当に気付かないうちにデカくなるじゃないですか。日々の中では大きくなってるかどうかは分からないんですけど、過去の写真とかを見ると全然違ってたりして。そういうものなんだなあというのを何となく思って、それを歌にしました。

SHUKI  この曲は最初の頃だったので、僕らだけで作りました。

KENJI  アルバムに1曲ぐらい静かな曲がほしいということでスタートしたものですね。

──では全17曲の中で、みなさんそれぞれのオススメ曲と、ご自身のプレイの聴きどころをお願いします。

SHUKI  このアルバム・タイトルに合ってるなと思うのは、やっぱり「MR.CLEVER」ですかね。歌詞の内容とかテンポ感も含めて、僕らっぽいなと一番思います。聴きどころは……「独り占め」でのドラムは、「STOMP」っていうバケツとかいろんなものを楽器にして叩くエンターテインメントみたいなイメージで、「一つ一つの楽器の音が何なのかはよく分からないけど、まとまると面白い音になる」という感じにしてみました。ずっとやってみたいなとは思ってたんですけど、たまたまこういう曲ができてそれがハマったので、いい機会だと思ってやれて、それはよかったです。

──実際にいろんなものを叩いたんですか?

SHUKI  ドラム自体が打ち込みで、音作りの部分ですね。あ、ただバスドラムのキックだけは実際にやってます。それにドラムって、いろんな種類のマイクを使うんですけど、キックだけのためのマイクと、それを含めて部屋全体の音を録るマイクを違う種類にしてたりして……誰にも伝わらないですけど(笑)、そういう変なことはやってます。

CHOJI  僕は「ノラリ・クラリ」ですね。ギターソロもちょっとあって、僕はロックが好きなんですけど、この曲みたいなフュージョンっぽい曲も聴くのは好きなんですよ。この曲ではちょっと作曲に近い感じでギターソロを構築して、わりとコピーしがいのあるフレーズなんじゃないかなと思ってるので、これを推したいです。「Plastic City」もギターソロが入ってるので、ギターを弾く人はコピーしてほしいなと思います。

KENJI  僕は「MOON NIGHT」ですね。さっきも言ったように最後に、すごく気楽に作った曲ではあるんですけど、もともと心がけてる「音を減らしていく」ということに関して、アルバムを通して一番できたのがこの曲という認識が僕の中ではあるんですよ。歌詞を聴く前にフレーズとかを構築したので、歌詞を汲み取ったフレーズが作れているかというとそうでもないんですけど、すごくネガティブな歌詞と、バカっぽいフレーズのギャップがすごくいいなと思ってます。複雑なことは何もやってなくて、16分音符もそんなに入れてなくて8分音符の中で完結させている中ですごくバカっぽいフレーズになったのが、僕の中ではすごくうれしいんですよね。

──なるほど。

KENJI  こだわりポイントとしては、サビでプルっていう、弦を弾く音が入ってるんですけど、最初8分のグルーブでやったら「何かタルいな」ってなったので、プルの音だけ16分フィーリングでちょっと短くなってるんです。そのためにサビにちょっと勢いが出てるんですよね。これはすごく簡単なので、ベース初心者の方もたぶん一瞬でできる曲だと思うんですけど、そこを追求していくと面白いんじゃないかという点がイチ推しです。

YU  「地上を夢見る魚」ですかね。生々しさを書きたいと思っていて、さらに人間くささを出しつつ、最後に自己発見ができるショートフィルム的な曲を書きたいとずっと考えていたものができたという曲でもありますね。かなり考えて作って、最後のサビでそれを回収できるっていう。そういう感じのショートフィルムが好きなんですけど、それをバンドの曲でやれるとは思ってもみなかったので、できた時の手応えもあったし、実際に出した時の反響もあったので、自分的には作詞のレベルが一つ上がったのかなと思った1曲ですね。

──歌唱面ではどうですか?

YU  「独り占め」ですかね。今までになかった引き出しみたいなものを出して、最後に転調するんですけど、そこでコードと歌詞にインスパイアされた歌声をチョイスしたというか。レコーディングでも思い切り歌えたので、楽しかったですね。

──で、このアルバムを引っさげて、9月から11月まで全国ツアーがあるわけですが、こちらはどういうものになりそうですか?

YU  2年ぶりのツアーなのですごく楽しみです。アルバムは歌いごたえのある曲ばかりなのでメチャクチャ楽しみな一方、1日2回公演という結構ハードなスケジュールなので、そのへんはちょっと怖いんですが、想いきってやりたいなと思ってます。盛り上がるサウンドでみんなでワッショイとはできない、というのは前提にあるので、いかに心地よい音とかグルーブを楽しんでもらえるかということを意識したいなと思っていて、そのへんはすごく楽しみですね。今まで以上にグルーブを出したいと思っていて、それって音源よりもライブならではの心地よさとかクセになってくると思うので、そのへんは突き詰めていきたいと思ってます。

 

KENJI  セットリストもこの前決めて、これからリハーサルを詰めていくところです。

──ファンの方も久々になるので、すごく楽しみにされてると思いますが、セットリストを組むにあたってはそのあたりも意識されましたか?

SHUKI  もちろん。YUも言った通り「騒げない」というのが前提にあるので、その中で一番楽しめる方法というのを考えてます。

──そこも楽しみですね。4月のインタビューでは、バンドとして今後どうしていきたいかということを伺ったので、今回は個人としてのこれからを伺いたいと思います。

SHUKI  自分としてこのバンドに対して楽しみなのは、こうやってこのコロナのことで作り方が変わったりしていて、次がどうなるかというところですね。まあ自分でも分からないですし、今までは、その時々で変化のモードを曲にしてたんですけど、1回それを全部まとめたらどうなるのかなというのは気になってます。

CHOJI  このアルバムは結局、「心地よさ」を前面に押し出す作風になったので、これから全然違う作風が出てきてもいいんじゃないかと思ってます。

KENJI  次はバラードかもしれないよ(笑)。でもコロナの状況がよくなったら、そういうのもやりたいよね。

CHOJI  この前のライブでも、みんなマスクをして間隔もあけてるんですけど、コロナ以前と変わらないような熱狂が感じられたんですよね。

YU  そうそう。「ヤベぇ、これだったらもうちょっと盛り上がる曲を作ってもよかったかも」って、正直思っちゃいました(笑)。

CHOJI  昔の曲でもワーッとなってたし、今後楽しんでいくという意味では、そういう曲も必要なのかなと思いますね。

KENJI  ベースの打ち込みを最近やり始めていて、ベースは打ち込みという曲もどんどん増えてるんですけど、「ノラリ・クラリ」では初めて、DTM上の打ち込みだけじゃなくて、シンセサイザーの実機を使ってやってみるということをしているんですよ。今回、KORGさんに協力してもらってMS-20っていう実機をお借りして実験的にやってみたら、すごく音がいいし、全然違うなというのをすごく感じたんですね。今まで、ライブではベースだけ弾くのが当たり前だと思ってたんですけど、今後は実機で弾いたりするのもいいなあと思って、ちゃんと勉強し始めたばっかりという感じです。だからいずれはステージでやってみたいですね。

YU  僕は去年からピアノを始めていて、Billboard Liveでも披露させてもらったんですけど、ついでにジャズも勉強していて、ピアノとジャズの要素を曲にもしっかり落とし込めるようになりたいですね。アイドラにそういう要素を入れたらどうなるんだろうなあというのもあるので。今までは、「ちょっとジャジーな感じ」でオシャレに見せていくというのは正直できてると思うんですけど、ジャズをしっかり勉強してやってみたらどうなるかというのは実験的だし、音楽的にも面白いアプローチができるんじゃないかなと思ってます。そういうことにトライしたいですね。

──今、皆さんが言われたことが実現すると、それはまたすごく面白いことになりそうですね。そこにも期待したいと思います。ありがとうございました!


撮影 長谷英史
 

4th Album
『Black Humor』


2021.8.18 on sale

【I Don't Like Mondays. Official Site】
https://idlms.com/

【I Don't Like Mondays. YouTube】
https://www.youtube.com/channel/UCPFQ7ao1TbzJUuITXsG0oww
 
【I Don't Like Mondays. Instagram】
https://www.instagram.com/idlms.official/
 
【I Don't Like Mondays. Twitter】
https://twitter.com/IDLMs_OFFICIAL
高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

もどる