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Have a Nice Day!(ハバナイ)

シンガロングとモッシュのない世界で輝いたディストピアロマンス/Have a Nice Day!ワンマンライブ「C19 Rhapsodies」ライブレポート

2020.10.16
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10月2日、渋谷O-EASTでHave a Nice Day!のワンマンライブ「C19 Rhapsodies」が開催された。9月23日に発売されたニューアルバム『Rhapsodies 2020』のリリースパーティとして開催されたこのライブ、ハバナイの主催ライブとしては2月27日の「NEO TOKYO OLYMPIA!!!」以来約8ヶ月ぶり、コロナウイルス拡大以降の有観客ライブも6日前のりんご音楽祭で再スタートしたばかりだ。そんな中、どのようなライブが展開されたのか? その模様をレポート!


「今日はシンガロングできねえからさ、君らのために俺が死ぬほど歌うからよ」



いまだコロナ禍収まらぬ現状をふまえて、今回のワンマンは感染対策として1000人規模の会場で300人限定での開催。入場時はマスク着用はもちろん体温チェックや問診票記入など最善の施策が取られた上、会場内客席フロアには立ち位置を示す足型のステッカーが均等に貼られていた。立ち位置指定、ソーシャルディスタンスを守りながらのスタンディングライブ。さらに大声での歌唱も控えるよう事前に伝えられていただけに、観客が密着し入り乱れるモッシュピット、そしてシンガロングを生み出してきたいつものハバナイのライブとは遠いものになるかもしれない、という予感は来場者すべてが感じていた。
 
ハバナイ全ての作詞作曲を手掛けるフロントマン・浅見北斗が4月から作り続けた曲を収めた『Rhapsodies 2020』は、この数ヶ月の彼の気分がストレートに出た一枚だ。前作に比べるとシンガロング要素は抑え気味に、歌詞にも浅見自身の感情が色濃く出ている。モッシュやシンガロングで一体になるハバナイのライブが、そんな新作とソーシャルディスタンスという縛りを重ねた上でどうなるのか? 

ローリングストーンズやピクシーズ、LCDサウンドシステムなど「LOCK DOWN」の歌詞に登場するバンドの曲がBGMで流れ続ける会場に、均等に並ぶ観客たち。開演時間直前、その締めに「LOCK DOWN」が流れ、開場が暗転すると共に流れてきたのは、新譜に収録されたインスト曲「BRIGHT HORCE」。タイトルは「馬が夜明けの狼煙として朝を連れて来る」というインディアンの伝承から取ったというこの曲、まさに闇から朝焼けが射してくるような大サビと共にメンバーが登場。この日からドラマーとしてDALLJUB STEP CLUB他で活躍するGOTOが加わったハバナイ、彼のドラムが加わることでフロアも高揚していく。
 
メンバーの最後に現れた浅見が「OK、ウエルカムトゥスカムパーク。今夜も最高の夜を始めよう」と告げて、始まった1曲目は「GET UP KIDS!!!」。フロアからは自然とクラップが起きて一気に解放的な空気になりつつ、浅見は煽るというよりもゆったりと確かめるようにマイクを握る。続いて弾けた空気から世界のロックンロールとダンスミュージックを煮詰めたような「LOCK DOWN」、NYニューウェーブ感の高いうねりが心地よい「TOO LONG VACATION」と新譜のナンバーが続く。
 


「今日はモッシュもシンガロングもできるだけしないようにしよう。マジでゴメン、申し訳ない!(会場から拍手)分かってくれてありがたい!君ら優しいな!」とフロアとやりとりしつつ「ガンガン曲やってブチ上がっていきましょうか!」とシカゴフットワークのステップも軽やかに「ファウスト」、そしてサビでフロア中で中指を突き上げる「ロックンロールの恋人」に「60 seconds superstar」と続き、「僕らの時代」では「今日はシンガロングできねえからさ、君らのために俺が死ぬほど歌うからよ」とギターの中村むつお、キーボードの遊佐春菜と共に前のめりで歌い上げる。
いつもなら大合唱が起きるはずのこの曲も、フロアはただ拳を上げてその熱を放出しステージに伝えようとする。大声では歌えないけれど、マスクの下は思わず口ずさんでしまう歌の数々。8ヶ月ぶりのライブ、いつもと違って歓声は起きなくても、むしろ予定調和がないことで確実に高い熱を終始フロアに滲ませていた。
 
この日はいつも以上にMCが饒舌だった浅見。インスタグラムでライブに行くのが不安だ、というファンからのメッセージをもらった事や、このコロナ禍であらためて自らの半生を振り返りつつ「始まった戦争や混沌は戻すわけには行かなくて、殺し合いをしたり、もしくは裏切ったりしなきゃいけなかったりする。でも、この混沌や戦争は終わるわけなんでね。その時にありのままの自分でなくなって『別の自分に変わっちまった』みたいなことは起きてもらいたくないな、って思ってる。人は嘘をつきながら生きていかなければいかないんだけど、自分自身はありのままで生きてくしかない。その場では周りと合わせなきゃいけないかもしれないけど、ありのままでいる心が奥底にないと、自分の人生が自分の手のひらから落ちちまうから。せめてここにいる人だけはそういうふうに生きてほしいんですよ」とこの場に来ている皆へと思いを伝えた。


ハバナイにしか放てない輝きに満ちたステージ



中盤「ハートに火をつけて」「Smells Like Teenage Riot」といったナンバーが流れるころにはフロアも自分のスペースの中で楽しむ空気に慣れてきた様子に。体を揺らし、掌を天に捧げ、ハバナイでしか得られない開放感を味わい続ける。その中で「愛こそすべて」に続いて演奏された「マーベラス」は前曲からシームレスに繋ぐバージョン。轟音ギターの中で歌われる「素晴らしい歌がここにはあって/わたしのココロを困らせたりする」という歌詞は、まさにこの会場のフロアの声を代弁するかのよう。歌い終えた浅見も「そのうちね、「マーベラス」が死ぬほどシンガロング出来る日がきたらいいね。その時はみんな喉がぶっこわれるくらい歌ってほしいね」とこの日を楽しみにしてきたオーディエンスに未来のライブについて語り希望を与えた。
 
ライブも終盤、「Night Rainbow」「わたしを離さないで」「LOVE SUPREME」でたっぷり踊らせた後、「自分の中で歌いたいことを歌い尽くしてると、MCで話すことないんですよね」と言いつつも、再び長めのMCに。
「伝わってるってことを信じるしかないんだけど。俺の思ってることと、皆が受けとってることは違かったりするんだけど、それは悪いことじゃなくて、皆同じ言葉の中に違う意味を感じたりするわけじゃない? 俺が投げかけた言葉の中に、俺が絶対見つけられなかった意味を見つけてもらえると、『そんな意味が俺の歌の中に存在してたんだな』ってすげえ感じて。このコロナウイルス禍の中、SNSのメッセージで『すごい死にたい毎日があるけど「僕らの時代」みたいな歌のおかげで楽になるよ』と言われて、そういうつもりで作ったわけじゃないんだけど、『でもそういう意味があったんだな、人の人生に関われてるのは幸せなことだな』と思ってる。
『これはいったい誰の歌なんだ? 俺のために作ってる歌なのか? いったい誰のためなのか?』っていうと、社会の中で俺みたいにドロップアウトしなかった人のためなんじゃないか。ケンドリック・ラマーが言ってたんだよ。『自分の歌がもし金持ちのためだけに存在しているのならマジ意味がない。そうじゃなくてシカゴとかデトロイトのアウトバーンを毎朝クソな気持ちで車を走らせなきゃいけないような奴のカーステレオで自分の曲が鳴ってなかったらやってる意味がねえんだ』って言ってて、そうだよなって。
ドロップアウトした身勝手な自分は、はっきり言ってコロナウイルスにかかったとしても誰も迷惑かけないくらいで生きてるけど、そういう身勝手な自分のために歌ってるんじゃなくて、苦しさの中で自分つうものを押し殺していきなきゃいけないやつのために歌ってるわけだから。つまり、何が言いたいかっていうと、『歌っていうものは誰のものでもないんだよね』って話!」

 

この日の長いMCは、2月以来のワンマン、しかもシンガロングとモッシュのできないこの日のライブを迎えて、浅見もそのもどかしい思いを言葉で溢れさせてしまったのかもしれない。ひねた言い回しを使いながらも、自分とこの日集まった300人、そして来れなかったファンや、さらにまだハバナイを見ていないが必要とするはずの人に向けての思いがあった。
 
MCの後に流れはじめた曲は、コロナウイルス禍が起きてから浅見が最初に作った曲「トンネルを抜けると」。avex Portalのインタビューでは「これさえももう3月の時点のノスタルジーかなと思えるくらい」と浅見は語っていたが、ひさびさのワンマンであるこの夜に生で歌われると、あらためてここまでのトンネルの長さを感じさせる上で、そしてこの先も遠いけれどずっと先の希望の光を信じさせる。
 
そこからの終盤、モッシュピットのない中で歌われる「Blood on the mosh pit」はどこかいつかまたモッシュのあるフロアで再会しようという祈りの歌のようであり、最後に幾つもの夜を輝かせてきた「フォーエバーヤング」でフロアをピークに高め、「またいつかモッシュピットで会おうぜ。ありがとう!」と言い残しステージを去っていった。
 
浅見が前回インタビューで「これまでアルバムのタイトルにも付けてきた『DYSTOPIA ROMANCE』ってのはディストピアを表現してたわけじゃなくて『ディストピアの中にもロマンスはあるんだ』ってことを言ってる」と答えてくれたが、確かにコロナウイルスというディストピアの中ではあるけれど、この日のステージとフロアにはハバナイにしか放てない輝きがあった。様々な思いを胸にハバナイのワンマンに集った300人は、数ヶ月ぶりのハバナイの楽曲にシンガロングやモッシュがなくても突き動かされることを確かめられたはず。それを証明するワンマンだった。
 
 
 
Have a Nice Day! C19 Rhapsodies
2020年10月2日(金)Shibuya O-EAST


   BRIGHT HORSE
M1 GET UP KIDS!!!
M2 LOCK DOWN
M3 TOO LONG VACATION
      MC
M4 ファウスト
M5 ロックンロールの恋人
M6 60 seconds superstar
M7 僕らの時代
      MC
M8 ハートに火をつけて
M9 Smells Like Teenage Riot
M10 愛こそすべて
M11 マーベラス
      MC
M12 Night Rainbow
M13 わたしを離さないで
M14 LOVE SUPREME
      MC
M16 Blood on the mosh pit
M17 フォーエバーヤング




『Rhapsodies 2020』 2020.9.23 ON SALE
【CD+Blu-ray】AVCD-96576/B 4,800円(TAX IN)



 
【Have a Nice Day! オフィシャルHP】
http://habanai.jp/


 
大坪 ケムタ(オオツボ ケムタ)
WRITTEN BY大坪 ケムタ(オオツボ ケムタ)
アイドル・プロレス・B級グルメから大人方面と一見幅広いようで狭いジャンルを手がけるフリーライター。著作にゆるめるモ!田家大知Pとの共著「ゼロからでも始められるアイドル運営」(コア新書)、「SKE48裏ヒストリーファン公式教本」(白夜書房)など。
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