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【FAKY】エモチルな新曲「ダーリン (Prod. GeG)」の意外なコラボ理由とは!?【夏の終わりにピッタリ】

2020.09.09
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音楽
インタビュー
今年に2月に発表した「half-moon」のMusic Videoが300万再生を超えるヒットを記録。その後、6月にリテイクアルバム「Re:wrapped」、続けて7月に「half-moon feat. Novel Core」とリリース攻勢を仕掛けるFAKYが、新曲「ダーリン (Prod. GeG)」をリリースした。曲名にクレジットされているGeGとは、大阪発の3人組、変態紳士クラブのメンバー兼プロデューサー。変態紳士クラブはレゲエとヒップホップを土台にしつつ、GeGが手掛けるメロウな作風が評判を呼び、現在、TikTokやストリーミングサイトで人気がうなぎ登りの注目株だ。そんなGeGが腕を振るった「ダーリン」は、夏の終わりの寂寥感を呼び起こす“エモチル”と呼ぶにふさわしいラブソング。曲調も歌声もダンスも、FAKYにとってまったく新しい扉を開けた楽曲となった。誰も予想していなかった今回のコラボレーションはどのようにして生まれ、5人はこの曲からどんな思いを感じ取りながら歌ったのか。新しい扉の向こうに始まるFAKYの今後のストーリーも含めて語ってもらった。


コラボの決め手は!?



――新曲「ダーリン(Prod. GeG)」は、どのように制作が始まったんですか?
 
Lil’ Fang 「Re:wrapped」を出したあとの展開をどうするか?という話を今年の初めにしていたときに「倖田來未さんやAwichさんとご一緒させて頂いたのがとても刺激的だったので、また新たなコラボもしてみようってなり、スタッフの方と話し合う中で変態紳士クラブさんにぜひお願いしてみたいってなりました。
 
――ということは、プロデューサー先行で話を進めていったと。
 
Lil’ Fang そうです。変態紳士クラブさんの曲を作っているのがGeGさんなので、そこからGeGさんとFAKYのマリアージュを見てみたいと思い、GeGさんにプロデュースをお願いする流れになったんです。あと、それとは別にHinaが同時進行していて。
 
Hina 私はその話を知る前に、今年3月とか4月の自粛期間中にTikTokでGeGさんの「I Gotta Go feat. kojikoji, WILYWNKA & Hiplin」を使って動画を上げていて、それをGeGさんがたまたま見てくださってメッセージで「自粛が明けたらお互いにライブ観たいですね」「いつか何かできたらいいですね」みたいな。そうしたら、こんなにも早くコラボが実現したのですごくうれしかったです。
 
――変態紳士クラブ/GeGさんだと発想したのは、どういう理由からなんですか?

 

Lil’ Fang 確実にマッチするなとか、やって大丈夫って思える方は、お互いの中間を取ろうとしちゃうというか、お互いのよさをつぶし合っちゃう可能性もあるんじゃないかと考えていて。逆に化学反応が起きそうな予想できないコラボが面白いんじゃないかなって思ったんです。
 
――そのぶん怖さや不安もありませんか?
 
Lil’ Fang GeGさんの作るサウンドが格好いいのはわかっていたし、それが好きだから、それに乗りたいっていう。GeGさんの船に乗りたいっていう気持ちで挑みました。
 
Hina ずっとワクワクしてました。GeGさんには、この女の子5人の、歌って踊って、しかもラップをしないガールズグループがどういうふうに見えるんだろう?って。どういうふうにFAKYを料理してくれるのか楽しみでした。
 
Taki 日本の音楽をまだあまり知らないから、誰かとコラボするのはいつも楽しみなんです。
 
Mikako どういう化学反応が起こるんだろう?って、内心ドキドキでしたが、これまでとは違う個々のよさが出るんじゃないかと思いました。
 
――HinaさんとLilさんは、デモを聴いたときにどのような印象を受けましたか?
 
Hina とにかくエモーショナルだし、私たちが歌っても無理をしてないというか、ヒップホップ畑の方にプロデュースしていただいたものを頑張って歌う感じになってない。背伸びしなくて歌える等身大のものを作ってくださってうれしかったです。
 
Lil’ Fang GeGさん名義で出しても聞ける曲だなって思ったし、Hiplinさんが書いてくださった歌詞もうれしかったです。男性が書いているんだけど、女性に歌ってもらいたい歌詞になってるなと思って。楽曲の雰囲気はGeGさんなんだけど、歌詞は女の子っていうのがすごくいいバランスだと思ったし、ちゃんとコラボレーションになってると思いました。
 
 
初挑戦のスタイルにも注目!
 
 
――ここまでチルなサウンドはFAKYになかったし、ウィスパーヴォイスも初挑戦ですね。
 
Lil’ Fang そうなんです。オートチューンも初めての挑戦でした。
 


Mikako GeGさんに「恋愛の曲だから、そういうときの気持ちを思い出して歌ってみて」とアドバイスをもらって、やってみたら自然とそういう声が出て、自分でも「あら!? 歌えちゃった!」みたいな。あまり歌おう、歌おうとしないこと。ただただ、気持ちを乗せたら歌えました。
 
――TakiさんとHinaさんは、もともとエアリーな声質だから、こういう曲調でもそれほど苦手意識はないんじゃないですか?
 
Hina 私はすごくやりやすかったです。
 
Taki 私もそう。初めて座って歌いましたけど、落ち着いた感じがして歌いやすかったです。
 
Lil’ Fang 今回はGeGさんのアイデアで、初めて全員、座った状態でレコーディングしたんですよ。
 
――そうするとお腹に力が入らないから、やさしく歌えるということですか?
 
Lil’ Fang そう。お腹から声を出す感じじゃなくて、語るように、ささやくように。立っちゃうと、どうしてもみんな“歌っちゃう”ので。さっきMikakoが言った感情を乗せるっていう意味でも、ある意味セリフのように歌うっていう。
 
――Akinaさんはどうでしたか?
 
Akina 最初にデモを聴いたときは、オートチューンをかけた男性の声で歌われていたので、これをどういうふうに表現しよう?って。
 
Lil’ Fang Akinaは、声質はいつもの感じなんですけど、コブシがすごく回るんで、それを押さえるのが大変だったのかな?と思います。
 
――ケロケロしちゃうから。
 


Akina そんなにストレートに歌うことも、力を抜いて歌うことも初めての経験でしたけど、丁寧にディレクションしてくれたおかげで新たな挑戦ができたし、やってみたらすごく気持ちよかったんです。そうやって私たちのことを大事にプロデュースしてくれてるGeGさんにリスペクトを感じました。
 
――日頃の発声と一番大きく違うのはLilさんですね。「大きな声で歌わないでください」ってことだから(笑)。
 
Lil’ Fang そう。ファンがの方にも「Lilちゃん、どこ?」って言われる(笑)。
 
Mikako でも、それができちゃうんですよね、この子は。天才なので(笑)。
 
Lil’ Fang あざーっす(笑)。
 

それぞれのお気に入りフレーズは?
 
 
――GeGさんとのレコーディング作業で、ボーカルディレクション以外に印象的だった出来事や場面はありますか?

Akina 普段の話し方も、すごくチルな方だなぁと思いました。伝えたいことはちゃんと言うんですけど、すごくやさしくっていうか、声のトーンが気持ちいいんです。話していて、落ち着くんです。
 
Taki 私はあまりお話できなかったんですけど、レコーディングのときに二人で話すことができて。そのときに「ちゃんとプリプロのときよりうまくなってるよ。練習したね、ありがとう」って言われてドキっとしました(笑)。
 
Lil’ Fang あはは。ポケットからキュンです(笑)。
 
Taki うん。ポケットからキュンでした(笑)。
 
――歌詞は、歌詞の一行一行がエモーショナルで、寂寥感が広がる筆致になっています。
 


Hina 胸が苦しくなるポイントがたくさん詰まってて。私は考え事をするタイプで、悩んでる時間すら若干楽しんでるタイプだから、普段から切ない葛藤系の曲をよく聴くんです。私がFAKYに入ってから初めて切ない感じや葛藤してる感じをストレートに歌えると思って。最初に歌詞を見たときはちょっと泣きそうになりました。
 
Akina 今回の曲は、私でもわかる日本語の歌詞だったので、最初に聴いたときから意外とスッと入ってきて。いろんな感情を最初から表現できた気がします。
 
Taki 私はこういう恋愛経験があまりないから、どうやって歌おうか考えて、家族や友達に置き換えて気持ちを入れました。
 
Lil’ Fang GeGさんに、勢いで別れちゃったけど、元カレとヨリを戻したいというテーマですって言われたときに、勢いで別れた人と私は全員友達になってしまうので、どの恋愛にしよう?みたいに考えましたね。私はわりとドロッとした恋愛が多いので(笑)
 
――今回の歌詞はドロッとしてないし、もどかしさが肝ですしね。
 
Lil’ Fang そう。私たちの曲っていつも答えがあるんですよね。こういうことがあったけど前を向いて歩いていこうとか、こういうこともあるけど私たちは私たちだよねとか。けど、今回の曲は答えがなくて。これだからこうしますとか、こうしていきたいですってはっきり言ってないんです。そこがすごく詩的だなって感じました。
 
――5人それぞれ、今回の歌詞でお気に入りのフレーズを教えてください。
 
Akina 私が一番好きなフレーズは「ふと聞こえてきたMelodyが呼び起こしたMemory」です。これは恋愛だけじゃなく、誰でも共感できると思うんです。あと、思い出と言われると、いいことでも悪いことでも、大きな出来事のことを言いがちですけど、私は何気ない日常のシーンを思い出すことが多くて。例えば家族と一緒にドライブしながら歌ってる曲とか。すごく特別な出来事じゃないけど、それが自分にとって大事な思い出になってるなっていうことにこの曲を歌って気付きました。だから、これからもシンプルな出来事をもっと大事にしていきたいと思いました。
 


Taki 私は英語の「Until the sun rise in my heart」っていうところです。好きな人と別れたり、辛いことがあるときは目の前が真っ暗になると思うんです。いつ太陽が上がってくるかわからないから、それまで待っているしかない。つまり、誰でも落ち込むときはあるんだよっていうことをたとえているフレーズで、すごく印象が強かったし、それって誰もが経験してることだと思うんです。
 
Mikako 私は、サビの部分が全部好きなんですけど、1行選べと言われたら「だから照れてないでそばにおいでよ」っていうところです。全体的に切なさとかもどかしさがある中で、サビの最後のここで自立した女性の姿が浮かんだんです。照れてないでこっちにおいでと。相手はまだ何か引っ掛かってるかもしれない。もしかしたら来たくないかもしれない。でも、私はもうここにいるから、来たいときに来ればって。私は、Lilと真逆で恋愛経験はそんなに多くないし、初恋もすごく遅かったんですね。だから、ここは、“私はずっとここにいるよ、大切なものを私は見つけたから。あなたのことを想ってね”……っていう感じ、その初恋の人を思い出して歌ったんです。
 
Hina 私は好きなところがたくさんあるんですけど、いちばん胸が苦しかったポイントは「ため息のような独り言にあなたへの想いが零れる」です。この一行にいろんな意味があると思っていて。ため息って憂鬱なときとか悲しいときとか思うようにいかないときに出るじゃないですか。この曲はヨリを戻したいっていう、自分からアクションを起こさないといけないときの曲だから、本当にため息が出ちゃうような感情だと思うし、こういう“言いたいけど言えないこと”って、心の声でもなく、小さい声でもなく、まさにため息のような声だろうなって。その表現がすごく絶妙で、たった一行に深い意味が詰まってる。それがこの曲全体のエモーショナルな感じに繋がってると思うから、このフレーズがすごく衝撃でした。
 


Lil’ Fang 私は「君が歌えなくても私は歌うよ」が好きです。私、歌い始めてから今年で11年目なんです。すごく大事なときとか大事なことって、もう言葉にするより歌にした方が楽なんですよ。「嫌い」とか「好き」っていう感情も言葉にしてもスッキリしなくて、そういう曲を書いたり、そういう曲を歌うことで気持ちを表出してるんです。このフレーズは、君が言えなくても私が言うよっていう意味の比喩表現だと思うけど、私にとっては比喩でもなんでもなくて、すごくストレートに向き合えたフレーズなんです。
 
 
FAKYの世界をもっと広げていきたい!
 
 

――今回のMVのコンセプトを教えてください。
 
Lil’ Fang 夕陽が思い浮かぶような曲なので、夕陽をコンセプトにしていて、ビデオの中でも夕陽がすごく大事にされています。大きなLEDスクリーンにでっかい夕陽が映ったり、それぞれがいる部屋の中に夕陽が映し出されたり。で、部屋にいるシーンは自分の内面とか胸にある想い、ダンスシーンは相手に向けた自分っていう感じで、それを対比的に表現してるんです。その二面性をすごくスムーズに繋いでいて、その繋ぎ方のポイントになるのがLEDスクリーンに映る夕日なんです。
 
――今回のダンスはどのようなイメージで作ったんですか?
 


Akina 曲調に合わせたエモチルなダンスになっていて、歌詞に合わせたリリカルな振りも入ってます。いつものFAKYのヒップホップな感じプラス、演技っていう感じを見せることができたと想います。部屋で一人でチルしてるシーンも演技だけど、ダンスもそれぞれ演技してる感じになってます。
 
Lil’ Fang リリカルダンスは初めてなんです。歌詞に完全にフォーカスした振りっていうのはこれまでなくて。今回は「ダーリン」という言葉がパンチワードなので、そこをキャッチーな振りにしていたり、「ねえ」という部分も本当に「ねえ」っていう手の動きをしてる。リリックから振りができたのは初めてです。
 
――ずばり、MVの見どころを教えてください。
 
Lil’ Fang ひとりひとりの顔ですね。表情。演技。みんながこんなにアップで、ひとりひとり映ってるビデオは初めてなんです。しかも結構長めにアップ。この距離?みたいなアップもありますから。
 


Taki 私は、顔より目を見てほしいです。いつものみんなのSNSとか、他のMVと違う。みんな目で話してる気がします。目でもう気持ちがわかる。
 
Lil’ Fang そういうのを“目は口ほどに物を言う”っていうんだよ。
 
Taki ん? 目の口はどうで言う?……っていうのを見てください(笑)。
 
Akina あと、もうひとつポイントがあります! ひとりずつのシーンが続くんですけど、最後だけ5人集まって笑うんです。そこはいつも通りのFAKYを見られるから。そのギャップが好きなので、最後も注目してほしいです。
 
――今回の「ダーリン」では、これまでになかったまったく新しいFAKYの顔を見せています。この曲をキッカケに今後FAKYをどういう方向に広げていきたいと考えていますか?
 


Mikako 「コレ、メッチャFAKYだね!」っていう、すごく踊る曲もやりたいなって思ってます。たぶんまだお客さんを入れたライブはできないけど、ライブ映えするような“ザ・FAKY”っていう曲。ガッチガチに踊ってガッチガチに歌い上げるような曲をまたやりたいです。
 
Taki 5人になってからのFAKYで、去年はガールズパワーをテーマにした強い曲を出してきました。「half-moon」はちょっとセンチメンタルな感じだけど、メンタルの強い女性だと思うんです。でも、この「ダーリン」で初めてFAKYの弱い部分を出したと思っていて。パワフルな5人だけど、たまにはこういう気持ちにもなるよっていう。それってみんなにあることだと思うから、いつも違う感じで共感してもらえたらうれしいです。
 
Akina この「ダーリン」1曲で今までのFAKYとは違う一歩を踏み出したと思うから、こういう方向をもっと広げていきたいし、こういう曲もできるじゃんって自信を持てるようになったから、これからはもっといろんなジャンルにトライしたいです。これができたからこそロック系もいきたいし、ボーダーレスに曲にも挑戦していきたいです。
 


Hina 私はめっちゃエゴサをするタイプなんですけど、「ダーリン」が出た直後にSNSを見ると、GeGさんキッカケでFAKYを知ってくださった方も多くて。ABEMAの「月とオオカミちゃんには騙されない」とか「half-moon」とか、いろんなキッカケでFAKYのことを知ってくださった方が、これからもずっとFAKYを好きでいてもらえるように。例えばFAKYのセルフプロデュースでオリジナルの曲を出しても「やっぱFAKY、いいね」とか、「今までFAKYを知らなくて損した」と言ってもらえるような活動をしていきたいです。
 
Lil’ Fang 今年はライブができないので、ライブ以外でどのように楽しんでもらえるかっていうことを常に考えていて。もう次のことを考えて動いてるんですけど、「やっぱりFAKYをライブで見たいね」って言ってもらえるような動きができるようにしたいです。その「FAKY見たい、FAKY見たい」っていうフラストレーションを絶えることなく溜めていきたいし、私たちも同じ気持ちで「やっぱりライブしたいな」っていうフラストレーションを溜めていきたい。フラストレーションって原動力になると思っているんです。ファンの方も私たちもフラストレーションが溜まれば溜まるほど、ライブができたときには今まで味わったことのない爆発力を得られると思うので。前向きな意味で、今はフラストレーションを溜めていきたいと思ってます。
 
撮影 長谷 英史



「ダーリン (Prod. GeG)」NOW ON SALE




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https://vt.tiktok.com/ZSPhusaP/



猪又 孝
WRITTEN BY猪又 孝
1970年、新潟生まれ。音楽ライターとして国産のR&B/HIP-HOP/歌モノを中心に執筆。24時間HIPHOP専門ラジオ局「WREP」に放送作家/ディレクターとして参加中。共著に15人の著名ラッパーが歌詞の書き方を語る「ラップのことば」「同2」(SPACE SHOWER BOOKs)。
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