【#Homesession #オンライン繁華街 #SKYHI自宅ワンマン】SKY-HI #STAYHOMEの活動を振り返る
#STAYHOMEの合い言葉の元、誰もが今まで経験したことのなかった事態に陥っていたこの数ヵ月間。それはアーティストも例外ではなく、むしろこれまで不特定多数を相手にしてきたアーティストだからこそ、多くの問題に直面することになった。その解決の仕方は様々だが、SKY-HIのように積極的に、そして多面的に動くことによって糸口を見出したアーティストもいる。今回はそのSKY-HIと、彼を間近で支えるスタッフに、その活動の中身と、そこで感じたことを聞いてみた。
作ってる間は病まないんですよ、アーティストは。
この数ヵ月、新型コロナウイルス禍の中で普段どおりの活動ができたアーティストはいないだろう。リリースの中止、ライブの中止、中には予定していた解散ライブすらできずにステージを降りざるを得なかった者さえいる。そんなライブどころか練習すらままならない状況の中、精力的な活動を見せているのがSKY-HIだ。
3月からスタートする予定だった「Round A Ground Tour」全公演の自粛、6月17日発売予定だったベストアルバム『SKY-HI’s THE BEST』発売延期という壁にぶつかりながらも、ネットをはじめとしたメディアを#STAYHOMEな時だからこそのSKY-HIの今を発信してきた。その活動に励まされた人も多いはず。
その主なところを振り返ってみよう。3月7日にYouTubeチャンネル「SKYHICHANNEL」からスタジオライブを生配信し、4月16日には日本テレビ「スッキリ」で自宅からテレビ電話で繋いで生ライブを全国に届けた。さらに5月6日にはYouTube・Twitter・Instagramからの配信、さらにJ-WAVEで放送された「#SKY-HI自宅ワンマン」をトータル3時間48曲ものボリュームでやりきった。
また、その活動はライブだけでなく4月6日には新曲「#Homesession」を発表、その後バンドTHE SUPER FLYERSとの自宅バンドセッションバージョンも公開された。4月10日にはデモ音源が話題になっていた「そこにいた」を配信スタート。そして4月15日にはSEKAI NO OWARIのFukaseとのマイクリレー企画"the days"を発表し、その後ちゃんみな・AK-69・般若・きゃりーぱみゅぱみゅら豪華メンバーで継続中だ。
それ以外にも過去のワンマンライブをYouTubeで配信し、そのプレミア配信では自身もチャットに参加。さらに自身の楽曲をプレイヤーやリスナーに楽しんでもらおうとカラオケ音源や楽曲データの配信、tiktokへの「Don't Worry Baby Be Happy」配信などをまとめた「#オンライン繁華街」の開設など、リスナーを楽しませるイベントもふんだんに用意。これらの活動のほとんどが新型コロナウイルス禍の中で新たに生まれたものだ。
すべての予定がかなわない中、何を考えてSKY-HIは動いてきたのか。SKY-HIこと日高光啓氏、越智竜太氏(SKY-HI A&R)、田中遼太郎氏(ALPHABOAT チーフプロデューサー・SKY-HI配信番組制作)の3人にこの数ヵ月を振り返るリモート取材で話をうかがった。
──この数ヵ月、次々と新しい曲や企画を繰り出して「SKY-HIすごい!」と誰もが驚愕してますが、よくモチベーションをキープできてるなというのが正直なところで。
日高 モチベーションは決してずっと高かったわけじゃないですね……モチベーションって言葉はちょっと違うかもしれない。メンタルケアって言った方が近いかな。コロナ鬱みたいなのが早めに来ちゃってたので、制作に没頭するしか抜け出す方法はないんですよ。今もそれに近いところはありますね。
──ものを作ってる時だけは集中できると。
日高 そうですね。ツアーが飛んだり、フェスとか気合入れたものがなくなったりというのも自分の中で大きかったんですけど、この自粛期間になんでこんなに苦しい気持になることが多かったのかな、と考えたら、これまで考えてた人間の問題点を突きつけられた気分になることが多かったんですよね。分断や差別、誹謗中傷みたいな。
──特にSNSを見てると人間のそういった部分が、これまで以上に溢れて目に入ります。
日高 あらためて、ずっとこの傷口の下は膿んでるんだろうなと思ってはいたけど、実際開いたらカビだらけだった、みたいな……。そういうものを見ているような気持ちになる。
──新型コロナウイルスという我々が体験したことがない災厄の前に、いろんなものが露わになってるところはあります。
日高 昨日一昨日と過去のライブ映像を配信するっていうんで、スタッフが「チャットで参加してあげなよ」って言ってくれて、ファンのみんなと見てたんです。そしたら「昔作った曲でもすごい今の時代にハマる楽曲やメッセージが多い」とみんな言ってくれて。自分でも見ながらそう思ったんですよね。
──あらためてファンも普遍的な魅力に気づかされた。
日高 真剣に音楽やメッセージを考えていくと、それにネガティブな養素が増えれば増えるほど、今の時代でもハマるものが増えていくってのは自分でもびっくりしました。複雑でもあるんですけどね。アーティストとしてはうれしい気もするし、社会は変わってないんだなというショックもあります。本質的な問題は変わらないのかな。近代、日本でいう戦後みたいなところからは変わってないのかなって。
──SKY-HIを世間にアピールしてきた越智さんとしては、予定がどんどん変わっていくこの数ヵ月をどう見てましたか。
越智 本当は「Don't Worry Baby Be Happy」発売後、アジアツアーを発表する予定だったんです。国内ツアーも決まってたし、6月にベストアルバムが出るということで、そこに向けて動いていくはずだったんですが、全部なくなってしまったんですね。やべえなって思いながらも、「じゃあ何ができるか?」ってあの手この手を考えたわけです。そんな中で本人が「スタジオライブやりたい」って言ってきて、それをYoutubeチャンネルでやったのが3月7日ですね。
──ハッシュタグ「#SKYHIライブ生配信」がTwitter世界3位を獲得するなど、広く話題になりました。
越智 たしかに反響もあったし、ここから復活していけばいいよね、って思ってたら、それから一層先が見えない世界になってしまって、もう自分たちが家からも出れなくなってしまった。ただ、こういうトライアルしていくことは大事なので、どんどん作ったらいいんじゃないのって。
日高 それは越智さんずっと言ってましたよね。
越智 アーティストが作ることをやめたら負けだなって。コロナ鬱にかかっても、作ってる間は病まないんですよ、アーティストは。
日高 本当にそう!
越智 じゃあもう作り続ければ? ってのもあって。作品を作り続けてたら、何かが生まれていくと思うんで。いい形で表現してたら、いろんなチャンスが生まれてくるんですよ。「スッキリ」出れたりもそうだし、チャンスに繋がったのは彼が作ったものがあるから出来たわけだし、それがさらに新しいビジネスチャンスにも繋がる。全てはクリエイターありきだと思うんで、アーティストが病まずに作り続けてくれるのはありがたいことだなと思いますね。
不安定な時期だから本質的なことを歌った「#Homesession」
──そんな中に4月6日にYouTubeで「#Homesession」を発表しました。この曲を作るにあたってどんな思いがあったんでしょう。
日高 自分は3月末くらいからベストアルバムの録り直しをずっとやってたんですね。それも「家で録るから歌い直させてくれ!」ってけっこう無茶を通させてもらって。その時期に没頭できたおかげで自分自身は切り替えられたところもあったんだけど、あらためてバンドのTHE SUPER FLYERSのみんなはどうしてるかな? と思ったんです。ライブも録音もできなくてミュージシャンが大変だ、というのはいろんなところで聞いてたし。それで連絡とって実際聞いてみたらプレイヤー側の人は2ヵ月くらい仕事飛んじゃったとかで、それこそメンタルが崩壊寸前みたいなやつもいたくらいで。
──やはり仕事に没頭してるうちはいいけど、それがないと皆キツイですよね……。
日高 特に若くて今がプレイ盛りみたいな人は死にそうな顔してたし。それを見てたらセッションしたいなって思って、「じゃあ明日にはなんか送るから」って伝えて、言ったから作んなきゃな、って作った感じですね。それでこういう感じのが素直にできて。
──ではバンドのメンバーと何かやりたい、という日高さんの気持ちがきっかけの曲なんですね。
日高 やっぱ自分の音楽を人と鳴らす幸福体験ってのは、ぼくにとって得難いものではあって、それは自分が音楽をずっと続けてるモチベーションのひとつでもあるんで。自分が作ったものを仲間に渡して、解釈しなおして、みんなで鳴らしたり踊ったりするって幸せを、会えないなら会えないでオンラインでできないかな? というのがいちばんのスタートですね。
──歌詞がこの新型コロナウイルス下の現状を描く中で、ただ熱くするだけでなく、聞き終わった時に今の自分の居場所を確認させられるような、落ち着かせる曲だなというのが印象的でした。
日高 今って必要以上にネガティブになったり、無責任にポジティブになったり繰り返してしまう不安定な時期なので、そういうものじゃなくて本質的なことを考えたらどういうことなんだろうな? ってことを一語一句出していった感じで。
──最初に言われてたように、分断が起きやすい時期だからこそ出す言葉はかなり意識されたんじゃないでしょうか。
日高 それは最初に考えて、ファンも政府の対応とかに違和感覚えてる人は多くて、「そういうことを曲にしてくれないんですか」って声もあったりしたんだけど、今のタイミングで自分がそれをやってもな、というのもあって。まだ気づいてないことがあったとして、それを気づくように促すのならいいんだけど、火がついてるところにガソリンくべると爆発するし、その爆発が必要な時もあるけど、今やるとさらに分断を生むだろうなって思って。自分の音楽にもとづいて賛成と反対を生んでしまうだろうな、と感じたんですね。賛否が生まれるのはいいんだけど、強烈な賛成と強烈な反対が聴いた人の中に生まれてしまうのが容易に想像できて、さらにそれが加熱していく地獄みたいな未来が見えてしまって。今はプロテストソングみたいな曲を作るタイミングではないなと思ったんですね。
──絶妙な温度の曲だったと思います。
日高 あと作る時に思ったことで、この時期にのっかってる感じがしても嫌だな、というのもありましたね。気に入ってる曲なんですけど、発表する時こういったアプローチはコロナ禍を利用しているところはないかな、と。
──そういう見られ方をするんじゃないかと。
日高 見られ方っていうか、もっと本質的な部分で、自分がそういう世の中の未曾有の危機を利用してないのか? って。そういう意味では、越智さんがさっき「ビジネスチャンス」って言ってたけど、そういう考えを完全にスタッフに任せられるというのは、バランスがいいなとあらためて思いましたね、特にこういう時は。自分はあくまでクリエイト、衝動とエゴとほんのちょっぴりの使命感で曲を作るだけで、あとのビジネスへのつなげ方は他人に基本的に任せる方向にしないと、不純物が混じっちゃう。卑しいものにはしたくないじゃないですか?
この状況下だからいろんな事にトライを
越智 「#Homesession」を作って、その後に「スッキリ」の放映の話が来たんですよね。これもたまたま番組見たらリモートで出てくれる人募集してるっていうんで、出れたら面白いよねって話したら、本当に出れることになって。それで田中さんにお願いして「FaceTimeで生出演とか意味わかんないな!」と思いながらやってみたら、いい結果が出て。
──自宅からのリモート出演で、「#Homesession」の今を描いたラップはかなり話題になりました。
日高 「スッキリ」の時はあんまりネット回線の状況が良くなくって、それでもあの感じでやれたってことは、家ん中でもそこそこできるんじゃないかなって思ったのは覚えてます。
──SKY-HIのネット関連をずっと担当されているALPHABOAT の田中さんは、この数ヵ月猛烈な提案を受けてはそれを実現化、という感じなんでしょうね。
田中 日高さんも越智さんも「まずはやってみよう」っていうスタンスでやっていただいたので、ぼくらとしては最低限のクオリティを担保してやれなきゃいけないってプレッシャーを受け止めていたんですけど、「こんなことあんなことやりましょう」を言ってるうちにどちらでもなく盛り上がるんですよね(笑)。
越智 僕たちとしては止まれないじゃないですか。無理だって思ったら終わってしまう。だからピンチはチャンスじゃないですけど、ある意味いろんなことにトライできてラッキーな部分はある。たぶんですけど、年内はライブハウスは無理って感じですよね。今在宅でできてユーザーとコミュニケーション取れるツールってネットしかない。それを踏まえて考えないと負けだなってのと、ヒマだから考える時間があった(笑)。それで思いついたアイデアをZOOM飲み会しながら田中さんに無茶を投げるわけです。
──現実的にできるかどうかを。
田中 はい、もう「やる」しか言わないです(笑)。
越智 それにいま宣伝スタッフがみんな面白がってくれて、「こういうのどうですか? ああいうのは?」って提案をどんどん投げてくれるんですよ。tiktokとか自分から仕込んでくれたりして、チームとしてうまく動けてますね。
──SKY-HIとしては2月9日にはYouTubeで生配信の試験放送をやられてますよね。それを見ると早いうちから対策は練られてたのかな、とも思ったんですが。
越智 2月の段階ではコロナはまだ考えてなかったですね。Vlogを本格化させていきたいっていうんで、本人が試したがってたのでやることになったんです。
田中 Vlog本格的に始めますってのを生でやりませんか?とこちらからご提案させてもらって、日高さんも自分で生配信って経験ないのでということで正式にやる前にトライアルでやってみた感じですね。
日高 システムがわからないことを全部やってもらうってのは、あまり好ましくないことだったので。音楽でいえば、自分がミックスやるわけじゃなくても、音楽のことわかんないとミックスエンジニアと話せないじゃないですか。それと同じで、最低限のYouTubeどうなってるのかってことを体感してないと、「こういうことできますかね」「こういうことやりましょう」とか言えないし、せっかく最初からやってくのに全部おんぶに抱っこじゃいけないなって思って、ちょっと試験放送やってみた感じでしたね。
──そうやって自分の物として得ることで、次の何かができるようになっていくと。
日高 今やっていけば次のフェイズのための知識や知見がたまるなっていう考えはあって、それで自宅ライブやってみようって発想になりました。
自宅ワンマンは盛り上がりすぎて映像が止まるピンチも!?
──それで5月6日の「#SKYHI自宅ワンマン」が実現することに。
日高 家でもともと曲とか作る人間だったから、あとカメラとかやれたらライブできんじゃない? ってのは思ってたんですよね。
田中 最終的に四元放送(YouTube・Twitter・Instagram・J-WAVE)になったんですけど、あれも気づいたらそうなってたって感じで、決まってから「どうやってやろう」って考えることになったんですよね。
──最初はもっとコンパクトなかたちの予定だったんですか。
田中 最初はYouTubeのみくらいの話だったのが、Twitterにも、あっちにもって話になって。J-WAVEも別日で放送する予定だったんですけど、同時になったんですよね。面白いじゃん、一緒にやろうって。
越智 J-WAVEさんはレギュラーやってて、「今度自宅ライブやろうと思ってて」って話したら「だったらウチでやってよ!」って言われて、じゃあやりましょうって。それから田中さんに「できる?」って聞きましたね。
田中 一瞬ためらったんですけど(笑)。もともとその日は別案件としてJ-WAVEの15時間番組の生配信を弊社で担当させていただいてまして、完全にダブルブッキングだったんです。それをなんとか。
──自宅ワンマン、音楽はもちろんアーティストがカメラのスイッチングまでやるのは初めて見ました!
越智 あれはやりすぎでしたね(笑)。田中さんが仕込んだら本人がおもちゃにしちゃって!
日高 カメラのスイッチャーとか初めて使うもんだから、収録前にいじりだしたら楽しくなっちゃって(笑)。あれはやりすぎましたね。
田中 途中で機械が熱持っちゃって、J-WAVEの本番中に映像が途切れそうになるっていう(笑)。日高さんが使いこなしちゃったので次やる時はもっとエフェクトとかパターンが多い、複雑なスイッチャーをお持ちしようと思います。
越智 ALPHABOAT さんはVlogのころからあれしましょうこれしましょうってけっこう無理難題お願いしたら全部やってくれて、自宅ワンマンはJ-WAVEで生放送ラジオやってTwitterにInstagram、Youtubeって普段できないじゃないですか。このタイミングだからやれたことですよね。地上波とネットを一緒にやるって、いつもだったらクオリティの問題とかあるけど、チャレンジできたことは本当に良かった。これをやったことで、新しい価値観作ることをトライし続けてる意味が出たなって。
──このタイミングで経験値をどう積むか、は大事ですよね。
越智 配信ライブだけでなく、SNSひとつ見てもどういうことしたらどういうこと起きるかデータが取れるんですね。それってすごい財産ですよ。それに今だと失敗しても怒られない(笑)。無料配信だったら「途中で切れちゃってごめんなさい!」って言える。
──そうならないように支えるのが田中さんたちですね(笑)。
田中 そうですね(笑)。でも本当に今自宅からのパフォーマンスコンテンツが増えてる中、現時点での自宅ライブの最上級、手本になるのどれだろう、って話題になると「SKY-HIはすごかった」って言っていただけることもあって、誇らしい気持になりますね。
──そうしたクリエイティブな動きもあれば、ファンみんなに自宅で楽しんでほしい、という「#オンライン繁華街」もありました。
越智 あれは予定が狂っていった結果ではあるんですけどね。予定が狂ったからこそ、帳尻合わせしなきゃ、って言って。
日高 帳尻合わせ!(笑)
越智 #オンライン繁華街はみんな勝手にやってくれたのが助かりましたね。『Don't Worry Baby Be Happy』のtiktokも、『そこにいた』のカラオケ配信なんかも。かねちさん(EXIT兼近大樹)が「俺に歌わせてくださいよ~」って言ってたのをスタッフが聞いてて、じゃあインスタライブに合わせてカラオケ音源配信しましょうよ、って皆言ってくれて、じゃあ一ヵ所にまとめたらいいよねって。#STAYHOMEに繋げられるなというので、むりくり作ったとこもあるんですけどね。
日高 コロナの問題が目に見えるようになって、街のカラオケとかダンススタジオ、ライブハウスが最初にクローズしていったじゃないですか。それがひとつにある感じでオンライン繁華街って名前はどうかなって。マネージャーからは「繁華街というには3店舗しかございませんけど、大丈夫でしょうか?」って確認が来たけど(笑)。
無観客ライブはこの数ヵ月で得たことを使った内容に
──そして6月17日には無観客ライブ「We Still In The LAB」がABEMAで独占生配信することが発表されました。もともとベストアルバムの発売日ですよね。
日高 その日が8年前の初ワンマンライブの日で、発売日も合わせられるしライブやったら美しいね、という話はしてたんです。それで招待ライブにして、俺のこと詳しければ詳しいほど入れる、とか案を巡らせてみんなやる方向で動いてたんですよね。それが発売が延期になってしまったんだけど、会場は押さえてあるし、なんかやろうと。
──これはこの数ヵ月のうちにやったスタジオライブや自宅ライブとも違う、フルライブを見せるつもりですか?
日高 まだ迷ってますね、やり方は。やっぱり普段のフィジカルのライブよりもできることは限られてはくるから。今回が初の配信ライブなら3月と同じ内容でもいいけど、今回は本気でいつものライブとか言い出すとギミックに数千万とかかけてってなっちゃう。逆に自宅ワンマンみたいなこともできるわけで、何を見せるかそこらへんで揺れてます。
──リハスタでも自宅でもないライブを見せたい。
日高 なかなかインパクト出しづらいですよね。(見る側は)平面だから。どうやっても皆が見る画面は平面、2Dなんですよね。それに音楽的にも、みんながみんな良いヘッドフォンやスピーカーで聴いてるわけではない。iPhoneで聴いてたりするわけだから、なんかないかな? これがあったからOK、って言えることが欲しい。それを考え続けてます。
──数ヵ月で得たことをどう活かすか。
日高 配信ライブに「#Homesession」、自宅ワンマン、「スッキリ」にJ-WAVEとここまでの流れがあるんで、貯めた知見をもう使うの? って思われそうだけど、ここで今までの経験使いつつ、また新たに貯めることをやるのかなと思います。
──ここまで濃いものをやってきただけに、これ以上期待されると思いますが。
越智 ファンにとってよい一日になればいいなと思ってます。中身はこれから考えます(笑)。
──田中さんもこれからネットを使った様々な形で、日高さんと新しいものを作り続けていくと思いますが。
田中 技術やソフトウェアはいっぱい出てきてるけど、まだ手法は確立してなかったりするじゃないですか。配信ひとつにしろ、いろんなやり方がある中で誰かが成功すれば真似されていく。その雛形をSKY-HIチームが作っていけてる気がするんですね。
──他の配信チームからもすごいと言われるものを。
田中 そうありたいですよね。一度やってみようよって勇気と、踏み出すスピードで一緒にやらせてもらってるのはありがたいです。このチームに加えてもらえて嬉しい限りなので、引き続き新しい手法を提案していって、先端を走れるようにサポートさせていただけたらなと。
──日高さんも配信という形で今までない体験を経て、刺激にはなったところもあるんじゃないでしょうか。
日高 刺激……なんだろう? いろんな感情があるんですよ。一番大きいのは感謝があります。2月3月に話していたこととは全然違うことをお願いしてしまっているわけで。「注文の多い料理店」じゃないけど入ってみたらあれこれ次から次に新しいお願いをしてしまっているのに、それを前向きに一緒にやってくれていて。だから感謝が大きいですね。
──ファンもこの期間もこれだけ得るものがあって感謝を感じてると思います。
日高 テック系のニュースとか見てると、毎日「こんな技術が開発されました」「こんなセッションがオンラインでやってました」とか出るじゃないですか。そういうことに今後も軽率にトライはしていきたいですね。ただそういうのって決して簡単なことではない、面倒くさいことなんで、つきあっていただけるのは感謝しかないです。
──正直ライブできるのはまだ先だとは思いますが、演る側もファンも大きな変化の時期に立ち会ってる感じはします。
日高 ただ、特に日本はCDみたいなものが最後まで残ってる国だし、ガジェットやギミックがどれだけ発達してもライブハウスってところに戻ってくるんじゃないかと思うんです。皆が戻ってきた時に、今やっていることを通して新しいオンラインの付き合い方みたいなのが生きてくると思うし、その加速は止められない。自分たちもその都度考えて、この先も軽率にチャレンジしていきたいですね。
『SKY-HI無観客LIVE生中継!“We Still In The LAB”』
配信日程:2020年6月17日(水)夜8時~夜10時
配信チャンネル:ABEMA GOLDチャンネル
番組URL:https://abema.tv/channels/special-plus-2/slots/CwYrW8GSZoz2ZM
BEST ALBUM『SKY-HI’s THE BEST』
2020/09/23 on sale
作ってる間は病まないんですよ、アーティストは。
この数ヵ月、新型コロナウイルス禍の中で普段どおりの活動ができたアーティストはいないだろう。リリースの中止、ライブの中止、中には予定していた解散ライブすらできずにステージを降りざるを得なかった者さえいる。そんなライブどころか練習すらままならない状況の中、精力的な活動を見せているのがSKY-HIだ。
3月からスタートする予定だった「Round A Ground Tour」全公演の自粛、6月17日発売予定だったベストアルバム『SKY-HI’s THE BEST』発売延期という壁にぶつかりながらも、ネットをはじめとしたメディアを#STAYHOMEな時だからこそのSKY-HIの今を発信してきた。その活動に励まされた人も多いはず。
その主なところを振り返ってみよう。3月7日にYouTubeチャンネル「SKYHICHANNEL」からスタジオライブを生配信し、4月16日には日本テレビ「スッキリ」で自宅からテレビ電話で繋いで生ライブを全国に届けた。さらに5月6日にはYouTube・Twitter・Instagramからの配信、さらにJ-WAVEで放送された「#SKY-HI自宅ワンマン」をトータル3時間48曲ものボリュームでやりきった。
また、その活動はライブだけでなく4月6日には新曲「#Homesession」を発表、その後バンドTHE SUPER FLYERSとの自宅バンドセッションバージョンも公開された。4月10日にはデモ音源が話題になっていた「そこにいた」を配信スタート。そして4月15日にはSEKAI NO OWARIのFukaseとのマイクリレー企画"the days"を発表し、その後ちゃんみな・AK-69・般若・きゃりーぱみゅぱみゅら豪華メンバーで継続中だ。
それ以外にも過去のワンマンライブをYouTubeで配信し、そのプレミア配信では自身もチャットに参加。さらに自身の楽曲をプレイヤーやリスナーに楽しんでもらおうとカラオケ音源や楽曲データの配信、tiktokへの「Don't Worry Baby Be Happy」配信などをまとめた「#オンライン繁華街」の開設など、リスナーを楽しませるイベントもふんだんに用意。これらの活動のほとんどが新型コロナウイルス禍の中で新たに生まれたものだ。
すべての予定がかなわない中、何を考えてSKY-HIは動いてきたのか。SKY-HIこと日高光啓氏、越智竜太氏(SKY-HI A&R)、田中遼太郎氏(ALPHABOAT チーフプロデューサー・SKY-HI配信番組制作)の3人にこの数ヵ月を振り返るリモート取材で話をうかがった。
──この数ヵ月、次々と新しい曲や企画を繰り出して「SKY-HIすごい!」と誰もが驚愕してますが、よくモチベーションをキープできてるなというのが正直なところで。
日高 モチベーションは決してずっと高かったわけじゃないですね……モチベーションって言葉はちょっと違うかもしれない。メンタルケアって言った方が近いかな。コロナ鬱みたいなのが早めに来ちゃってたので、制作に没頭するしか抜け出す方法はないんですよ。今もそれに近いところはありますね。
──ものを作ってる時だけは集中できると。
日高 そうですね。ツアーが飛んだり、フェスとか気合入れたものがなくなったりというのも自分の中で大きかったんですけど、この自粛期間になんでこんなに苦しい気持になることが多かったのかな、と考えたら、これまで考えてた人間の問題点を突きつけられた気分になることが多かったんですよね。分断や差別、誹謗中傷みたいな。
──特にSNSを見てると人間のそういった部分が、これまで以上に溢れて目に入ります。
日高 あらためて、ずっとこの傷口の下は膿んでるんだろうなと思ってはいたけど、実際開いたらカビだらけだった、みたいな……。そういうものを見ているような気持ちになる。
──新型コロナウイルスという我々が体験したことがない災厄の前に、いろんなものが露わになってるところはあります。
日高 昨日一昨日と過去のライブ映像を配信するっていうんで、スタッフが「チャットで参加してあげなよ」って言ってくれて、ファンのみんなと見てたんです。そしたら「昔作った曲でもすごい今の時代にハマる楽曲やメッセージが多い」とみんな言ってくれて。自分でも見ながらそう思ったんですよね。
──あらためてファンも普遍的な魅力に気づかされた。
日高 真剣に音楽やメッセージを考えていくと、それにネガティブな養素が増えれば増えるほど、今の時代でもハマるものが増えていくってのは自分でもびっくりしました。複雑でもあるんですけどね。アーティストとしてはうれしい気もするし、社会は変わってないんだなというショックもあります。本質的な問題は変わらないのかな。近代、日本でいう戦後みたいなところからは変わってないのかなって。
──SKY-HIを世間にアピールしてきた越智さんとしては、予定がどんどん変わっていくこの数ヵ月をどう見てましたか。
越智 本当は「Don't Worry Baby Be Happy」発売後、アジアツアーを発表する予定だったんです。国内ツアーも決まってたし、6月にベストアルバムが出るということで、そこに向けて動いていくはずだったんですが、全部なくなってしまったんですね。やべえなって思いながらも、「じゃあ何ができるか?」ってあの手この手を考えたわけです。そんな中で本人が「スタジオライブやりたい」って言ってきて、それをYoutubeチャンネルでやったのが3月7日ですね。
──ハッシュタグ「#SKYHIライブ生配信」がTwitter世界3位を獲得するなど、広く話題になりました。
越智 たしかに反響もあったし、ここから復活していけばいいよね、って思ってたら、それから一層先が見えない世界になってしまって、もう自分たちが家からも出れなくなってしまった。ただ、こういうトライアルしていくことは大事なので、どんどん作ったらいいんじゃないのって。
日高 それは越智さんずっと言ってましたよね。
越智 アーティストが作ることをやめたら負けだなって。コロナ鬱にかかっても、作ってる間は病まないんですよ、アーティストは。
日高 本当にそう!
越智 じゃあもう作り続ければ? ってのもあって。作品を作り続けてたら、何かが生まれていくと思うんで。いい形で表現してたら、いろんなチャンスが生まれてくるんですよ。「スッキリ」出れたりもそうだし、チャンスに繋がったのは彼が作ったものがあるから出来たわけだし、それがさらに新しいビジネスチャンスにも繋がる。全てはクリエイターありきだと思うんで、アーティストが病まずに作り続けてくれるのはありがたいことだなと思いますね。
不安定な時期だから本質的なことを歌った「#Homesession」
──そんな中に4月6日にYouTubeで「#Homesession」を発表しました。この曲を作るにあたってどんな思いがあったんでしょう。
日高 自分は3月末くらいからベストアルバムの録り直しをずっとやってたんですね。それも「家で録るから歌い直させてくれ!」ってけっこう無茶を通させてもらって。その時期に没頭できたおかげで自分自身は切り替えられたところもあったんだけど、あらためてバンドのTHE SUPER FLYERSのみんなはどうしてるかな? と思ったんです。ライブも録音もできなくてミュージシャンが大変だ、というのはいろんなところで聞いてたし。それで連絡とって実際聞いてみたらプレイヤー側の人は2ヵ月くらい仕事飛んじゃったとかで、それこそメンタルが崩壊寸前みたいなやつもいたくらいで。
──やはり仕事に没頭してるうちはいいけど、それがないと皆キツイですよね……。
日高 特に若くて今がプレイ盛りみたいな人は死にそうな顔してたし。それを見てたらセッションしたいなって思って、「じゃあ明日にはなんか送るから」って伝えて、言ったから作んなきゃな、って作った感じですね。それでこういう感じのが素直にできて。
──ではバンドのメンバーと何かやりたい、という日高さんの気持ちがきっかけの曲なんですね。
日高 やっぱ自分の音楽を人と鳴らす幸福体験ってのは、ぼくにとって得難いものではあって、それは自分が音楽をずっと続けてるモチベーションのひとつでもあるんで。自分が作ったものを仲間に渡して、解釈しなおして、みんなで鳴らしたり踊ったりするって幸せを、会えないなら会えないでオンラインでできないかな? というのがいちばんのスタートですね。
──歌詞がこの新型コロナウイルス下の現状を描く中で、ただ熱くするだけでなく、聞き終わった時に今の自分の居場所を確認させられるような、落ち着かせる曲だなというのが印象的でした。
日高 今って必要以上にネガティブになったり、無責任にポジティブになったり繰り返してしまう不安定な時期なので、そういうものじゃなくて本質的なことを考えたらどういうことなんだろうな? ってことを一語一句出していった感じで。
──最初に言われてたように、分断が起きやすい時期だからこそ出す言葉はかなり意識されたんじゃないでしょうか。
日高 それは最初に考えて、ファンも政府の対応とかに違和感覚えてる人は多くて、「そういうことを曲にしてくれないんですか」って声もあったりしたんだけど、今のタイミングで自分がそれをやってもな、というのもあって。まだ気づいてないことがあったとして、それを気づくように促すのならいいんだけど、火がついてるところにガソリンくべると爆発するし、その爆発が必要な時もあるけど、今やるとさらに分断を生むだろうなって思って。自分の音楽にもとづいて賛成と反対を生んでしまうだろうな、と感じたんですね。賛否が生まれるのはいいんだけど、強烈な賛成と強烈な反対が聴いた人の中に生まれてしまうのが容易に想像できて、さらにそれが加熱していく地獄みたいな未来が見えてしまって。今はプロテストソングみたいな曲を作るタイミングではないなと思ったんですね。
──絶妙な温度の曲だったと思います。
日高 あと作る時に思ったことで、この時期にのっかってる感じがしても嫌だな、というのもありましたね。気に入ってる曲なんですけど、発表する時こういったアプローチはコロナ禍を利用しているところはないかな、と。
──そういう見られ方をするんじゃないかと。
日高 見られ方っていうか、もっと本質的な部分で、自分がそういう世の中の未曾有の危機を利用してないのか? って。そういう意味では、越智さんがさっき「ビジネスチャンス」って言ってたけど、そういう考えを完全にスタッフに任せられるというのは、バランスがいいなとあらためて思いましたね、特にこういう時は。自分はあくまでクリエイト、衝動とエゴとほんのちょっぴりの使命感で曲を作るだけで、あとのビジネスへのつなげ方は他人に基本的に任せる方向にしないと、不純物が混じっちゃう。卑しいものにはしたくないじゃないですか?
この状況下だからいろんな事にトライを
越智 「#Homesession」を作って、その後に「スッキリ」の放映の話が来たんですよね。これもたまたま番組見たらリモートで出てくれる人募集してるっていうんで、出れたら面白いよねって話したら、本当に出れることになって。それで田中さんにお願いして「FaceTimeで生出演とか意味わかんないな!」と思いながらやってみたら、いい結果が出て。
──自宅からのリモート出演で、「#Homesession」の今を描いたラップはかなり話題になりました。
日高 「スッキリ」の時はあんまりネット回線の状況が良くなくって、それでもあの感じでやれたってことは、家ん中でもそこそこできるんじゃないかなって思ったのは覚えてます。
──SKY-HIのネット関連をずっと担当されているALPHABOAT の田中さんは、この数ヵ月猛烈な提案を受けてはそれを実現化、という感じなんでしょうね。
田中 日高さんも越智さんも「まずはやってみよう」っていうスタンスでやっていただいたので、ぼくらとしては最低限のクオリティを担保してやれなきゃいけないってプレッシャーを受け止めていたんですけど、「こんなことあんなことやりましょう」を言ってるうちにどちらでもなく盛り上がるんですよね(笑)。
越智 僕たちとしては止まれないじゃないですか。無理だって思ったら終わってしまう。だからピンチはチャンスじゃないですけど、ある意味いろんなことにトライできてラッキーな部分はある。たぶんですけど、年内はライブハウスは無理って感じですよね。今在宅でできてユーザーとコミュニケーション取れるツールってネットしかない。それを踏まえて考えないと負けだなってのと、ヒマだから考える時間があった(笑)。それで思いついたアイデアをZOOM飲み会しながら田中さんに無茶を投げるわけです。
──現実的にできるかどうかを。
田中 はい、もう「やる」しか言わないです(笑)。
越智 それにいま宣伝スタッフがみんな面白がってくれて、「こういうのどうですか? ああいうのは?」って提案をどんどん投げてくれるんですよ。tiktokとか自分から仕込んでくれたりして、チームとしてうまく動けてますね。
──SKY-HIとしては2月9日にはYouTubeで生配信の試験放送をやられてますよね。それを見ると早いうちから対策は練られてたのかな、とも思ったんですが。
越智 2月の段階ではコロナはまだ考えてなかったですね。Vlogを本格化させていきたいっていうんで、本人が試したがってたのでやることになったんです。
田中 Vlog本格的に始めますってのを生でやりませんか?とこちらからご提案させてもらって、日高さんも自分で生配信って経験ないのでということで正式にやる前にトライアルでやってみた感じですね。
日高 システムがわからないことを全部やってもらうってのは、あまり好ましくないことだったので。音楽でいえば、自分がミックスやるわけじゃなくても、音楽のことわかんないとミックスエンジニアと話せないじゃないですか。それと同じで、最低限のYouTubeどうなってるのかってことを体感してないと、「こういうことできますかね」「こういうことやりましょう」とか言えないし、せっかく最初からやってくのに全部おんぶに抱っこじゃいけないなって思って、ちょっと試験放送やってみた感じでしたね。
──そうやって自分の物として得ることで、次の何かができるようになっていくと。
日高 今やっていけば次のフェイズのための知識や知見がたまるなっていう考えはあって、それで自宅ライブやってみようって発想になりました。
自宅ワンマンは盛り上がりすぎて映像が止まるピンチも!?
──それで5月6日の「#SKYHI自宅ワンマン」が実現することに。
日高 家でもともと曲とか作る人間だったから、あとカメラとかやれたらライブできんじゃない? ってのは思ってたんですよね。
田中 最終的に四元放送(YouTube・Twitter・Instagram・J-WAVE)になったんですけど、あれも気づいたらそうなってたって感じで、決まってから「どうやってやろう」って考えることになったんですよね。
──最初はもっとコンパクトなかたちの予定だったんですか。
田中 最初はYouTubeのみくらいの話だったのが、Twitterにも、あっちにもって話になって。J-WAVEも別日で放送する予定だったんですけど、同時になったんですよね。面白いじゃん、一緒にやろうって。
越智 J-WAVEさんはレギュラーやってて、「今度自宅ライブやろうと思ってて」って話したら「だったらウチでやってよ!」って言われて、じゃあやりましょうって。それから田中さんに「できる?」って聞きましたね。
田中 一瞬ためらったんですけど(笑)。もともとその日は別案件としてJ-WAVEの15時間番組の生配信を弊社で担当させていただいてまして、完全にダブルブッキングだったんです。それをなんとか。
──自宅ワンマン、音楽はもちろんアーティストがカメラのスイッチングまでやるのは初めて見ました!
越智 あれはやりすぎでしたね(笑)。田中さんが仕込んだら本人がおもちゃにしちゃって!
日高 カメラのスイッチャーとか初めて使うもんだから、収録前にいじりだしたら楽しくなっちゃって(笑)。あれはやりすぎましたね。
田中 途中で機械が熱持っちゃって、J-WAVEの本番中に映像が途切れそうになるっていう(笑)。日高さんが使いこなしちゃったので次やる時はもっとエフェクトとかパターンが多い、複雑なスイッチャーをお持ちしようと思います。
越智 ALPHABOAT さんはVlogのころからあれしましょうこれしましょうってけっこう無理難題お願いしたら全部やってくれて、自宅ワンマンはJ-WAVEで生放送ラジオやってTwitterにInstagram、Youtubeって普段できないじゃないですか。このタイミングだからやれたことですよね。地上波とネットを一緒にやるって、いつもだったらクオリティの問題とかあるけど、チャレンジできたことは本当に良かった。これをやったことで、新しい価値観作ることをトライし続けてる意味が出たなって。
──このタイミングで経験値をどう積むか、は大事ですよね。
越智 配信ライブだけでなく、SNSひとつ見てもどういうことしたらどういうこと起きるかデータが取れるんですね。それってすごい財産ですよ。それに今だと失敗しても怒られない(笑)。無料配信だったら「途中で切れちゃってごめんなさい!」って言える。
──そうならないように支えるのが田中さんたちですね(笑)。
田中 そうですね(笑)。でも本当に今自宅からのパフォーマンスコンテンツが増えてる中、現時点での自宅ライブの最上級、手本になるのどれだろう、って話題になると「SKY-HIはすごかった」って言っていただけることもあって、誇らしい気持になりますね。
──そうしたクリエイティブな動きもあれば、ファンみんなに自宅で楽しんでほしい、という「#オンライン繁華街」もありました。
越智 あれは予定が狂っていった結果ではあるんですけどね。予定が狂ったからこそ、帳尻合わせしなきゃ、って言って。
日高 帳尻合わせ!(笑)
越智 #オンライン繁華街はみんな勝手にやってくれたのが助かりましたね。『Don't Worry Baby Be Happy』のtiktokも、『そこにいた』のカラオケ配信なんかも。かねちさん(EXIT兼近大樹)が「俺に歌わせてくださいよ~」って言ってたのをスタッフが聞いてて、じゃあインスタライブに合わせてカラオケ音源配信しましょうよ、って皆言ってくれて、じゃあ一ヵ所にまとめたらいいよねって。#STAYHOMEに繋げられるなというので、むりくり作ったとこもあるんですけどね。
日高 コロナの問題が目に見えるようになって、街のカラオケとかダンススタジオ、ライブハウスが最初にクローズしていったじゃないですか。それがひとつにある感じでオンライン繁華街って名前はどうかなって。マネージャーからは「繁華街というには3店舗しかございませんけど、大丈夫でしょうか?」って確認が来たけど(笑)。
無観客ライブはこの数ヵ月で得たことを使った内容に
──そして6月17日には無観客ライブ「We Still In The LAB」がABEMAで独占生配信することが発表されました。もともとベストアルバムの発売日ですよね。
日高 その日が8年前の初ワンマンライブの日で、発売日も合わせられるしライブやったら美しいね、という話はしてたんです。それで招待ライブにして、俺のこと詳しければ詳しいほど入れる、とか案を巡らせてみんなやる方向で動いてたんですよね。それが発売が延期になってしまったんだけど、会場は押さえてあるし、なんかやろうと。
──これはこの数ヵ月のうちにやったスタジオライブや自宅ライブとも違う、フルライブを見せるつもりですか?
日高 まだ迷ってますね、やり方は。やっぱり普段のフィジカルのライブよりもできることは限られてはくるから。今回が初の配信ライブなら3月と同じ内容でもいいけど、今回は本気でいつものライブとか言い出すとギミックに数千万とかかけてってなっちゃう。逆に自宅ワンマンみたいなこともできるわけで、何を見せるかそこらへんで揺れてます。
──リハスタでも自宅でもないライブを見せたい。
日高 なかなかインパクト出しづらいですよね。(見る側は)平面だから。どうやっても皆が見る画面は平面、2Dなんですよね。それに音楽的にも、みんながみんな良いヘッドフォンやスピーカーで聴いてるわけではない。iPhoneで聴いてたりするわけだから、なんかないかな? これがあったからOK、って言えることが欲しい。それを考え続けてます。
──数ヵ月で得たことをどう活かすか。
日高 配信ライブに「#Homesession」、自宅ワンマン、「スッキリ」にJ-WAVEとここまでの流れがあるんで、貯めた知見をもう使うの? って思われそうだけど、ここで今までの経験使いつつ、また新たに貯めることをやるのかなと思います。
──ここまで濃いものをやってきただけに、これ以上期待されると思いますが。
越智 ファンにとってよい一日になればいいなと思ってます。中身はこれから考えます(笑)。
──田中さんもこれからネットを使った様々な形で、日高さんと新しいものを作り続けていくと思いますが。
田中 技術やソフトウェアはいっぱい出てきてるけど、まだ手法は確立してなかったりするじゃないですか。配信ひとつにしろ、いろんなやり方がある中で誰かが成功すれば真似されていく。その雛形をSKY-HIチームが作っていけてる気がするんですね。
──他の配信チームからもすごいと言われるものを。
田中 そうありたいですよね。一度やってみようよって勇気と、踏み出すスピードで一緒にやらせてもらってるのはありがたいです。このチームに加えてもらえて嬉しい限りなので、引き続き新しい手法を提案していって、先端を走れるようにサポートさせていただけたらなと。
──日高さんも配信という形で今までない体験を経て、刺激にはなったところもあるんじゃないでしょうか。
日高 刺激……なんだろう? いろんな感情があるんですよ。一番大きいのは感謝があります。2月3月に話していたこととは全然違うことをお願いしてしまっているわけで。「注文の多い料理店」じゃないけど入ってみたらあれこれ次から次に新しいお願いをしてしまっているのに、それを前向きに一緒にやってくれていて。だから感謝が大きいですね。
──ファンもこの期間もこれだけ得るものがあって感謝を感じてると思います。
日高 テック系のニュースとか見てると、毎日「こんな技術が開発されました」「こんなセッションがオンラインでやってました」とか出るじゃないですか。そういうことに今後も軽率にトライはしていきたいですね。ただそういうのって決して簡単なことではない、面倒くさいことなんで、つきあっていただけるのは感謝しかないです。
──正直ライブできるのはまだ先だとは思いますが、演る側もファンも大きな変化の時期に立ち会ってる感じはします。
日高 ただ、特に日本はCDみたいなものが最後まで残ってる国だし、ガジェットやギミックがどれだけ発達してもライブハウスってところに戻ってくるんじゃないかと思うんです。皆が戻ってきた時に、今やっていることを通して新しいオンラインの付き合い方みたいなのが生きてくると思うし、その加速は止められない。自分たちもその都度考えて、この先も軽率にチャレンジしていきたいですね。
『SKY-HI無観客LIVE生中継!“We Still In The LAB”』
配信日程:2020年6月17日(水)夜8時~夜10時
配信チャンネル:ABEMA GOLDチャンネル
番組URL:https://abema.tv/channels/special-plus-2/slots/CwYrW8GSZoz2ZM
BEST ALBUM『SKY-HI’s THE BEST』
2020/09/23 on sale
- WRITTEN BY大坪 ケムタ(オオツボ ケムタ)
- アイドル・プロレス・B級グルメから大人方面と一見幅広いようで狭いジャンルを手がけるフリーライター。著作にゆるめるモ!田家大知Pとの共著「ゼロからでも始められるアイドル運営」(コア新書)、「SKE48裏ヒストリーファン公式教本」(白夜書房)など。