COLUMNコラム

アーティスト
DJ BOSS VS 掟ポルシェ

SEB VOL.250発売!ユーロビートもサブカルに!? DJ BOSS VS 掟ポルシェ スペシャル対談!

2018.09.26
アーティスト
音楽
インタビュー
"SUPER EUROBEAT"
ユーロビート・オムニバスの草分けでもあり、今や日本唯一のシリーズとなっている「SUPER EUROBEAT」が、ついに250作目を迎える。この大きな節目に発売される「Vol.250」は3枚組で250曲を収録するという超ボリューム! この発売を記念して、シリーズ開始当初から密接に関わってきた橫田聡氏(=DJ BOSS、橫田商会/Y&Co.)に、ニューウェイブ・ユニット「ロマンポルシェ」、「ド・ロドロシテル」で活躍し、長年のユーロビート・ファンだという掟ポルシェ氏が「SUPER EUROBEAT」シリーズの足跡、そして日本国内でのユーロビートを巡るあれこれについて鋭く切り込む!


250作目だから250曲収録。1曲約45秒!



 「SUPER EUROBEAT」の第1作が1990年に出て、そこから28年でついに250作目。単純計算しても年に9タイトルをリリースという驚異的なペースで。
 
橫田 まあ、昔は月1枚でしたから。それが2ヵ月に1枚に変わり……みたいなことで。海外の、特にヨーロッパ系の曲が聴けるコンピレーションはほぼ日本になかったので、その先駆け的な感じですよね。
 
 今回、「Vol.250」に引っかけて3枚組で250曲収録。一口に言ってとんでもない量ですよね、これ。
 
橫田 100曲入りが2枚、もう1枚が50曲。ユーロビートだからできる技だと思いますけどね。
 
 横田さんはDISC 2の選曲を担当で。CDの収録分数の74分を単純に曲数で割っていったんですか?
 
橫田 はい、割りました。1曲、だいたい45秒。
 
 相当つなぎがクイックですよね。
 
橫田 まあ、そこがユーロビートの独特のノリなので。わりとサビでつないでってもリスナー的にはテンポがいいし、納得してもらえるかなみたいな。普通のJ-POPだったら絶対ダメですけどね。
 
 実際フロアでかける時にこれだけ速くつなぐことってあるんですか?
 
橫田 ないです。でもユーロビートが一番速いですよ。現場でかける時はだいたい1分20秒ぐらいでつないでいくんで。逆に現場で2番までかけるとお客さんに睨まれる。「長ぇよ!」みたいな空気になるんで。
 
 「早く次行け!」と。
 
橫田 そうそう。お客さんは持ってる(ダンスステップの)レパートリーを披露するのに、1曲でも多く踊りたいので。だから2番まで行っちゃうと1曲3分ぐらいになっちゃうので、それだったら2曲かけろよ!みたいなノリですね。そういうのが、ユーロビートが流行らなくなった原因の一つでもあるんですけど(笑)。
 
 DISC 3はJ-POPのユーロMIXで。J-POPは1番までかけるとだいたい1分半ぐらいになりますよね。それで50曲という。この収録曲数だけで結構な驚きがありますね。
 
橫田 僕も100曲つなぎましたけど、ゴールがなかなか見えないですよね。100曲もやってると。
 
 構成考えるのも一苦労ですよね。横田さんのDISC 2に関しては94~95年ぐらいからの、BPM140程度にユーロビートのテンポが高速化してからのを担当されていて。
 
橫田 はい。250作、曲数にすると4000~5000曲出てるんで、その中から代表的な曲を選んだと言いましたけど、人それぞれ主観は違うので「何でこの曲なの?」って人もいれば、「ああ、この曲だよね」って人もいるし。だから最大公約数を取っていって。
 
 でも、いまやユーロビートと言えば横田さんじゃないですか。
 
橫田 みんなやめちゃったんで。
 
 もともといた方々がやめていって、一人残ったと。
 
橫田 そうです、そうです。ユーロビートをやってることを理由に「アイツはダメだよ」みたいな。「あんなのやってるようじゃダメだよ」みたいな風潮が一時期あったんですよ。「ガングロギャルがパラパラ踊って、ああいうのがクラブをダメにした」みたいなイメージもあったんで、そういうのを纏うと普通のクラブで使ってもらえなくなっちゃうんで、みんなやめていっちゃったんですよね。ブームが去ったとともに。
 
 他の違う音楽ジャンルのDJに変わっていって。
 
橫田 そうそう。ユーロが終わった後はトランスに行って、トランスの後はハウス、ハウスが終わったらEDM……みたいなね。その中でユーロビートをちゃんと一つのジャンルとしてDJでやってるのは、もう僕ぐらいしかいないです。だから僕は「ユーロビートをやってるから」ってイロモノと見られないように、より他のジャンルも勉強してるというか。他のジャンルもできるようにして、ユーロビートも一つのジャンルとしてちゃんとやってるという。


昔は先輩DJの見習いから入ったものです。無給で



 もともと、横浜のマハラジャの店員としてDJをやられていたのが経歴の始まりですよね。
 
橫田 そうそう。その時代は全部できなきゃダメだったんで。
 
 ディスコでかかる音楽全部、オールジャンル知らなきゃいけないし、DJ出来なきゃいけない。
 
橫田 そうそう。オールジャンルの中にユーロビートが入ってたんで。PWLも含めて、「THAT'S EURO BEAT」も「SUPER EUROBEAT」も含めてちゃんとできないとDJとしてはできなかったので。だから浅く広くをちゃんとやっててって感じですよね。それが、クラブが流行ったことによってより一つのジャンルを深く掘り下げていくというスタイルに変わって、ユーロビートというジャンルが弾かれて。ユーロをやる人は、わりと「ユーロだけ」って人が多かったんですよね。イロモノなんで。でもそういう人はメシは食えないですよ。ぶっちゃけユーロビートだけじゃ(笑)。だって今、普通のクラブでユーロビートがかかるクラブはないですもん。
 
 専門のクラブは今はない?
 
橫田 ないですね。専門のイベントですよね。クラブを借りて、そういうのが好きな人たちが集まってやるイベントが、ユーロビート。みたいな感じになっちゃいましたね。
 
 学生時代は、どういう音楽経歴を経てこられたんですか?
 
橫田 僕の聴き始めはABBAとかです。普通に「いい曲だなあ」と思って、ビリー・ジョエルだとかABBAだとか、あのへんを……で、マドンナがあってマイケル・ジャクソンがあって……みたいな感じで洋楽を聴くようになって、高校生の時に友達に誘われてディスコに行って、曲がつながってることに衝撃を受けたと。
 
 その時のディスコはどこだったんですか?
 
橫田 横浜ですね。地元の。その後、新宿、渋谷も行きましたし……NEW YORK NEW YORK、XENON、東亜会館とかも行きましたし。東京もほぼほぼ行きましたね。
 
 それで、いつしかディスコの店員に。
 
橫田 はしょればそんな感じですよね。
 
 当時のディスコのDJって権威だから、そう簡単になれるものじゃなかったですよね。まずカバン持ちから始めるもので。
 
橫田 まあ、見習いはいましたね。制服着て、化粧とかしてたような時代ですからね、僕らの頃は。
 
 横田さんも見習いから入って。
 
橫田 入りました。無給で。
 
 無給で、DJの人について。
 
橫田 そうそう、運転手から。車を持ってるとすぐ雇ってくれるんですよ。送り迎えするから。でも、ガソリン代とか出してくれないですからね。
 
 勉強代みたいな感じですね。
 
橫田 そうですね。親から小遣いをもらって、それを何とか生活費に充ててみたいな。……今の若い人にそんな話をすると、「はあ?」みたいな顔されますけどね。DJもパソコンとUSB持ってくれば終了なんで。僕たちはえっちらおっちら、一つ30kgぐらいのレコードを5箱ぐらい持っていきましたからね。
 
ディレクター 地方の時はすごかったですよね。レコードバッグ5個ぐらい持って新幹線に乗って。すぐ扉が閉まるじゃないですか、「早く降ろさなきゃ!」みたいな(笑)。
 
橫田 もう、流れ作業ですよ。一番後ろの席の人の背中のところに、レコードを入れさせてもらうんですよ。通路に置いとくと怒られるし。「誰のですか?」って。
 
 地方もけっこう営業に行かれたんですか?
 
橫田 行きましたね。当時は、もう毎月のように行ってました。マハラジャにいたころは僕は社員だったので地方には行けなかったんですけど、フリーになってからはユーロビート・ブームが来たんで、47都道府県全部行ったんじゃねえかぐらいの勢いでしたね。
 
 いまはDJの使用機材も変わりました?
 
橫田 Macで、普通にSerato DJで今はやってますね。
 

今も北イタリアで曲が制作されている理由とは……!?



 前にTVに出られた時にも言われてたと思うんですが、「SUPER EUROBEAT」シリーズのユーロビートは、何故かイタリアの北側の地方だけで作られてるという。
 
橫田 そうです。作ってる人はもう60とか70弱とかですよ。
 
 そんな歳なんですか!?
 
橫田 80年代から作ってる人たちなんで。
 
 確かにそう考えればおかしくないですよね。
 
橫田 もともとは一つのレーベルだったんですけど、2つになって、それがまた3つ、4つと枝分かれしていって、今は10個ぐらいあるのかな? でもやってる人は変わらないです。
 
 Vol.1の収録曲をすべて制作していたTIME RECORDSから、どんどん分かれて派生していって。
 
橫田 はい。A-BEAT Cが生まれて、DELTAが生まれて……だいたい、仲が悪くなってるんですけどね。
 
 血縁があったり、似たようなところで運営されてるとか。
 
橫田 まあ、そうですね。みんな好き嫌いとかお金の問題で分かれていくんですよね。

 それでレーベルがどんどん増えていくという。
 
橫田 そうそう(笑)。
 
 でも、日本で需要のあるものを日本国内で作るのではなく、北イタリアにずっと発注し続けているのはどうしてなんですか?
 
橫田 昔は日本では作れなかったんですよ。そういったエモーショナルなものとか、ちょっと哀愁がかってるメロディだとかコード進行だとか、音色や音圧も含めてですけどイタリアに頼むしかなかったっていう。今は技術が発達してるんで日本でも全然作れるんですけど、昔はイタリアに発注するしかなかったってところですよね。
 その名残で発注し続けていると。
 
橫田 日本でも作れますけど、やっぱり昔から聴いてる人は「イタリアで作ってるユーロビートだから聴いてる」って人が多い……ていうか、そういう人がほとんどなんですよ。それを、日本で作った同じようなユーロビートを入れて「SUPER EUROBEAT」ですよ、って出してもみんな納得しないんですよね。
 
 根強い洋楽志向、洋楽じゃないとダメというのが日本には昔ありましたよね。
 
橫田 イタリア人が英語で歌ってますし、インチキっぽい英語なんですけど、やっぱり洋楽への憧れ的な。日本在住の外国人で歌える人もコンポーザーもいっぱいいますけど何か違うんですよね。
 
 よく言われているのは「電圧が違う」とか。
 
橫田 昔はよく言ってました。200ボルトと100ボルトなので出音が全然違うとか。それはあると思いますけど、何かねえ、イタリアの空気感とか泥臭さが日本にはないんですよね。日本の音だと洗練されちゃってて、研ぎ澄まされすぎてるんですよね。イタリアって何か泥臭いのがあるんですよ。そういう匂いだと思いますね。それかぶっちゃけ、片手間に作ってるからそんな感じになっちゃってるのか。
 
 多少のいい加減さがあると(笑)
 
橫田 だって同じですもん。コード進行も音色も一緒だし。「ただちょっと歌い方が違うだけだよね」とか。アーティストも同じ人が10個ぐらい名前使ってやってるし。「この声はこの人じゃん、でも名前は違う……」みたいな。
 
 偽名や変名によるリリースも多いらしいですけど。
 
橫田 ユーロビートの特性ですよね。知ってる人はみんな知ってるんですけど。
 
 覆面プロジェクトだけどなんとなく正体バレてるという。
 
橫田 そうそう。そういうところに謎めいたものがあるというか。そこもイタリアの泥臭さの一つですよね。胡散臭いなーみたいな。音作りも曲自体も何か胡散臭い。
 
 「胡散臭いものが好き」っていう感覚は自分にもありますね。90年代、プロレスのインディー団体のかなりポンコツな試合が大好きでよく見てたんですけど、覆面レスラーが出てきたら「だいたいこういうとき中身はアポロ菅原だな」とか思いながらニヤニヤしたり。
 
橫田 うんうん。でも応援する時に、中の人のことは言わないですよね? その覆面の名前を言いますよね。それはユーロビートも同じです。
 
 キレイに作り込まれたものよりも泥臭いところがあるものの方が……
 
橫田 親近感が湧くっていうかね。それが、イタリアと日本の違いだと思いますけどね。


DA PUMPの『U.S.A.』が「ダサカッコいい」なら、ユーロビートは「ダサい」!?



 横田さんは曲の制作もされてらっしゃいますよね? ユーロビートを作るのに使う機材ってどういうものがメインになるんですか?
 
橫田 まあ、今はパソコンのプラグイン・シンセでいっちゃいますけどね。僕はイタリアに何回も行ってスタジオとかも見ましたけど、使ってるのはみんなローランドとかYAMAHA、AKAIですから。「日本製じゃん!」みたいな。ただその出音が違うっていうのは電圧の問題なのか、エディットの問題なのか、パラメータのいじり方の違いなのか。
 
 ドラムマシンはジャンルによってけっこう特徴あるじゃないですか。テクノだと定番はTR-909、ヒップホップだとSP1200だとか。ユーロビートの場合は何になるんですか?
 
橫田 ユーロビートだと、シンセはローランドのJDのブラス音だとか、ベースはNORD LEADとかは使ってますね。あと基本サンプリングが多いですよね。サンプラーを使って、昔の曲のこの部分を使って、それを弾いちゃったりとか。
 
 いわゆる“ネタ弾き”ですね。ドラムの音ってOBERHEIM DMXとかですかね?
 
橫田 ドラムの音は……何でしょうねえ? けっこう909とかも使ってると思いますよ。金物系はわりと909が多いんで。
 
 でもキックは909じゃないですよね。
 
橫田 じゃないですね。昔の曲のサンプリングをしたりだとか……
 
 レコードからまんま抜いてるから機材名が不明なこともあるという。横田さんも曲を作られる時はレコードから引っ張ったり?
 
橫田 してます、してます。ライブラリーは全部持ってますから。キックは80年代っぽいのとか90年代っぽいの、現代っぽいの……全部あります。今はそれをオーディオで貼り付けていくっていう作業ですよね。
 
 「SUPER EUROBEAT」シリーズは、基本的に横田さんが全部セレクトしてらっしゃるんですか?
 
橫田 セレクトとか、イタリアでできたものを僕が聴いて、これはライセンスする・しないというのを僕が決めて、エイベックスに伝えて、エイベックスが商品にするという流れですね。
 
 日本語のかけ声が入ってる曲がありますけど、その発注とかも?
 
橫田 「日本でこういうのが流行ってるから曲を作って」って言葉を指定して発注することもあります。『GANGURO』とか『IKE IKE』とか、『VELFARRE』って曲も作りましたし。いっぱいありますね。『POPTEEN』とか。
 
 HINOIチームの『IKE IKE』は出た当時CD買いましたよ。
 
橫田 ああいうのは全部イタリアに「イケイケって言葉が流行ってるから作って!」みたいな。「ガングロってのが流行ってるから作って!」「ヤマンバってのが流行ってるから作って!」と。
 
 ハハハハ! キーワードだけ伝えて。
 
橫田 そうそう。そうすると、またダッサいの作ってくるんですよ。
 
 そのダサさがたまらないわけですね。
 
橫田 そうそう。ダサくてナンボだと思いますよ、ユーロビートなんて。だからDA PUMPなんてねえ、「ダサカッコいい」って言われて。あれは「カッコいい」がつきますけど、ユーロビートは「ダサい」ですから。
 
 現在DA PUMPの『U.S.A.』が「ダサカッコいい」って誉められてるのはちょっとシャクなんですよね。「ダサくねえよ! 普通にカッコいいじゃん!」って。でも、「ダサカッコいい」って言った方が今の子たちには伝わりやすいのかな?と。
 
橫田 「ダサい」って言うと今の子たちには受け入れられない。そこに「カッコいい」がつかないと。その「カッコいい」っていうのが、たぶん、今の文化をつけないと、ただ単に昭和の焼き直しをしただけじゃ「ダサい」で終わると。「ダサいよね」「終わってる音楽じゃん」みたいな。だから、『U.S.A.』もそうじゃないですか。あれをあのまんまやったらウケないけど、ISSAがガチで歌って、いいねダンスだったりインベーダーダンスだったり、今どきのダンスを取り入れることによって、「ダサい」と「カッコいい」がくっついて、あれだけ流行ったわけですから。普通にユーロビートをカバーしたら、「ダサい」で終わりですからね(笑)。
 
 エイベックスという企業自体が、海外のエレクトロ・ダンスミュージックを日本のアーティストに歌わせて、お茶の間に浸透させてきたという歴史があるじゃないですか。それがいまだに続いてるんだと。
 
橫田 ユーロビートが発祥だった、みたいなところがありますからね。安室が『TRY ME』歌ったり、V6が歌ったり。それでお茶の間に「あ、こういう曲があるんだ」「オリジナルはユーロビートなんだよ、知ってる?」みたいな。
 
 90年代にエイベックスが頑張ってくれたおかげもあって、昔から日本人の中にあった洋楽コンプレックスが徐々に取り払われていったというのはあるでしょうね。
 
橫田 今はエイベックスの会長ですけど、松浦勝人さんは「ユーロビートは英語で歌ってるけどJ-POPだよ」なんてよく言ってましたけどね。
 
 
●●のBGMでユーロビートが使われるのは許せない!?
 
 
 「Vol.250」まで出てるということは、それなりにセールスがあったからですよね。一番売れたタイトルって何ですか?
 
橫田 2000年の「110」ですね。あれで80万枚とかじゃないですか。
 


 80万枚! CDがもっとも売れた時代とはいえすごい数字ですね。
 
橫田 累計ですけどね。でも、その前後は全部それぐらい行ってます。普通の平番でも3~4万枚とか。で、「110」とか「120」とかいわゆる「キリ番」って言われてるヤツは70万枚とか80万枚とか。
 
 キリ番になるとミックスも入ってるんですよね。
 
橫田 ミックスされた過去のベスト盤みたいなCDが通常盤の他に付いてくるんで、普段買わない人も買う。ホントに昔のヒット曲から新しいのまで全部入ってるみたいな感じなんで、数字がドン!と跳ね上がると。そこだけ押さえとけば何とかなるみたいな。
 
 「SUPER EUROBEAT」シリーズの特徴だと思うんですけど、ライナーとかクレジットとかかなり仔細に書かれてるじゃないですか。これはやはりジャンルをもっと広めたいという意識からですか?
 
橫田 そうです。もっと普通のジャンルとして認知してもらいたい。特別なジャンルじゃないし、別にユーロビートを聴いてても恥ずかしくないし、カッコ悪くもないしダサくもないし、いい音楽もけっこうあるんだからちゃんと聴こうねっていうのを、ひたすら書いてますけど。
 
 音楽誌が取り上げづらいジャンルですよね。広告打つにしても困ったと思いますし。
 
橫田 でしょうね。CMとか絶対流れないですもん、今の時代。でも昔は「SUPER EUROBEAT」のCMとかいっぱい流れてましたから、TVで。
 
 音楽誌が知識として共有しづらい音楽というか、音楽ライターで語れる人がなかなかいないから、TVとかで広告を打った方が正解ですよね。
 
橫田 TVで取り上げられる時も、風俗ネタのBGMで必ずユーロビートがかかりますからね。あれは絶対やめてもらいたいんですけどね。深夜のテレビとか「またユーロビート使ってるよ!」って。
 
 実際、風俗店でアレがないとちょっとというのもあるので難しいところですよね。興奮を阻害しない音楽というか。
 
橫田 風俗店でエンヤとかかかってもね。
 
 困りますよね! そこでプログレとか聴きたくないですもんね。
 
橫田 そんなの聴いたら確かに帰っちゃいますよね。でも、僕はなるべくそういうのを取り払いたくて。やっぱその取り上げられ方が「ユーロビート=パラパラ」「パラパラ=ギャル」という風な切り口に行かれちゃいますよね。
 
 ユーロビートはギャルだけのものじゃないんだと。最近、横田さんがメディアで露出してユーロビートの面白さと特異性を語ることによって、世間の捉え方が少しずつ変わってきたとは思います。サブカルチャーの一環みたいな感じになってきたところもあって。今、上坂すみれさんっていう人気声優がユーロビート好きを公言していて、自分のCDにもユーロビート風の曲を入れたりしてるんですよ。そこを入口にした若い世代が出てきてもおかしくない状況があって。
 
橫田 今言ったように、サブカルから広がっていったところはあって。クラブから離れていって孤立状態だったんですけど、それがサブカルに寄っていったことによって、そっちからの層を取り入れてわりと一般化して。今は、サブカルとかアキバ系ってそこまで特別視されないじゃないですか。一つの文化として認められてる。その中の一つのコンテンツとして、ユーロビートも存在してるんですよという切り口も出てきたんで。
 
 文化として語られるものに変質することによって、また違った活路があればいいですよね。


「SUPER EURO BEAT」の今後は?



 長年続く中で、シリーズのピンチみたいなこともありましたよね?
 
橫田 いっぱいありますよ。でも、90年代は別に危機はなかったよね?
 
ディレクター そうですね。200のちょっと前ぐらいからじゃないですか?
 
橫田 やっぱりブームの終焉とともにセールスが落ちて当時の3分の1ぐらいになっていって、いよいよこれは売れないんだぞみたいな。でも、これはエイベックスの創業アイテムの一つだったんで、意地でも続けるという……誰もそんなことは言ってないんだけど、目に見えないルールみたいなものがあって(笑)。それで続けてはいたんですけど、一度220の時にリリースが止まったんですよ。
 
 約5年ぐらい前ですか。
 
橫田 そうそう。それは、制作も含めた全般的なことを見直さないと、お金のこともそうだし、リリースのペースもそうだし……っていうので、1年間止まったのが最大の危機だったんじゃないですかね。「このまま出なくなるんじゃねえの?」みたいな。

 それでもリリースを再開したのは?
 
橫田 「これは残さなきゃダメでしょ」っていうので僕が一生懸命働きかけて、当時の洋楽の担当者だった人間といろいろやりとりして、「やるべきです」と。ただ、時代が違うんで前みたいに月1枚とか、1曲に対してン十万円払ったりっていうのはもうちょっと違うよねってことで、予算を見直して1曲の単価も下げて、イタリア側にもそれは納得してもらって。リリースのタイミングも2ヵ月に1回にして収録曲数もちょっと減らしたりして、コストダウンを図ってもう一度221からスタートさせたんですよね。
 
 今後もフィジカルリリース主体で行く方向ですか?
 
橫田 ものすごい勢いで時代が変わってきているんで、220の時に考えたプランもわりと当てはまらなくなってきていますよね。今となっては「2ヵ月に1枚も必要? 年に1枚ぐらいでいいんじゃないの?」と。そこの見直しも含めて、250は一つの区切りなのかなあ。平成も終わるじゃないですか。新しい時代に変わるんで、ここは一気に大ナタを振るうしかないのかなあ?みたいな。だけど、続けていくことは続けていきますよ。「SUPER EUROBEAT」というブランドとして。ユーロビートはなくならないと思うし。仮に僕らが止めたとしても、お客さんの中で続けていく人がいるだろうし。今はイタリアのレーベルとインターネットで直接やりとりしている人なんかもいる時代になってきちゃっているんで、それを無秩序にやられるぐらいなら、エイベックスが旗を持って「年に1回でもやります」と宣言してやっていかないと。ルールが定まらなくて無法地帯みたいになっちゃうんで、やっていくことはやっていきますね。
 
 形の変化はあっても、続いていってほしいですね。貴重なお話をありがとうございました!
 
 


DJ BOSS

国内において、本物のDISCO・CLUB DJとして活動を続けるアーティスト。
これまでにMAHARAJAやvelfarreでチーフDJを務め、都内の名立たるCLUBでレギュラーを持ち、現在はMAHARAJA六本木、ESPRIT TOKYO等のレジェンドDJとして、また渋谷TKやscramble cafeにも出演し都内主要地区の各店舗でDJとして活躍中。
自身がプロデューサーとなり、イベントも展開。ユーロビートに特化した「SEF DX」や80年代ディスコをクローズアップさせた「恋のお立ち台」は20年近く続くモンスター・イベントである。
最新CLUBミュージックから70’s、80’sサウンド、90'sに2000年代、J-POPまで、全てのジャンルに精通しており、その経験と実績に裏打ちされた選曲・MC・スタイルは唯一無二のものである。
またクリエイターとしても20年に及ぶ活動実績があり、数多くのダンスコンピレーションシリーズやリミックスワークも手掛け、これまでに300作品以上、累計セールスは2000万枚に及ぶ。2016年からはオリジナル作品のリリースも精力的に行い、デビュー曲"D.A.N.C.E."はEDMスタイルの全国ヒットとなっている。これまでに5作の楽曲をリリースし、今後もその活躍が期待される。 
現在の主流である映像を取り入れたVDJスタイルを2005年より導入した先駆者であり、常に新しいものを追求するそのスタイルはDISCO・CLUBの歴史を未来に繋ぐ重要な役割を担う業界のTOP DJ。




掟ポルシェ

1968年北海道生。1997年、男気啓蒙ニューウェイヴバンド『ロマンポルシェ。』のVo.&説教担当としてデビュー、これまで『盗んだバイクで天城越え』他、8枚のCDをリリース。音楽活動の他に男の曲がった価値観を力業で文章化したコラムも執筆し、雑誌連載も『TV Bros.』、『別冊少年チャンピオン』等多数。著書に『説教番長 どなりつけハンター』(文芸春秋社刊)、『男道コーチ屋稼業』(マガジン5刊)、『男の!ヤバすぎバイト列伝』(リットーミュージック刊)がある。その他、俳優、声優、DJ、アイドルイベント司会等、活動は多岐に渡る。
 



SUPER EUROBEAT VOL.250
2018.9.26リリース

AVCD-10250/B~C  ¥3,888(税込)
 
DISC-1 max matsuuraセレクト100曲
~The History of SEB~SEBの歴史を振り返る往年のヒットを100曲
 
DISC-2 DJ BOSSセレクト100曲
~The Legend of SEB~SEBファン垂涎の100曲を厳選セレクト
 
DISC-3 J-EURO SUPER HITS50曲
歌って踊れるJ-EUROヒット50曲
 

【SUPER EUROBEAT(スーパーユーロビート)公式サイト】
https://avex.jp/eurobeat/
撮影 長谷 英史
高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

もどる