【おしえて えらいひと】 ~音楽著作権と、イーライセンス&JRC子会社化が担う役割~
こんにちは。
すっかり肌寒くなったと思えば、もう11月。
あと2ヶ月で2015年も終わってしまいますね…。
ハロウィンが終わると街はガラッとクリスマスムード一色。
そろそろEXILEの「LAST CHRISTMAS」が聞こえてくる頃です。
さて、話を大胆に10月31日のハロウィンに戻させて下さい。
もれなく30過ぎのパーティーボーイである私。
あるお店を借りて、100名程のハロウィンパーティーを行いました。
それは、それは盛り上がった(自演乙)のですが、
お店の方に「このパーティーの音楽著作料でJASRACにお金を請求されるかもしれないから、使った楽曲を記載してほしい」と言われたのです。
「え!? 自分で買った音楽を並び替えて、個人的なパーティーで流しただけじゃないですか!?」と聞いたところ。
お店の方も「自分もよく分からないんだけど、そんな感じで音楽管理事業者から請求された同業者がいるんですよ。」とのこと。
さらに、
「あれ、お客様、エイベックスでコラム書いてましたよね。音楽著作権のこと、なんで知らないんですか?」
と言われましたので、エイベックスで著作権にめちゃくちゃ詳しい方に聞きに行ってきました。
「【おしえて えらいひと】 音楽著作権と、イーライセンス&JRC子会社化が担う未来」
始めます!!
音楽著作権ってどんなもので、どういう仕組みなの??
今回の音楽著作権に関する質問は、エイベックスの音楽出版社である「エイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社」の阿南社長にお伺いしました。
-まず、そもそも音楽著作権とはどんなものなのか。教えていただけますか。
阿南社長)音楽著作権というのは「音楽の作者(作詞家と作曲家)が持つ権利」です。
例えば、ある楽曲がヒットしたとしますね。
そうすると色んな施設、飲食店で流れ、カラオケルームなどで歌われることになります。
飲食店や小売店は楽曲を流すことで良い雰囲気を作り集客するため、つまり営利目的で、楽曲を使用しています。
カラオケルームも歌ってもらう場所を作って、楽曲を歌うことで使用しています。
これは、一個人が私的に楽曲を聴いたり、演奏したり、歌ったりすることの楽曲使用ではありません。
このように営利を目的として楽曲を使用した場合には、楽曲を作った人にも利益が分配されるべき権利があるはずです。
その権利こそが財産権としての音楽著作権になります。
-音楽著作権そのものはシンプルな権利ですね。
阿南)権利そのものは分かりやすい権利です。
ただし、音楽は様々な場面や用途で使用されますので、音楽著作権自体は幾つかの権利に分かれています。
こちらの表にあげた複数の用途に応じた権利があるために、音楽著作権が複雑に見えてしまっています。
-各権利の用途を想像すると必要な権利だと分かります。
これら複数の権利を守る(管理する)ためには、全国に何万件あるか分からない飲食店や小売店を監視して何回その楽曲が流れたのか、全国のカラオケで何回歌われたのか。
そんなことまで把握しなければなりませんよね。使うお店などからしても、1曲1曲の作詞家作曲家から許諾を得ることはとても煩雑で、集中的に管理してくれるところがあれば助かりますよね。
この役割を果たすのがJASRACやイーライセンス、JRCなどの「音楽著作権管理事業者」ということになります。
-業務内容を思い浮かべれば、無くてはならない会社ですね。
また、私が社長を務めるエイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社は楽曲の作者からその音楽著作権を譲渡いただいて作家側として管理や開発、プロモーションをしている「音楽出版者」です。
「音楽出版者」という言葉を聞きなれない方もいるでしょう。作家や著作権管理業者との関係を図にすると下のようになります。
我々「音楽出版者」が作家と著作権管理事業者の間に立つことで、作家は本来の仕事である作詞・作曲に集中出来ます。我々も無くてはならない存在なのです。
-なるほど。図で見ると分かりやすいですね。あれ?レコード会社も利用者になるのですか。
阿南)はい。楽曲を複製利用してCDを作って販売することで利益を得ますから「利用者」となります。
このことは後で重要になりますので、覚えておいて下さい。
音楽著作管理業者は、なぜ嫌われているのか?
-先日、私がパーティーを主催した折りに、BGMや効果音を選んで流しました。その時に店主からJASRACにお金を請求されるかもしれないと聴きました。
この場合、私は何の音楽著作を使用したことになるのでしょうか。
阿南)一つはBGMや効果音として使用していることです。これは想像出来ると思いますが、演奏権の利用です。
もう一つはCDからPCにデータを移行したり、それをCD-R等に焼いた時の録音権の利用です。
-え、そんなことも「録音権」に引っかかるのですか…。個人的な使用だと思っていました。
阿南)「録音権」は主にレコード会社などがCDをプレスする際に使用していますが、これが営利目的、つまり「金銭が発生するパーティーで使用するための録音」であるために、私的複製にはなりません。
-確かに言われてみると納得です。
阿南)今回の件では飲食店側が支払うのでライターさんは払っていませんよね。でも、音楽著作権という複雑な権利を理解し、守るのは大変ですよね。
先程お話しました音楽著作管理業者はなくてはならない存在なのですが、やはり徴収のやり方によっては、一般的に嫌われているのも現状ですね。
-JASRAC社は色々ネットでも言われていますよね。
阿南)JASRACは日本の音楽著作権の98%を管理しているので、1社独占のような状況です。そうなると著作権の使用料率なども彼らが全てを決めるため、一種「独占企業」のような存在になってしまっていますね。
こちらの表はJASRACの使用料収入額です。これだけの収入を一社がほぼ独占しているのですから…。
この先は言わずもがなですね。
-1年間だけで、こんなに収入があるとは!!
阿南)ビックリですよね。更にレコード会社の売り上げと利益がこれだけ落ちている中で、JASRACの利益は横ばいです。
そんなデータを見れば「取り過ぎなのでは?」と思ってしまいますよね。
-確かに…。
阿南)JASRACとしても手数料(JASRAC取分)や使用料の再考など、やれることはあるはずですがね。ただ、長い間に作り上げた大組織ですから、その腰はとても重いのです。
-そこで、イーライセンス(株式会社イーライセンス)とJRC(株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス)の事業統合と子会社化という動きを取られたのですね。
阿南)はい。本日、私が最もお話ししたいのはその話です。
「音楽出版者としてのエイベックス」が動いた!
-フリが長くなって申し訳ありません(笑)
阿南)まずは音楽著作権の仕組みを知っていただく必要がありましたので、大丈夫です(笑)そして、最初にお伝えした音楽出版社とレコード会社の違いを今一度思い出していただけますでしょうか。
-音楽出版社は権利を守る「権利者」で、レコード会社は「利用者」でしたよね。
阿南)その通りです。この動きは「権利者=音楽出版者としてのエイベックス」が行ったものです。「利用者としてのエイベックス」ではないのです。
-先日の報道では、エイベックスが2社を子会社化としか書いていなくて、「大手レコード会社のエイベックスが著作権事業でも利益を上げるぞ」ぐらいの勢いでしたね。
阿南)その捉えられ方には困っていて(笑)表立ってJASRACと対立するつもりも無いんですよ。
-世間というかメディアの認識と差があるのですね。
阿南)先程はやや批判的に申しましたが、JASRACは著作権の管理という業務に関しては世界でもTOPクラスなのです。つまり優秀な組織ではあるのです。
-どんな小さい飲食店もカラオケ店、スナックにも徴収しているわけですから、確かに「管理・徴収業務」は優秀と言えますね。
阿南)日本各地に支店部があり人員を配置しているので、細かな管理・徴収に対応しています。その部分をまだ2%程度のシェアしかないイーライセンスとJRCがすぐに取って代わることは出来ません。
だから、いますぐにエイベックスというレコード会社がJASRACから離脱することもあり得ないのですよ。
こちらの図をご覧下さい。イーライセンスとJRCが現在管理する権利は「○」の付いている部分で、「△」の部分はこれから管理を行う予定の権利、「×」は現状としては管理しない部分になります。
-なるほど。全てを一気に取って代わろうというわけではないんですね。
阿南)JASRACでなければならないこともありますから、我々に出来ない部分は協業していきたい。
ただ、今回の動きは「音楽出版者」として、音楽著作権使用料管理・徴収の仕組みに一石を投じるというために行っています。
例えば、シンガーソングライターが制作した楽曲などには、ちょっと理解しがたい仕組みがあります。
-楽曲そのものを歌うだけでなく、自身で作る人達に不都合があるんですか。
阿南)「演奏権」というものは、作家が演奏しても徴収されるのです。
つまり、自身のライヴを行った際に彼らは「自分の作った楽曲に演奏権の使用料を支払い」、JASRACに手数料の26%を取られて、自身に戻ってくるのです。
-それは納得いかないですね…。
阿南)ですよね。その26%をライヴの制作費や演出費に回したい、あるいはチケット代をもう少し安くしてたくさんのお客さんに来てほしいとアーティストは考えるでしょう。こうした矛盾に対応していくために疑問を投げ掛ける役割を私は担おうと考えています。
-アーティストのファンへの還元が薄れて行けば、音楽を聴く、音楽を愛する人は減って行きますよね。
阿南)縮小する音楽業界で各レコード会社は切磋琢磨して商品を開発し、新たなサービスを世に出しています。各サブスクリプションサービスが良い事例ですよね。
でも、これらの事業は生き残りをかけた「レコード会社としての動き」です。
今回の2社の事業統合と子会社化は「音楽出版者」が「音楽管理事業者」と手を組んで、音楽著作権の分野でも音楽業界を活性化させるための動きなのです。
我々の役割は大きくは一つです。
JASRACより低コストで運営して
楽曲の作家には1%でも多く使用料を支払い、
楽曲を使用する使用者(レコード会社、配信業者やファンなど)には1%でも少ない使用料で楽曲を楽しめるようになることなのです。
なので、この会社はもうけちゃいけないと思っているんですよ。もちろん赤字ではできませんが(笑)
-なるほど。著作権の仕組みと今後の展望がよく分かりました。ありがとうございました。
阿南)こちらこそ、ありがとうございました。エイベックス・ミュージック・パブリッシングが仲介し、イーライセンスとJRCが起こす「音楽著作権管理事業のこれから」に、ぜひ期待下さい。
【エイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社】
http://avexmusicpublishing.com/
【株式会社 イーライセンス(e-License)】
http://www.elicense.co.jp/
【JRC|株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス】
http://www.japanrights.com/
すっかり肌寒くなったと思えば、もう11月。
あと2ヶ月で2015年も終わってしまいますね…。
ハロウィンが終わると街はガラッとクリスマスムード一色。
そろそろEXILEの「LAST CHRISTMAS」が聞こえてくる頃です。
さて、話を大胆に10月31日のハロウィンに戻させて下さい。
もれなく30過ぎのパーティーボーイである私。
あるお店を借りて、100名程のハロウィンパーティーを行いました。
それは、それは盛り上がった
お店の方に「このパーティーの音楽著作料でJASRACにお金を請求されるかもしれないから、使った楽曲を記載してほしい」と言われたのです。
「え!? 自分で買った音楽を並び替えて、個人的なパーティーで流しただけじゃないですか!?」と聞いたところ。
お店の方も「自分もよく分からないんだけど、そんな感じで音楽管理事業者から請求された同業者がいるんですよ。」とのこと。
さらに、
「あれ、お客様、エイベックスでコラム書いてましたよね。音楽著作権のこと、なんで知らないんですか?」
と言われましたので、エイベックスで著作権にめちゃくちゃ詳しい方に聞きに行ってきました。
「【おしえて えらいひと】 音楽著作権と、イーライセンス&JRC子会社化が担う未来」
始めます!!
音楽著作権ってどんなもので、どういう仕組みなの??
今回の音楽著作権に関する質問は、エイベックスの音楽出版社である「エイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社」の阿南社長にお伺いしました。
-まず、そもそも音楽著作権とはどんなものなのか。教えていただけますか。
阿南社長)音楽著作権というのは「音楽の作者(作詞家と作曲家)が持つ権利」です。
例えば、ある楽曲がヒットしたとしますね。
そうすると色んな施設、飲食店で流れ、カラオケルームなどで歌われることになります。
飲食店や小売店は楽曲を流すことで良い雰囲気を作り集客するため、つまり営利目的で、楽曲を使用しています。
カラオケルームも歌ってもらう場所を作って、楽曲を歌うことで使用しています。
これは、一個人が私的に楽曲を聴いたり、演奏したり、歌ったりすることの楽曲使用ではありません。
このように営利を目的として楽曲を使用した場合には、楽曲を作った人にも利益が分配されるべき権利があるはずです。
その権利こそが財産権としての音楽著作権になります。
-音楽著作権そのものはシンプルな権利ですね。
阿南)権利そのものは分かりやすい権利です。
ただし、音楽は様々な場面や用途で使用されますので、音楽著作権自体は幾つかの権利に分かれています。
こちらの表にあげた複数の用途に応じた権利があるために、音楽著作権が複雑に見えてしまっています。
-各権利の用途を想像すると必要な権利だと分かります。
これら複数の権利を守る(管理する)ためには、全国に何万件あるか分からない飲食店や小売店を監視して何回その楽曲が流れたのか、全国のカラオケで何回歌われたのか。
そんなことまで把握しなければなりませんよね。使うお店などからしても、1曲1曲の作詞家作曲家から許諾を得ることはとても煩雑で、集中的に管理してくれるところがあれば助かりますよね。
この役割を果たすのがJASRACやイーライセンス、JRCなどの「音楽著作権管理事業者」ということになります。
-業務内容を思い浮かべれば、無くてはならない会社ですね。
また、私が社長を務めるエイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社は楽曲の作者からその音楽著作権を譲渡いただいて作家側として管理や開発、プロモーションをしている「音楽出版者」です。
「音楽出版者」という言葉を聞きなれない方もいるでしょう。作家や著作権管理業者との関係を図にすると下のようになります。
我々「音楽出版者」が作家と著作権管理事業者の間に立つことで、作家は本来の仕事である作詞・作曲に集中出来ます。我々も無くてはならない存在なのです。
-なるほど。図で見ると分かりやすいですね。あれ?レコード会社も利用者になるのですか。
阿南)はい。楽曲を複製利用してCDを作って販売することで利益を得ますから「利用者」となります。
このことは後で重要になりますので、覚えておいて下さい。
音楽著作管理業者は、なぜ嫌われているのか?
-先日、私がパーティーを主催した折りに、BGMや効果音を選んで流しました。その時に店主からJASRACにお金を請求されるかもしれないと聴きました。
この場合、私は何の音楽著作を使用したことになるのでしょうか。
阿南)一つはBGMや効果音として使用していることです。これは想像出来ると思いますが、演奏権の利用です。
もう一つはCDからPCにデータを移行したり、それをCD-R等に焼いた時の録音権の利用です。
-え、そんなことも「録音権」に引っかかるのですか…。個人的な使用だと思っていました。
阿南)「録音権」は主にレコード会社などがCDをプレスする際に使用していますが、これが営利目的、つまり「金銭が発生するパーティーで使用するための録音」であるために、私的複製にはなりません。
-確かに言われてみると納得です。
阿南)今回の件では飲食店側が支払うのでライターさんは払っていませんよね。でも、音楽著作権という複雑な権利を理解し、守るのは大変ですよね。
先程お話しました音楽著作管理業者はなくてはならない存在なのですが、やはり徴収のやり方によっては、一般的に嫌われているのも現状ですね。
-JASRAC社は色々ネットでも言われていますよね。
阿南)JASRACは日本の音楽著作権の98%を管理しているので、1社独占のような状況です。そうなると著作権の使用料率なども彼らが全てを決めるため、一種「独占企業」のような存在になってしまっていますね。
こちらの表はJASRACの使用料収入額です。これだけの収入を一社がほぼ独占しているのですから…。
この先は言わずもがなですね。
-1年間だけで、こんなに収入があるとは!!
阿南)ビックリですよね。更にレコード会社の売り上げと利益がこれだけ落ちている中で、JASRACの利益は横ばいです。
そんなデータを見れば「取り過ぎなのでは?」と思ってしまいますよね。
-確かに…。
阿南)JASRACとしても手数料(JASRAC取分)や使用料の再考など、やれることはあるはずですがね。ただ、長い間に作り上げた大組織ですから、その腰はとても重いのです。
-そこで、イーライセンス(株式会社イーライセンス)とJRC(株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス)の事業統合と子会社化という動きを取られたのですね。
阿南)はい。本日、私が最もお話ししたいのはその話です。
「音楽出版者としてのエイベックス」が動いた!
-フリが長くなって申し訳ありません(笑)
阿南)まずは音楽著作権の仕組みを知っていただく必要がありましたので、大丈夫です(笑)そして、最初にお伝えした音楽出版社とレコード会社の違いを今一度思い出していただけますでしょうか。
-音楽出版社は権利を守る「権利者」で、レコード会社は「利用者」でしたよね。
阿南)その通りです。この動きは「権利者=音楽出版者としてのエイベックス」が行ったものです。「利用者としてのエイベックス」ではないのです。
-先日の報道では、エイベックスが2社を子会社化としか書いていなくて、「大手レコード会社のエイベックスが著作権事業でも利益を上げるぞ」ぐらいの勢いでしたね。
阿南)その捉えられ方には困っていて(笑)表立ってJASRACと対立するつもりも無いんですよ。
-世間というかメディアの認識と差があるのですね。
阿南)先程はやや批判的に申しましたが、JASRACは著作権の管理という業務に関しては世界でもTOPクラスなのです。つまり優秀な組織ではあるのです。
-どんな小さい飲食店もカラオケ店、スナックにも徴収しているわけですから、確かに「管理・徴収業務」は優秀と言えますね。
阿南)日本各地に支店部があり人員を配置しているので、細かな管理・徴収に対応しています。その部分をまだ2%程度のシェアしかないイーライセンスとJRCがすぐに取って代わることは出来ません。
だから、いますぐにエイベックスというレコード会社がJASRACから離脱することもあり得ないのですよ。
こちらの図をご覧下さい。イーライセンスとJRCが現在管理する権利は「○」の付いている部分で、「△」の部分はこれから管理を行う予定の権利、「×」は現状としては管理しない部分になります。
-なるほど。全てを一気に取って代わろうというわけではないんですね。
阿南)JASRACでなければならないこともありますから、我々に出来ない部分は協業していきたい。
ただ、今回の動きは「音楽出版者」として、音楽著作権使用料管理・徴収の仕組みに一石を投じるというために行っています。
例えば、シンガーソングライターが制作した楽曲などには、ちょっと理解しがたい仕組みがあります。
-楽曲そのものを歌うだけでなく、自身で作る人達に不都合があるんですか。
阿南)「演奏権」というものは、作家が演奏しても徴収されるのです。
つまり、自身のライヴを行った際に彼らは「自分の作った楽曲に演奏権の使用料を支払い」、JASRACに手数料の26%を取られて、自身に戻ってくるのです。
-それは納得いかないですね…。
阿南)ですよね。その26%をライヴの制作費や演出費に回したい、あるいはチケット代をもう少し安くしてたくさんのお客さんに来てほしいとアーティストは考えるでしょう。こうした矛盾に対応していくために疑問を投げ掛ける役割を私は担おうと考えています。
-アーティストのファンへの還元が薄れて行けば、音楽を聴く、音楽を愛する人は減って行きますよね。
阿南)縮小する音楽業界で各レコード会社は切磋琢磨して商品を開発し、新たなサービスを世に出しています。各サブスクリプションサービスが良い事例ですよね。
でも、これらの事業は生き残りをかけた「レコード会社としての動き」です。
今回の2社の事業統合と子会社化は「音楽出版者」が「音楽管理事業者」と手を組んで、音楽著作権の分野でも音楽業界を活性化させるための動きなのです。
我々の役割は大きくは一つです。
JASRACより低コストで運営して
楽曲の作家には1%でも多く使用料を支払い、
楽曲を使用する使用者(レコード会社、配信業者やファンなど)には1%でも少ない使用料で楽曲を楽しめるようになることなのです。
なので、この会社はもうけちゃいけないと思っているんですよ。もちろん赤字ではできませんが(笑)
-なるほど。著作権の仕組みと今後の展望がよく分かりました。ありがとうございました。
阿南)こちらこそ、ありがとうございました。エイベックス・ミュージック・パブリッシングが仲介し、イーライセンスとJRCが起こす「音楽著作権管理事業のこれから」に、ぜひ期待下さい。
【エイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社】
http://avexmusicpublishing.com/
【株式会社 イーライセンス(e-License)】
http://www.elicense.co.jp/
【JRC|株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス】
http://www.japanrights.com/
- WRITTEN BY雜賀 信之助(サイカ シンノスケ)
- プロデューサー。PRイベントや映像制作、キュレーションサイト『和食ラボ』等の運営・進行管理を担当。