May J.
May J.が初めて胸の内を語るインタビュー原稿とロング・インタビュー動画を公開
2013.08.09
カヴァーアルバム「Summer Ballad Covers」の大ヒットを承けてMay J.がはじめて「過去」「今」「未来」について 自らの胸の内を語ったライター 猪又 孝 氏によるオフィシャルインタビューの原稿と、35分にも及ぶロングインタビュー動画を公開しました。 かつてないほど、May J.が自らの心境を赤裸々に語ったインタビューとなっております。是非ご覧ください。
<インタビュー動画 >
6月19日に発売されたMay J.初のカバーアルバム『Summer Ballad Collection』の評判が上々だ。チャートアクションにも跳ね返りオリコンのデイリーランキングで自己最高位となる2位を獲得。発売から一ヶ月経った現在、セールスは20万枚を突破しキャリア一番のブレイクを見せている。
本作制作のきっかけは、昨年秋に彼女が出演した人気テレビ番組のカラオケ採点企画だった。そこで「ハナミズキ」を歌って以来、卓抜な歌唱力と美声への注目度が日増しに上昇。その反響の大きさや番組視聴者のリクエストに応える形で制作された。現在は同企画で無傷の14連勝中。「10連勝を突破してからは挑戦される側になった気がして、今は収録前に緊張で声が出なくなることもある」というが、そもそもプロ歌手がカラオケで採点されることに抵抗はなかったのか。もしも高得点が出なかったり、音程をハズしたりしたら、プロなのに下手とか、非難・中傷にさらされるリスクだってある。ところが、May J.はそんな怖さはどこ吹く風。「番組出演は逆に自分の歌をたくさんの人に届けられるチャンス」と考えたのだという。
彼女にはその環境に飛び込んでいきたい理由があった。デビュー以来、R&B/ラテン/ダンスミュージックとさまざまな曲調にチャレンジし、前々作の『Secret Diary』、前作の『Brave』では自分の音楽観や内面を知ってもらおうと全曲の作詞を担当、セルフプロデュースで作りあげた。でも、自分の声がイマイチ届いていない、自分の思いが今ひとつ伝わっていない。そんなもどかしさ、悔しさ、歯痒さを抱えて、「ずーっとずーっと苦しんでいた」のだという。
「でも、番組に出て自分に求められているものがわかった気がして。『Secret Diary』と『Brave』でずっと抱えてたモヤモヤを吐き出して、自分が出したいものをすべて出し切ったからこそ、辿り着いたところもあると思う。日本の名曲で、歌い上げるような曲をみんな聞きたいんだな。じゃあ、その期待にしっかり応えようって思うようになったんです」
本作は生演奏を主体して編曲。ときにゴージャス、ときに清爽、ときにシックと表情を変える伴奏は、高尚な音楽センスと職人技が細部にまで冴え渡り、洗練を極める仕上がりだ。“音楽度数"も相当高く、昨今のカバーブームにあやかった「とっつきやすく人気曲をさらっとカバーしてみました」的な作品とは一線を画す。そんな作品を見事に縫い上げるのは、息遣いまで聞こえてくるMay J.の情感豊かなヴォーカルワーク。番組でのカバーを通じて「歌詞の背景にある思いや状況を自分の過去と照らし合わせたりしながら、深く理解できれば自分の曲のように歌うことができる」と学んだ彼女は、どれだけ歌詞に入り込めるか、ということを今回最も大事にしたという。そのために歌詞を読み解くことにたっぷり時間をかけ、深まった(高まった)の曲への思いをピークの状態で封じ込めるために一曲を通して歌う方法でほとんどの曲を制作。一球入魂ならぬ一曲入魂。思いを込めるというよりは気を注入。“歌う"というよりは“挑む"といった感じでレコーディングに臨んだ。だから、どの曲も熱量はハンパなし。特に「I DREAMED A DREAM」は、レコーディング後、感極まって涙が止まらなかったという。 「『夢やぶれて』という邦題だけど、デビューしたての頃はCDを出せば誰もが聴いてくれるみたいな想像をしてたんですね。だけど、現実は全然違って、頑張って伝えても想いが届かないことってあるんだな、頑張ってるだけじゃダメなんだなって思って。ここまで自分を出し切ってるのになんで届かないんだろう、もうこれ以上何をすればいいの?っていうところまで行ってたんですよ、正直。この曲は、そんな最近の自分の感じていたことと近いものがあって。心の叫びを歌に全部出しきったんです」
一番リスペクトしていて一番影響を受けたという宇多田ヒカルの「First Love」もMay J.にとって特別な曲。今回は録音した歌声に一切手を加えず、情感を剥き出しのままパックした。「渚」や「波乗りジョニー」では男性の恋愛心理に納得いくまで思いを巡らし、「島唄」では歌に乗せて鎮魂を祈念。自身の歌声を何層も重ね、アカペラで制作した「少年時代」は“ひとりゴスペラーズ"のようなことだが、ここには24人のMay J.がいる。「夏祭り」「secret base ~君がくれたもの~」は大人の雰囲気たっぷり。前者ではジャズを着崩し、後者ではラヴァーズレゲエでドレスアップし、夏の夜に魅惑的な色香を振りまく。
4年前の「Garden」と今回の一連の作品は、同じカバーでも作り出される状況が違うというMay J.。「Garden」のときは楽曲のみが流布している感じで「“Garden"と“May J."が一致してなかったと思う」と分析する。けれど、今回はテレビを通じて自分の歌っている姿が露出したことで「歌声で広がった気がしたんです。だからMay J.の声でこの曲を聴きたい、あの曲を歌って欲しいっていう声があって、それがなにより嬉しかった」。
10月に予定されているミニ・アルバムはオリジナル曲が中心になるとのこと。そこでは今回のカバー作業を通じて得たこと・感じたことを余すことなく表現したいと息巻く。 「歌声を知ってもらえたからこそ、じゃあ、May J.はどういう曲を歌うんだ?っていう状況だと思うんです。今回はみんなに愛されるようなバラードを作りたいなと思っていて、実はもう2曲できてるんですけど、無茶苦茶いい! 他も、全部シングルにしてもいいんじゃないかっていうくらいの曲を集めてます」
今年6月で25歳になり、7月12日にデビュー7周年を迎えたMay J.。今、彼女は、自分の進むべき道が明確に見え、自分がいるべき場所にいるとスッキリした顔で語る。
「実はデビューした18歳の頃、“25歳くらいになれば歌に年齢が追いつくよ"って言われてたんです。声や歌い方が大人っぽいってよく言われるんですけど、今までは等身大の曲を歌っていても声と合っていなかったんじゃないかな。今は、自分のスキルや経験、年齢、自分の生まれ持った声、歌い方、そういうのが初めて全部リンクし出したって思うから。今は迷いがない。ここからが本当にMay J.っていう歌手の表現のスタートだと思ってます」
猪又 孝(DO THE MONKEY)