【Miyuu】バンで6000km!クラウドファンディングでつくり上げた音楽×旅エッセイ
昨年10月に30日間の車中泊旅行「30DAYS VAN LIFE」を敢行し、その中で見たこと、感じたことを盛り込んだ2曲、「Have a good trip~MIYAZAKI~」と「ride on」を相次いで配信リリースしたMiyuuさん。また5月11日からはその旅をまとめた初の書籍「30DAYS VAN LIFE~Trip on Music~」も刊行。トピック盛りだくさんの彼女に、曲のこと、旅のこと、そして書籍のことと、いろいろお聞きしました!
宮崎での感動を素直に落とし込んだ「Have a good trip~MIYAZAKI~」
──まずは新曲「Have a good trip~MIYAZAKI~」についてうかがいます。これは「30DAYS VAN LIFE」での、宮崎での体験が元になった曲ということですね。
Miyuu そうですね。30日間、車中泊してたんですけど、そのうち3日間は宮崎のいろんな場所を巡って、それを元に作った曲になります。
──宮崎は初めてだったんですか?
Miyuu いえ、avex所属になってからもMVの撮影で行ってるんですけど、子供の時に年1回、宮崎に行くのが家族行事みたいな感じだったんですよ。でもその頃は、ホテルの子供を預けるスペースにずっといた記憶しかなくて(笑)、ガッツリ宮崎を満喫してたわけじゃなかったんです。今回、じっくり滞在して、宮崎の印象がだいぶ変わりました。
──どんな風にですか?
Miyuu 空港を降りるとヤシの木が生えていて、南国感があって海外に来た気分になれるのが「ザ・宮崎」だと思ってたんですけど、今回は高千穂峡とかも行かせてもらったんですね。そこは神話が有名だったり、すごく昔からある神社とかも見させてもらって、海外っぽさが表面には出てるけど、実はすごく日本っぽさがあって、深い場所だなあと思いました。
──宮崎というと自然というイメージもありますが、それだけでなく、いろいろ体験されたんですね。
Miyuu 神話とかも、あの自然があったからそういうストーリーができていったんやろうなと感じましたね。
──そういった体験を、曲にはどう生かそうと思いましたか?
Miyuu 自分が行った場所とか見たものは、できるだけ素直に歌詞に落とし込みたいなと思っていたので、今回はけっこう固有名詞とかを使わせてもらったりしました。例えば「コノハナキッチン」とかもそうで、そこの冷や汁がメッチャ好きなんですよ! もともと、冷や汁はずっと食べようと思ってたんですけど、コノハナキッチンで出してもらったのをそのまま歌詞に入れて。あと、宮崎空港に降り立ったらステンドグラスがあって、それにもすごく感動したので、それもそのまま入れたり、できるだけ感じたままの思いを素直に入れることを意識して作りました。
──曲調に関してはいかがですか?
Miyuu それも空港に降り立った時のワクワク感とか、ヤシの木の中をドライブしてる時の楽しい感じをそのまま音楽に乗せられたらいいなと思って。けっこうフワッとしたイメージだったんですけど、今回アレンジしていただいた斎藤誠さんにとりあえず思いだけを伝えたら、ああいう感じのアレンジに仕上がって、理想通りだなと思いました。
──曲はスムーズに出来上がりましたか?
Miyuu 旅が終わってから曲作りをし始めたので、そのときの感情を取り戻すのに時間がかかっちゃいました。なので、宮崎で撮った映像を見返したり、本を書く作業をしていたらだんだん思い出してきて、その流れで「よし、今なら何をしたかとか、全部思い出せるかも!」って思えて。で、家の中で作ってたら当時の気持ちが薄まっちゃうので、それを呼び起こすために車で家の近くの河川敷まで行って、外で作曲しました。
──Miyuuさんにとって、この曲のように「旅を歌う」ということの楽しさというのは、どういうところにありますか?
Miyuu 日記を書くようなイメージで、その時に感じたこととか見たものって、記録に残していかないと忘れちゃうと思うんですよね。特に私はすぐ忘れてしまうので(笑)。だから日記を書いて後からそれを振り返って「あ、そういえばあんなことがあったな」とか「この時、こういう感情やったな」と思うのと同じで、音楽も自分が数年前に作った曲を聴いたりすると、「この時はこんな悩みがあったな」とか思い出せるんですね。だから私が旅を歌うことっていうのは、記録していくことの楽しみがあるのかなって思ってます。
──旅の最中の楽しみとはまた違うものですよね?
Miyuu そうですね。旅をしている時は、どちらかというと音楽と切り離されている感じがします。曲作りのためというよりは、自分が知らなかったものを知れるのが旅の醍醐味というか。一番の旅の楽しみはそこかなと思いますね。だから旅の最中は、曲作りのことはあんまり考えてないんですね。メモしたりはするんですけど、「これを歌詞にしよう」とか常に思ってはいなくて。「あ、この景色、ステキ!」って思った時に、「この言い回しだったら他の人に伝わるかな?」というのはたまにありますけど。
──では、この曲の元になった宮崎旅行を他の人にオススメするとしたら、どう言いますか?
Miyuu 年代によってけっこう違うかなと思ってて、今まさにお母さんに「もう一回宮崎に行ってきたら?」って言ってるんですよ。というのも、人って年齢がだんだん上がるにつれて、歴史とかに興味を持ち始めるじゃないですか。お母さんも御朱印帳を集めたりしてるんですけど、年を重ねたからこそ、深いところを楽しめるようになるのが魅力的だなと思うので、そういうところをプッシュしたいなと思います。あと、私はスピリチュアルなこととかはあまり信じてないんですけど、高千穂に行くと、自然がそうさせているのか、人がそうさせているのかは分からないんですけど、何かパワーを感じたというのは、実際に行ってみたらすごくあったんですよね。「そういうところにぜひ行ってください」って勧めたいです。
──先ほどもお名前が出ましたが、この曲と「ride on」は斎藤誠さんのアレンジですよね。実際にお仕事をされて、いかがでしたか?
Miyuu 最初にお願いした時は「いいよ」って言っていただけるとも思ってなかったんですけど、OKをいただいて。尊敬する大大大先輩なので、お会いする時はすごく緊張したんですけど、実際にお会いしたらいい意味ですごくフランクで、「僕も大分に行ってきたんだよ~!」みたいな感じで旅もすごくお好きらしくて、気づいたら「大先輩のミュージシャン」というよりも、「優しいオッチャン」みたいに感じられてて(笑)、すごく気さくだったのでこちらの緊張もすぐほぐれました。そこからブースに入ってレコーディングだったので、だいぶほぐれた状態で臨めて、もしかしたら誠さんが計算してくださってたのかもしれないんですけど。最初から最後まで、そんな感じでいい雰囲気の中、制作できました。
──制作の過程で、斎藤さんをすごいなと感じたことなどはありましたか?
Miyuu レコーディングの中で、私がちょっと歌いづらいフレーズがあった時に「ここはオクターブ下で歌ってみたら?」と言ってくださったり、その場でいろんな案をポンポンポンポン出してくださって。パーカッションの入れ方も、その場その場で聴いて直す、みたいな感じで、その場の空気感を生かして作り上げていくところがカッコいいなと思いましたね。
──お互いにいい雰囲気の中でやれたようですね。
Miyuu そうですね。私からアレンジについて「もっとこうしてほしい」みたいにお願いすることは結局1回もなくて、むしろその場で「Miyuuちゃん、これ、どっちがいいと思う?」みたいな感じで聞いてくださるので、「私はこっちが好きです」「あ、じゃあこっちでいこうか」という感じで、すごくスムーズにしていただきました。
大分トヨペットマスコット「スマッピー」イメージソング「ride on」とは?
──もう1曲、こちらは大分トヨペットとのタイアップによる「ride on」ですね。マスコットキャラクターの「スマッピー」との動画も公開されていますが、マスコットから「自分のイメージソングを作って」と依頼されるというのも、なかなか珍しい経験ですよね。
Miyuu そうですね(笑)。最初、名前の由来になっている「smile&happy」でいい感じにして、っていうすごくアバウトな注文をスマッピーからいただいたんですよ。で、大分トヨペットさんのキャラクターだから、大分を味わえるような曲にしたいなと思ったんですよ。大分は2日ぐらいあちこち運転して、猿がいっぱいいる高崎山の公園とか、あんまり人がいない穏やかな海辺とか、スマッピーに紹介してもらったスポットをいくつか回ったんですね。基本的にずっと運転していたし、大分トヨペットさんが車の会社ということで、ドライブソングみたいな感じに作りたいなと思って、「ride on」を作る時はBPMから決めていったんです。
──そういうやり方だったんですね。
Miyuu 自分の曲にはあんまりないアップテンポな感じにしようということだけ、大分で決めておいて。その後、東京に戻ってきてからいろいろ足していったという感じですね。ドライブの疾走感みたいなところをキーワードに作りました。
──この曲に「目的地は誰かに選ばせちゃダメよ」という歌詞がありますが、ご自身は旅の目的地はどう決めていますか?
Miyuu その場所に行って何をするかによって、自分で決めたり人に決めてもらったりっていうのが変わるかなって感じですね。その場所で何がしたいみたいなのが私にあれば、もう全部、1日目はここ、2日目はここっていうのを、私が決めないとイヤになっちゃうんですよね。今回、本を作るためにルート決めをしようという時も、最初は「みんなで決めよう!」って感じだったんですけど、やりたいことが増えていきすぎて、結局はほぼほぼ私が決めてました(笑)。旅って、いろんな旅があると思ってて、目的地がその旅の目的じゃない時もあると思うんですよね。「誰と行くか」がすごく大事な時は、私は逆に目的地が決められなくなっちゃうんですよ。その人といくんだったらどこでもいいというか。そういう旅の場合は、決めてもらわないと一生決まらなくなっちゃいます。
──なるほど。今回は、その目的地としての大分は、改めていかがでしたか?
Miyuu 大分は……ホントにひと言で、「温泉がマジで最高」ってことですね(笑)。あんなに湯巡りが楽しいところって他にあるのかなってぐらい、温泉が印象に残ってます。
──大分県自体が、温泉でいろんなアピールをしてますよね。
Miyuu そうですね。「おんせん県」っていうポスターもあちこちで見かけました。高崎山の猿も印象的だったんですけど、大分は最初から温泉のイメージで、最後まで「温泉最高やったな!」って感想でした(笑)。
──温泉はもともとお好きなんですか?
Miyuu 大好きです~! 学生の時にも、温泉に入るために大分に行ったりしていて、何回か行ったことはあったんですよ。温泉がありすぎるので、何回行っても違う温泉に入ってますね。「ひょうたん温泉」というところがオススメですね。けっこう新しい温泉で、セルフ砂風呂とかもできるところなんですよ。
火山噴火! 大ハプニングもあった30日間の車中泊!
──で、先ほどから少しお話にも出ていますが、昨年10月に行った30日間の旅の出来事をまとめた「30DAYS VAN LIFE~Trip on Music~」という本が、5月11日から順次発売中ということですね。
Miyuu そうなんです! この30日間で行ったところ、見たり食べたりしたもの、交流した人々のことなどを写真と文章でまとめてます。宮崎のところはJALさんの「デトックス・トリップ宮崎」のご協力もいただいていて。
──まずこの30日の旅を、改めて振り返るといかがですか?
Miyuu 終わってみたらもう一瞬の出来事みたいな感じだったんですよね。去年の1月ぐらいからずーっと旅のことを毎日考えていたので、9月頃は「もういよいよだ! いよいよだ!」と思ってたのに、10月の1ヵ月間はもう一瞬で過ぎちゃって。運転も、トータルで6000kmぐらいひとりでやってたみたいなんですけど、1ミリも疲れを感じないぐらいの日々でした。
──しかも、運転免許を取ってわりと日が浅いんでしたよね?
Miyuu そうですね。旅行の時点で免許を取って3ヵ月で(笑)。だから初心者マークを貼ってました。
──それで1人で6000kmはすごいですね(笑)。運転は大丈夫だったんですか?
Miyuu 大丈夫でしたよ。事故とか危ないことも全然なかったです。
──なかなか優秀なドライバーだったんですね。
Miyuu そうかもしれません(笑)。10月だったのがよかったなとも思いますね。これからの時期だと暑くてしんどかったりするでしょうし。気候的なことも込みで10月にしようと決めてたんですけどね。やっぱり準備をちゃんとしてた方が、より楽しめるんやろうなっていうのが、今回の旅で改めて分かったことでした。
──その中で、特に印象深いエピソードとかハプニングは?
Miyuu 熊本にいた時、阿蘇山で車中泊してたんですよ。で、朝日を撮ったり乗馬をしたりして「あー、楽しかったね!」って帰っている道中に、阿蘇山が噴火するっていう(笑)。
──それは大変じゃないですか!
Miyuu けっこうビックリしました。噴火を生で見たことがなくて、その時は私が運転してて3人で移動してたんですけど、後ろに乗ってた2人が「毎日こんな黒い煙が上がってんの? すごいなあ!」みたいな話をしてたんですよ。「毎日、黒い煙?」と思ってパッと後ろを見たら、明らかに噴火してて(笑)。「いやいや、これはおかしい」って言ってたらLINEのニュース速報で「阿蘇山噴火」っていうのが来て。すごくいろんな方から「大丈夫ですか?」ってメッセージをもらいました。
──それはかなりなハプニングですね(笑)。
Miyuu すごくレアだったみたいで。黒い煙がかなり上がってたんですけど、地元の人たちはけっこう普通にしてて、何事もないような感じだったので、「あー、やっぱり現地におらな分からんこともいっぱいあんねんな!」と思いましたね。
──先ほど「30日間が一瞬だった」ということでしたが、普通に考えればけっこう長い日数じゃないですか。行く前に思っていたよりも楽だったとか、逆に厳しかったとかはありますか?
Miyuu 一緒に行っていた2人が幼馴染みというか、けっこう小っちゃい時からの友達で、旅の準備段階に入ったら、毎週毎週リモートで「どこに行く?」とか「どれを準備する?」とか打ち合わせしてたんですね。その中で、だんだんお互いのやりたいこととか、旅の中での過ごし方とかがバラバラになってきてて。本来、私がしんどいだろうなと思ってたのは長距離運転の部分とかだったんですけど、フタを開けてみたら運転とか人との出会いとかで悩むよりは、車の中でのコミュニケーションだったり、撮影チームとの意見の違いだったり、そういう部分の方が大変だったなっていう印象なんですよ、振り返ってみたら。映像も本も作品で、私もチームのみんなも「良い作品を作りたい」という思いは同じなんですけど、そのアプローチの方法だったりについて、けっこうすれ違いが多くて。30日間、ほぼ一緒に過ごしている中で、夜中の3時ぐらいまで討論したりとかして(笑)。作品作りの思いのぶつかり合いみたいなのがあって、結果よかったんですけど、旅の間は「こういうことで悩みたいわけじゃないのに!」というジレンマを感じました。
──その旅を本にまとめるためにクラウドファンディングをされてましたよね。2ヵ月ぐらいでめでたく達成されて実現に至ったわけですが、達成までの期間はどんな気持ちでしたか?
Miyuu 今回、自分で企画するクラウドファンディングは2回目だったので、そのしんどさは分かってはいたんですけど、自分の価値が数字として表れるみたいなところがあるじゃないですか。その数字が多ければうれしいし、達成できなければ焦るし……分かってはいるんですけど、やっぱり1日1日すっごいプレッシャーがあって。「これ、達成できなかったら旅でできることが限られちゃうだろうな」とか、「本を作っても、届ける人が少なくなっちゃうんだろうな」とか、運転しながらもずーっと考えてて、サービスエリアに停まるたびに「今、どれぐらいの人が支援してくれてるんだろう」って確認してましたね。
──それは気になりますよね、やっぱり。
Miyuu 気になりますねえ。毎日しんどいっていうのは前回の経験で分かってたんですけど、クラウドファンディングのいいところって、みんなで作り上げるというのがオープンな状態で分かるということと、お金の使い途とかがクリアに見えるところなんですよね。その仕組み自体はすごくステキなものだなと思っているので、そのやり方を選んだんですけど。
──それだけ毎日気になっていただけに、達成できた時の喜びはひとしおだったのでは?
Miyuu ファーストゴールとセカンドゴールという2段階の目標を置いていて、それぞれ350万円と650万円だったんですね。正直、「650万円までは達成できないだろうな」と思ってたんですけど、最後の10日間ぐらいで「ホンマに行くんかな? 行くんかな?」って感じになって、達成できた時、最初は信じられなかったです。でも今度は、そのお金をどうやってちゃんと使おう?っていう、達成してからの新たなプレッシャーを感じました。
今後のライブでは「べしゃり」にも注目!?
──その使い途の一つとして、野外で自然の音の中で録音するという「フィールドレコーディング」もされたんですよね?
Miyuu はい。さっきの2曲とは別に、2曲を。1曲はもともとあった曲で、ライブでは歌ってた曲。もう1曲は旅の間に作った曲で、それを3ヵ所でフィールドレコーディングしました。外でデモを録ったりというのはけっこうやってたんですけど、今回のように本格的に、森の中とかで自然の音を探しながらレコーディングするというのは初めての経験でした。その曲は、本にQRコードがついていて、本を買ってくださった方はそこから聴けるようになっています。
──実際にフィールドレコーディングをやってみて、またその曲が完成してみて、いかがでしたか?
Miyuu 風の音とか、川の音とかの距離感が、マイクを置く場所によってだいぶ変わってくるので、現場では「おお、これ完璧やん!」って思ってたんですけど、東京に帰ってきてスタジオで聴いてみると「ちょっと川の音が多いかなあ」とかがあって、その調整はすごく難しかったですね。レコーディングしてる時は、スタジオの無機質なブースでは感じられないような、地球と一体になったような気持ちで、力を抜いて歌えてるなというのは感じました。
──自然を愛するMiyuuさんにうってつけの手法のように思えるんですが、これからもやっていきたいですか?
Miyuu やっていきたいですね。今回、マイクの位置だったり使う機材だったりと、課題もいろいろ見つかったので、今後はまたガッチリと、「森の中のスタジオ」というのを自分のスタイルとして作れたらいいなと思ってます。最初はちょっとナメてたというか、「自分の耳で聴いて、ここいいなってところにマイク立てたらいいんでしょ」ぐらいに思ってたんですよ。実は全然そうじゃなかったというのを、一回やってみて身に染みて感じたので。
──書籍の制作の作業はいかがでしたか? 大変でした?
Miyuu 大変でした! もう、メッチャ時間がかかりました。曲を作るのと本を作るのって、作り方みたいなところは似てる気がするんですけど、やっぱり全然違うところもあって。曲は全部自分でやってるから、入れたい歌詞があったらそれに合わせてメロディを作るとかできるんですけど、本の場合は「このスペースに何文字以内で」とか決められてるじゃないですか。見せたい写真は決まってるし、そこに文字を入れたら写真のよさが薄れるんじゃないかとかで、けっこう苦戦しました。
──写真選びも大変だったのでは?
Miyuu 写真はけっこう直感で選べたんですよ。だからそこはそんなに大変でもなかったんですけど、そこに載せる文章に苦労しました。今回はトゥーヴァージンズという出版社の方と一緒にやってるんですけど、もし自分ひとりで自費出版してたら、いつまでもかかっちゃって出せてなかったと思います。いろいろアドバイスももらいましたし、指定の量よりもとんでもなく長い文章を書いて「もう削ることはできないです」って言ったものを、いいところだけうまいことかいつまんでくれたりしたので、だいぶ助けられました。
──では改めて、本のオススメポイントは?
Miyuu 本の構成が、「1日目」「2日目」……という感じでちょっと日記っぽくなってるんですけど、その合間に、旅の中で出会った人へのインタビューページが入ってるんですよ。その人のバックグラウンドとかルーツにフォーカスして話を聞いてるんですけど、いろんな人がいて、その人たちの心に触れるみたいなことを意識してページを作っているので、そこを見てほしいなと思います。
──その感想とか反響も楽しみですよね。
Miyuu そうですね! 私、Amazonとかのクチコミを見るのが好きなんですけど、「この本に星何個つけてもらえるんやろ?」って、楽しみにしてます。
──その出版記念イベントが開催されてるんですよね。
Miyuu はい。私の誕生日だった5月8日に先行出版イベントをやって、この後もチョコチョコ決まってるのがあります。トークとミニライブがあるので、楽しんでいただいて、本の感想とかもいただけたらうれしいです。
──また、ライブもいくつか決まってますよね。
Miyuu 5月23日が下北沢、5月30日が竹芝のBANK30という新しい会場、それから6月5日が名古屋でのフェスですね。旅が終わってからめちゃめちゃライブをしてたというわけじゃないので、旅の間にできた曲でまだライブで披露できてないものもあったりするんですよ。そういうのをどんどん新しい自分みたいな感じで見せていけたらいいなと思ってます。あと最近、目の前にあるものとか普段周りにいる人とかの裏側を知ることって大事だなと感じていて。そういうことを書いた曲が、フィールドレコーディングで録った曲の中にもあるんですね。そういう、自分の曲のバックグラウンドだったりとか「これはこういう時にできた曲です」っていうMCの部分も自分のパフォーマンススタイルの一つとして大事にしていきたいなと思っているので、もしかしたら今後のライブは、べしゃりもすごく多くなるかもしれません(笑)。
──それも楽しみですね。また、YouTubeに動画が上がっていた軽バンもいいですね。
Miyuu ありがとうございます! ただ20年前の車なので、あんまり長距離を走るとちょっと不安というところもあって。と言いつつ、こないだ愛媛まで行ってたんですけどね(笑)。今は隠れ家みたいな感じになってます。
──あれはもう完成ですか? もっといじりたい部分とかあったりしますか?
Miyuu 基本的なところは完成なんですけど、ここからは細かいところで、例えばフロアシートを張るとか、実際に使ってて「ここにフックがほしいな」と思ったりするので、そういうところをいじっていこうかなと思ってます。「車に住みたい」っていうのはずっと前から言ってたんですけど、最近はけっこうスタンダードになってきて、夫婦で車に住んでるユーチューバーの方とかいるんですよね。そういう動画を見るのが大好きで、自分もいつか!と思いながら軽バンで車中泊したりしてます。
──そういう面も含めて、またアーティストとしても、これからチャレンジしていきたいことはどんなことですか?
Miyuu もちろん音楽は自分の軸なんですけど、環境問題への取り組みをしている方に音楽を通してたくさん出会ったので、その方たちから勉強しながら、音楽を軸にライフスタイルみたいなものをもっと自分から発信していけたらいいなと思ってます。
──あと、これから行ってみたい場所は?
Miyuu カナダですね。カナダにはずっと憧れがあるんですよ。高校生の時に留学に行けなかったという未練もちょっとあるし、自然がステキだなという印象があるので。もっと落ち着いたらカナダに行きたいですね。以前アメリカに行った時に、グランドキャニオンに向かうルート66で、車に住んでる人たちをいっぱい見たんですよ。カナダにもそういう文化があるんだろうなと思って、カナダで1ヵ月間ぐらい、ネクスト・トリップをできるように頑張りたいと思います。
──夢は広がりますね。その実現にも期待してます。ありがとうございました!
13thデジタル・シングル「Have a good trip~MIYAZAKI~」
2022.05.04 Digital Release
※デトックス・トリップ in 宮崎イメージソング
14thデジタル・シングル 「ride on」
2022.05.18 Digital Release
※大分トヨペットマスコット「スマッピー」イメージソング
「30DAYS VAN LIFE~Trip on Music~」
著者:Miyuu /発売元:トゥーヴァージンズ
2022年5月11日より順次全国販売開始 B5変型版 並製 80P 本体1,800円+税 ISBN 978-4-910352-26-8
https://www.amazon.co.jp/dp/4910352260
【Miyuu Official HP】
https://avex.jp/miyuu/
【Miyuu Instagram(@miyuuamazing)】
https://www.instagram.com/miyuuamazing/
【Miyuu Twitter (@miyuuamazing)】
https://twitter.com/miyuuamazing
宮崎での感動を素直に落とし込んだ「Have a good trip~MIYAZAKI~」
──まずは新曲「Have a good trip~MIYAZAKI~」についてうかがいます。これは「30DAYS VAN LIFE」での、宮崎での体験が元になった曲ということですね。
Miyuu そうですね。30日間、車中泊してたんですけど、そのうち3日間は宮崎のいろんな場所を巡って、それを元に作った曲になります。
──宮崎は初めてだったんですか?
Miyuu いえ、avex所属になってからもMVの撮影で行ってるんですけど、子供の時に年1回、宮崎に行くのが家族行事みたいな感じだったんですよ。でもその頃は、ホテルの子供を預けるスペースにずっといた記憶しかなくて(笑)、ガッツリ宮崎を満喫してたわけじゃなかったんです。今回、じっくり滞在して、宮崎の印象がだいぶ変わりました。
──どんな風にですか?
Miyuu 空港を降りるとヤシの木が生えていて、南国感があって海外に来た気分になれるのが「ザ・宮崎」だと思ってたんですけど、今回は高千穂峡とかも行かせてもらったんですね。そこは神話が有名だったり、すごく昔からある神社とかも見させてもらって、海外っぽさが表面には出てるけど、実はすごく日本っぽさがあって、深い場所だなあと思いました。
──宮崎というと自然というイメージもありますが、それだけでなく、いろいろ体験されたんですね。
Miyuu 神話とかも、あの自然があったからそういうストーリーができていったんやろうなと感じましたね。
──そういった体験を、曲にはどう生かそうと思いましたか?
Miyuu 自分が行った場所とか見たものは、できるだけ素直に歌詞に落とし込みたいなと思っていたので、今回はけっこう固有名詞とかを使わせてもらったりしました。例えば「コノハナキッチン」とかもそうで、そこの冷や汁がメッチャ好きなんですよ! もともと、冷や汁はずっと食べようと思ってたんですけど、コノハナキッチンで出してもらったのをそのまま歌詞に入れて。あと、宮崎空港に降り立ったらステンドグラスがあって、それにもすごく感動したので、それもそのまま入れたり、できるだけ感じたままの思いを素直に入れることを意識して作りました。
──曲調に関してはいかがですか?
Miyuu それも空港に降り立った時のワクワク感とか、ヤシの木の中をドライブしてる時の楽しい感じをそのまま音楽に乗せられたらいいなと思って。けっこうフワッとしたイメージだったんですけど、今回アレンジしていただいた斎藤誠さんにとりあえず思いだけを伝えたら、ああいう感じのアレンジに仕上がって、理想通りだなと思いました。
──曲はスムーズに出来上がりましたか?
Miyuu 旅が終わってから曲作りをし始めたので、そのときの感情を取り戻すのに時間がかかっちゃいました。なので、宮崎で撮った映像を見返したり、本を書く作業をしていたらだんだん思い出してきて、その流れで「よし、今なら何をしたかとか、全部思い出せるかも!」って思えて。で、家の中で作ってたら当時の気持ちが薄まっちゃうので、それを呼び起こすために車で家の近くの河川敷まで行って、外で作曲しました。
──Miyuuさんにとって、この曲のように「旅を歌う」ということの楽しさというのは、どういうところにありますか?
Miyuu 日記を書くようなイメージで、その時に感じたこととか見たものって、記録に残していかないと忘れちゃうと思うんですよね。特に私はすぐ忘れてしまうので(笑)。だから日記を書いて後からそれを振り返って「あ、そういえばあんなことがあったな」とか「この時、こういう感情やったな」と思うのと同じで、音楽も自分が数年前に作った曲を聴いたりすると、「この時はこんな悩みがあったな」とか思い出せるんですね。だから私が旅を歌うことっていうのは、記録していくことの楽しみがあるのかなって思ってます。
──旅の最中の楽しみとはまた違うものですよね?
Miyuu そうですね。旅をしている時は、どちらかというと音楽と切り離されている感じがします。曲作りのためというよりは、自分が知らなかったものを知れるのが旅の醍醐味というか。一番の旅の楽しみはそこかなと思いますね。だから旅の最中は、曲作りのことはあんまり考えてないんですね。メモしたりはするんですけど、「これを歌詞にしよう」とか常に思ってはいなくて。「あ、この景色、ステキ!」って思った時に、「この言い回しだったら他の人に伝わるかな?」というのはたまにありますけど。
──では、この曲の元になった宮崎旅行を他の人にオススメするとしたら、どう言いますか?
Miyuu 年代によってけっこう違うかなと思ってて、今まさにお母さんに「もう一回宮崎に行ってきたら?」って言ってるんですよ。というのも、人って年齢がだんだん上がるにつれて、歴史とかに興味を持ち始めるじゃないですか。お母さんも御朱印帳を集めたりしてるんですけど、年を重ねたからこそ、深いところを楽しめるようになるのが魅力的だなと思うので、そういうところをプッシュしたいなと思います。あと、私はスピリチュアルなこととかはあまり信じてないんですけど、高千穂に行くと、自然がそうさせているのか、人がそうさせているのかは分からないんですけど、何かパワーを感じたというのは、実際に行ってみたらすごくあったんですよね。「そういうところにぜひ行ってください」って勧めたいです。
──先ほどもお名前が出ましたが、この曲と「ride on」は斎藤誠さんのアレンジですよね。実際にお仕事をされて、いかがでしたか?
Miyuu 最初にお願いした時は「いいよ」って言っていただけるとも思ってなかったんですけど、OKをいただいて。尊敬する大大大先輩なので、お会いする時はすごく緊張したんですけど、実際にお会いしたらいい意味ですごくフランクで、「僕も大分に行ってきたんだよ~!」みたいな感じで旅もすごくお好きらしくて、気づいたら「大先輩のミュージシャン」というよりも、「優しいオッチャン」みたいに感じられてて(笑)、すごく気さくだったのでこちらの緊張もすぐほぐれました。そこからブースに入ってレコーディングだったので、だいぶほぐれた状態で臨めて、もしかしたら誠さんが計算してくださってたのかもしれないんですけど。最初から最後まで、そんな感じでいい雰囲気の中、制作できました。
──制作の過程で、斎藤さんをすごいなと感じたことなどはありましたか?
Miyuu レコーディングの中で、私がちょっと歌いづらいフレーズがあった時に「ここはオクターブ下で歌ってみたら?」と言ってくださったり、その場でいろんな案をポンポンポンポン出してくださって。パーカッションの入れ方も、その場その場で聴いて直す、みたいな感じで、その場の空気感を生かして作り上げていくところがカッコいいなと思いましたね。
──お互いにいい雰囲気の中でやれたようですね。
Miyuu そうですね。私からアレンジについて「もっとこうしてほしい」みたいにお願いすることは結局1回もなくて、むしろその場で「Miyuuちゃん、これ、どっちがいいと思う?」みたいな感じで聞いてくださるので、「私はこっちが好きです」「あ、じゃあこっちでいこうか」という感じで、すごくスムーズにしていただきました。
大分トヨペットマスコット「スマッピー」イメージソング「ride on」とは?
──もう1曲、こちらは大分トヨペットとのタイアップによる「ride on」ですね。マスコットキャラクターの「スマッピー」との動画も公開されていますが、マスコットから「自分のイメージソングを作って」と依頼されるというのも、なかなか珍しい経験ですよね。
Miyuu そうですね(笑)。最初、名前の由来になっている「smile&happy」でいい感じにして、っていうすごくアバウトな注文をスマッピーからいただいたんですよ。で、大分トヨペットさんのキャラクターだから、大分を味わえるような曲にしたいなと思ったんですよ。大分は2日ぐらいあちこち運転して、猿がいっぱいいる高崎山の公園とか、あんまり人がいない穏やかな海辺とか、スマッピーに紹介してもらったスポットをいくつか回ったんですね。基本的にずっと運転していたし、大分トヨペットさんが車の会社ということで、ドライブソングみたいな感じに作りたいなと思って、「ride on」を作る時はBPMから決めていったんです。
──そういうやり方だったんですね。
Miyuu 自分の曲にはあんまりないアップテンポな感じにしようということだけ、大分で決めておいて。その後、東京に戻ってきてからいろいろ足していったという感じですね。ドライブの疾走感みたいなところをキーワードに作りました。
──この曲に「目的地は誰かに選ばせちゃダメよ」という歌詞がありますが、ご自身は旅の目的地はどう決めていますか?
Miyuu その場所に行って何をするかによって、自分で決めたり人に決めてもらったりっていうのが変わるかなって感じですね。その場所で何がしたいみたいなのが私にあれば、もう全部、1日目はここ、2日目はここっていうのを、私が決めないとイヤになっちゃうんですよね。今回、本を作るためにルート決めをしようという時も、最初は「みんなで決めよう!」って感じだったんですけど、やりたいことが増えていきすぎて、結局はほぼほぼ私が決めてました(笑)。旅って、いろんな旅があると思ってて、目的地がその旅の目的じゃない時もあると思うんですよね。「誰と行くか」がすごく大事な時は、私は逆に目的地が決められなくなっちゃうんですよ。その人といくんだったらどこでもいいというか。そういう旅の場合は、決めてもらわないと一生決まらなくなっちゃいます。
──なるほど。今回は、その目的地としての大分は、改めていかがでしたか?
Miyuu 大分は……ホントにひと言で、「温泉がマジで最高」ってことですね(笑)。あんなに湯巡りが楽しいところって他にあるのかなってぐらい、温泉が印象に残ってます。
──大分県自体が、温泉でいろんなアピールをしてますよね。
Miyuu そうですね。「おんせん県」っていうポスターもあちこちで見かけました。高崎山の猿も印象的だったんですけど、大分は最初から温泉のイメージで、最後まで「温泉最高やったな!」って感想でした(笑)。
──温泉はもともとお好きなんですか?
Miyuu 大好きです~! 学生の時にも、温泉に入るために大分に行ったりしていて、何回か行ったことはあったんですよ。温泉がありすぎるので、何回行っても違う温泉に入ってますね。「ひょうたん温泉」というところがオススメですね。けっこう新しい温泉で、セルフ砂風呂とかもできるところなんですよ。
火山噴火! 大ハプニングもあった30日間の車中泊!
──で、先ほどから少しお話にも出ていますが、昨年10月に行った30日間の旅の出来事をまとめた「30DAYS VAN LIFE~Trip on Music~」という本が、5月11日から順次発売中ということですね。
Miyuu そうなんです! この30日間で行ったところ、見たり食べたりしたもの、交流した人々のことなどを写真と文章でまとめてます。宮崎のところはJALさんの「デトックス・トリップ宮崎」のご協力もいただいていて。
──まずこの30日の旅を、改めて振り返るといかがですか?
Miyuu 終わってみたらもう一瞬の出来事みたいな感じだったんですよね。去年の1月ぐらいからずーっと旅のことを毎日考えていたので、9月頃は「もういよいよだ! いよいよだ!」と思ってたのに、10月の1ヵ月間はもう一瞬で過ぎちゃって。運転も、トータルで6000kmぐらいひとりでやってたみたいなんですけど、1ミリも疲れを感じないぐらいの日々でした。
──しかも、運転免許を取ってわりと日が浅いんでしたよね?
Miyuu そうですね。旅行の時点で免許を取って3ヵ月で(笑)。だから初心者マークを貼ってました。
──それで1人で6000kmはすごいですね(笑)。運転は大丈夫だったんですか?
Miyuu 大丈夫でしたよ。事故とか危ないことも全然なかったです。
──なかなか優秀なドライバーだったんですね。
Miyuu そうかもしれません(笑)。10月だったのがよかったなとも思いますね。これからの時期だと暑くてしんどかったりするでしょうし。気候的なことも込みで10月にしようと決めてたんですけどね。やっぱり準備をちゃんとしてた方が、より楽しめるんやろうなっていうのが、今回の旅で改めて分かったことでした。
──その中で、特に印象深いエピソードとかハプニングは?
Miyuu 熊本にいた時、阿蘇山で車中泊してたんですよ。で、朝日を撮ったり乗馬をしたりして「あー、楽しかったね!」って帰っている道中に、阿蘇山が噴火するっていう(笑)。
──それは大変じゃないですか!
Miyuu けっこうビックリしました。噴火を生で見たことがなくて、その時は私が運転してて3人で移動してたんですけど、後ろに乗ってた2人が「毎日こんな黒い煙が上がってんの? すごいなあ!」みたいな話をしてたんですよ。「毎日、黒い煙?」と思ってパッと後ろを見たら、明らかに噴火してて(笑)。「いやいや、これはおかしい」って言ってたらLINEのニュース速報で「阿蘇山噴火」っていうのが来て。すごくいろんな方から「大丈夫ですか?」ってメッセージをもらいました。
──それはかなりなハプニングですね(笑)。
Miyuu すごくレアだったみたいで。黒い煙がかなり上がってたんですけど、地元の人たちはけっこう普通にしてて、何事もないような感じだったので、「あー、やっぱり現地におらな分からんこともいっぱいあんねんな!」と思いましたね。
──先ほど「30日間が一瞬だった」ということでしたが、普通に考えればけっこう長い日数じゃないですか。行く前に思っていたよりも楽だったとか、逆に厳しかったとかはありますか?
Miyuu 一緒に行っていた2人が幼馴染みというか、けっこう小っちゃい時からの友達で、旅の準備段階に入ったら、毎週毎週リモートで「どこに行く?」とか「どれを準備する?」とか打ち合わせしてたんですね。その中で、だんだんお互いのやりたいこととか、旅の中での過ごし方とかがバラバラになってきてて。本来、私がしんどいだろうなと思ってたのは長距離運転の部分とかだったんですけど、フタを開けてみたら運転とか人との出会いとかで悩むよりは、車の中でのコミュニケーションだったり、撮影チームとの意見の違いだったり、そういう部分の方が大変だったなっていう印象なんですよ、振り返ってみたら。映像も本も作品で、私もチームのみんなも「良い作品を作りたい」という思いは同じなんですけど、そのアプローチの方法だったりについて、けっこうすれ違いが多くて。30日間、ほぼ一緒に過ごしている中で、夜中の3時ぐらいまで討論したりとかして(笑)。作品作りの思いのぶつかり合いみたいなのがあって、結果よかったんですけど、旅の間は「こういうことで悩みたいわけじゃないのに!」というジレンマを感じました。
──その旅を本にまとめるためにクラウドファンディングをされてましたよね。2ヵ月ぐらいでめでたく達成されて実現に至ったわけですが、達成までの期間はどんな気持ちでしたか?
Miyuu 今回、自分で企画するクラウドファンディングは2回目だったので、そのしんどさは分かってはいたんですけど、自分の価値が数字として表れるみたいなところがあるじゃないですか。その数字が多ければうれしいし、達成できなければ焦るし……分かってはいるんですけど、やっぱり1日1日すっごいプレッシャーがあって。「これ、達成できなかったら旅でできることが限られちゃうだろうな」とか、「本を作っても、届ける人が少なくなっちゃうんだろうな」とか、運転しながらもずーっと考えてて、サービスエリアに停まるたびに「今、どれぐらいの人が支援してくれてるんだろう」って確認してましたね。
──それは気になりますよね、やっぱり。
Miyuu 気になりますねえ。毎日しんどいっていうのは前回の経験で分かってたんですけど、クラウドファンディングのいいところって、みんなで作り上げるというのがオープンな状態で分かるということと、お金の使い途とかがクリアに見えるところなんですよね。その仕組み自体はすごくステキなものだなと思っているので、そのやり方を選んだんですけど。
──それだけ毎日気になっていただけに、達成できた時の喜びはひとしおだったのでは?
Miyuu ファーストゴールとセカンドゴールという2段階の目標を置いていて、それぞれ350万円と650万円だったんですね。正直、「650万円までは達成できないだろうな」と思ってたんですけど、最後の10日間ぐらいで「ホンマに行くんかな? 行くんかな?」って感じになって、達成できた時、最初は信じられなかったです。でも今度は、そのお金をどうやってちゃんと使おう?っていう、達成してからの新たなプレッシャーを感じました。
今後のライブでは「べしゃり」にも注目!?
──その使い途の一つとして、野外で自然の音の中で録音するという「フィールドレコーディング」もされたんですよね?
Miyuu はい。さっきの2曲とは別に、2曲を。1曲はもともとあった曲で、ライブでは歌ってた曲。もう1曲は旅の間に作った曲で、それを3ヵ所でフィールドレコーディングしました。外でデモを録ったりというのはけっこうやってたんですけど、今回のように本格的に、森の中とかで自然の音を探しながらレコーディングするというのは初めての経験でした。その曲は、本にQRコードがついていて、本を買ってくださった方はそこから聴けるようになっています。
──実際にフィールドレコーディングをやってみて、またその曲が完成してみて、いかがでしたか?
Miyuu 風の音とか、川の音とかの距離感が、マイクを置く場所によってだいぶ変わってくるので、現場では「おお、これ完璧やん!」って思ってたんですけど、東京に帰ってきてスタジオで聴いてみると「ちょっと川の音が多いかなあ」とかがあって、その調整はすごく難しかったですね。レコーディングしてる時は、スタジオの無機質なブースでは感じられないような、地球と一体になったような気持ちで、力を抜いて歌えてるなというのは感じました。
──自然を愛するMiyuuさんにうってつけの手法のように思えるんですが、これからもやっていきたいですか?
Miyuu やっていきたいですね。今回、マイクの位置だったり使う機材だったりと、課題もいろいろ見つかったので、今後はまたガッチリと、「森の中のスタジオ」というのを自分のスタイルとして作れたらいいなと思ってます。最初はちょっとナメてたというか、「自分の耳で聴いて、ここいいなってところにマイク立てたらいいんでしょ」ぐらいに思ってたんですよ。実は全然そうじゃなかったというのを、一回やってみて身に染みて感じたので。
──書籍の制作の作業はいかがでしたか? 大変でした?
Miyuu 大変でした! もう、メッチャ時間がかかりました。曲を作るのと本を作るのって、作り方みたいなところは似てる気がするんですけど、やっぱり全然違うところもあって。曲は全部自分でやってるから、入れたい歌詞があったらそれに合わせてメロディを作るとかできるんですけど、本の場合は「このスペースに何文字以内で」とか決められてるじゃないですか。見せたい写真は決まってるし、そこに文字を入れたら写真のよさが薄れるんじゃないかとかで、けっこう苦戦しました。
──写真選びも大変だったのでは?
Miyuu 写真はけっこう直感で選べたんですよ。だからそこはそんなに大変でもなかったんですけど、そこに載せる文章に苦労しました。今回はトゥーヴァージンズという出版社の方と一緒にやってるんですけど、もし自分ひとりで自費出版してたら、いつまでもかかっちゃって出せてなかったと思います。いろいろアドバイスももらいましたし、指定の量よりもとんでもなく長い文章を書いて「もう削ることはできないです」って言ったものを、いいところだけうまいことかいつまんでくれたりしたので、だいぶ助けられました。
──では改めて、本のオススメポイントは?
Miyuu 本の構成が、「1日目」「2日目」……という感じでちょっと日記っぽくなってるんですけど、その合間に、旅の中で出会った人へのインタビューページが入ってるんですよ。その人のバックグラウンドとかルーツにフォーカスして話を聞いてるんですけど、いろんな人がいて、その人たちの心に触れるみたいなことを意識してページを作っているので、そこを見てほしいなと思います。
──その感想とか反響も楽しみですよね。
Miyuu そうですね! 私、Amazonとかのクチコミを見るのが好きなんですけど、「この本に星何個つけてもらえるんやろ?」って、楽しみにしてます。
──その出版記念イベントが開催されてるんですよね。
Miyuu はい。私の誕生日だった5月8日に先行出版イベントをやって、この後もチョコチョコ決まってるのがあります。トークとミニライブがあるので、楽しんでいただいて、本の感想とかもいただけたらうれしいです。
──また、ライブもいくつか決まってますよね。
Miyuu 5月23日が下北沢、5月30日が竹芝のBANK30という新しい会場、それから6月5日が名古屋でのフェスですね。旅が終わってからめちゃめちゃライブをしてたというわけじゃないので、旅の間にできた曲でまだライブで披露できてないものもあったりするんですよ。そういうのをどんどん新しい自分みたいな感じで見せていけたらいいなと思ってます。あと最近、目の前にあるものとか普段周りにいる人とかの裏側を知ることって大事だなと感じていて。そういうことを書いた曲が、フィールドレコーディングで録った曲の中にもあるんですね。そういう、自分の曲のバックグラウンドだったりとか「これはこういう時にできた曲です」っていうMCの部分も自分のパフォーマンススタイルの一つとして大事にしていきたいなと思っているので、もしかしたら今後のライブは、べしゃりもすごく多くなるかもしれません(笑)。
──それも楽しみですね。また、YouTubeに動画が上がっていた軽バンもいいですね。
Miyuu ありがとうございます! ただ20年前の車なので、あんまり長距離を走るとちょっと不安というところもあって。と言いつつ、こないだ愛媛まで行ってたんですけどね(笑)。今は隠れ家みたいな感じになってます。
──あれはもう完成ですか? もっといじりたい部分とかあったりしますか?
Miyuu 基本的なところは完成なんですけど、ここからは細かいところで、例えばフロアシートを張るとか、実際に使ってて「ここにフックがほしいな」と思ったりするので、そういうところをいじっていこうかなと思ってます。「車に住みたい」っていうのはずっと前から言ってたんですけど、最近はけっこうスタンダードになってきて、夫婦で車に住んでるユーチューバーの方とかいるんですよね。そういう動画を見るのが大好きで、自分もいつか!と思いながら軽バンで車中泊したりしてます。
──そういう面も含めて、またアーティストとしても、これからチャレンジしていきたいことはどんなことですか?
Miyuu もちろん音楽は自分の軸なんですけど、環境問題への取り組みをしている方に音楽を通してたくさん出会ったので、その方たちから勉強しながら、音楽を軸にライフスタイルみたいなものをもっと自分から発信していけたらいいなと思ってます。
──あと、これから行ってみたい場所は?
Miyuu カナダですね。カナダにはずっと憧れがあるんですよ。高校生の時に留学に行けなかったという未練もちょっとあるし、自然がステキだなという印象があるので。もっと落ち着いたらカナダに行きたいですね。以前アメリカに行った時に、グランドキャニオンに向かうルート66で、車に住んでる人たちをいっぱい見たんですよ。カナダにもそういう文化があるんだろうなと思って、カナダで1ヵ月間ぐらい、ネクスト・トリップをできるように頑張りたいと思います。
──夢は広がりますね。その実現にも期待してます。ありがとうございました!
撮影 長谷英史
13thデジタル・シングル「Have a good trip~MIYAZAKI~」
2022.05.04 Digital Release
※デトックス・トリップ in 宮崎イメージソング
14thデジタル・シングル 「ride on」
2022.05.18 Digital Release
※大分トヨペットマスコット「スマッピー」イメージソング
「30DAYS VAN LIFE~Trip on Music~」
著者:Miyuu /発売元:トゥーヴァージンズ
2022年5月11日より順次全国販売開始 B5変型版 並製 80P 本体1,800円+税 ISBN 978-4-910352-26-8
https://www.amazon.co.jp/dp/4910352260
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- WRITTEN BY高崎計三
- 1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。