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PANDORA

なぜ“小室哲哉”は“浅倉大介”と新ユニット“PANDORA”を始めたのか?

2017.09.06
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音楽
小室哲哉と浅倉大介(access)がユニット“PANDORA(パンドラ)”を結成した。


初のお披露目となるステージは、9/16『Ultra Japan 2017』というのだから驚かされる。
そもそも、EDMカルチャーのトップを走り続けるカルヴィン・ハリスやデヴィッド・ゲッタのサウンドを聴いていると90年代や00年前半のglobeを彷彿とさせることがあった。


小室哲哉自身が1984年からシンセサイザーを活用したエレクトリック・ダンス・ミュージックをやり続けてきた先駆者なのだ。


access での活躍はもちろんT.M.Revolutionのプロデューサーとしても知られている“浅倉大介”は、19歳の頃からTM NETWORKのシンセサイザー・マニピュレーターを担当していた小室とは師弟関係にある間柄だ。TMN時代には、小室はライヴ経験のなかった浅倉をシンセベースとしてライヴメンバーに抜擢している。さらに、彼の1stソロアルバムとなった『LANDING TIMEMACHINE』(※TM NETWORKの楽曲をカバー)は、1991年に小室の後押しによってリリースされたアイテムである。

2人が出会って30年目にして結成した“デジタルオーケストラ”をキーワードとしたプロジェクト=“PANDORA”。オフィシャルで発表されたメッセージ、“PANDORA=箱にはヴォーカリスト、アート、さらにはテクノロジーとのコラボレーションによる新しいエンタテインメントが詰まっている”というポイントも気になるところだ。音楽とは、どんなカルチャーやテクノロジーとも溶け合うエンタテインメントであることを未来志向で示唆してくれる。


「まずは尊敬する先生(小室哲哉)とのユニットです、ボク自身すごく嬉しいし、 とても楽しみです。先生の考える、これまで、今、これからのデジタルミュージック、 音楽シーンへのアプローチを、1つでも多くこのPANDORAで実現させたいと思います。」(浅倉)



「今の音楽シーンはジャンルがどうとか、形態がどうとか関係ない状況にあります。テクノロジーの進化により環境に合わせて、データを創ることが可能になりました。浅倉君は最高のシンセサイザープログラマーであり、キーボーディスト。僕の文科系のイメージを理科系の彼が音楽という形にする。作業は少しのコンピューターがあればどこでもできる。今回のユニットPANDORAの概念は”箱”です。その扉を開けて、いろいろなもの、音楽が出てくるのを楽しみにしててください。」(小室)


9/3に配信スタートした第1弾配信シングル「Be The One feat. Beverly」はフィーチャリング・ヴォーカルに、先日アリアナ・グランデの来日公演でサポートアクトに大抜擢された“Beverly(ビバリー)”を起用していることにも注目したい。

【過去参照記事:衝撃のハイトーンヴォイス! “Beverly”とは!?】

今年の『a-nation 2017』のステージでも、初見のオーディエンスを圧倒するステージをみせていた逸材だ。TK(小室)&DA(浅倉)プロデュースによるプロジェクトで、改めて日本の音楽シーンで彼女の才能が幅広く発見されることだろう。2017年を代表する歌姫と、感情をアップリフトしてくれる中毒性高いヒットチューンの誕生だ。
 
小室哲哉といえば、80年代には渡辺美里「My Revolution」のヒットにはじまり、松田聖子、岡田有希子、小泉今日子、中山美穂、荻野目洋子、原田知世、宮沢りえなどトップ・アイドルへの提供楽曲。そして自身が参加したTM NETWORKによる80年代~90年代を駆け抜けた活躍など、現在に通じるJ-POPの元祖といっても過言ではないレジェンダリーな存在である。



90年代はエイベックスの躍進にもつながったtrfのブレイクはもちろん、篠原涼子、安室奈美恵、hitomi、globe、H Jungle with.t、華原朋美、鈴木あみなど小室ファミリー・ムーヴメントが勃発したことも忘れられない。今もなお歌い継がれる名曲がたくさん存在する。



2000年代以降もAAAへの提供曲「逢いたい理由」がチャート1位を記録。TM NETWORKをストーリーテイリング(物語化)されたシアトリカル(演劇的)なステージワークで再起動するなど、約40年間にわたり音楽シーンの最前線を突き進んでいる日本を、アジアを代表するプロデューサーであり音楽家だ。



昨今、インターネットの浸透もあり国民的ヒットが生まれづらい時代と言われているが、“TK×DA+新鋭 Beverly with 仮面ライダー”という魔法めいた計算式。

「仮面ライダービルド」主題歌『Be The One』9/3より配信スタート!


9/3から放送がスタートした通算19作目となる『仮面ライダービルド』の主題歌への起用という最強のタイアップ。まさに親子3世代、老若男女、細分化されつつある世代間コミュニティーを超えていくであろう“PANDORA”という音楽の奇跡に注目したい。下記では、さらに“PANDORA”に注目したい楽しみ方ポイントをまとめておこう。


【注目1:ユニット&プロデュース、トラックメーカーの元祖】

小室哲哉は、バンドブーム全盛期の80年代に、TM NETWORKのデビューで“ユニット”という概念を打ち出した。さらに、作曲&編曲を手がける“トラックメーカー”、さらにアーティスト・ブランディングをも手がける“プロデューサー”という概念も浸透させた存在だ。後に、師弟関係のあった浅倉大介はもちろん、影響を受けたことを告白している中田ヤスタカなど、多くのフォロワーを生み出し続けている。なお、trfではCDバブル全盛期に現場の表現者側に着目したヴォーカリスト×ダンサー×DJという21世紀的なスタイルをいち早く提示している。そんな小室哲哉が“PANDORA”で打ち出したのがトラックメーカー2名のユニットでのコライトと呼ばれる楽曲(作詞・作曲・編曲)を共作するシステムだ。小室哲哉によるメロディーや歌詞の魅力、そこに浅倉大介のクリエイティヴはもちろん、デジタライズされた最新アレンジメント・テクニックなコラボレーション。楽曲の世界観に応じたヴォーカリストの起用。日本の音楽シーンに、新たな価値感を提示しようとしている。


【注目2:ベースとなったデモ音源はロンドンで制作!?】

「Be The One feat. Beverly」は、今年3月に小室哲哉がリリースしたソロアルバム『JOBS♯1』に収録されたロンドンで生み出された「HERE WITHOUT YOU」をベースとしている(と思われる)。

ドラマティックな旋律はglobeを彷彿させてくれる進化系TKサウンドに注目したい。EDMカルチャーでは、DJプレイという現場を通じてオーディエンスの反響によって楽曲が常に進化し続けることでも知られている。配信が軸となる今の時代にふさわしい音楽の楽しみ方だ。


【注目3:デジタライズされた先鋭的なライヴ・スタイル】

小室哲哉と浅倉大介によるユニットで注目したいのが2人ともDJブースで横並びでミキサーやシンセサイザーを操っていることだ。小室はかつてケミカル・ブラザーズ、ダフト・パンクやアンダーワールドに大きなシンパシーを抱いていたが、globeでは楽器演奏をすることなくミキサーを駆使してリアルタイムに楽曲をリミックスするライヴをいち早く行っていたことがある。こういったコンサート・スタイルは昨年TKが横浜アリーナで競演した90年代に音楽シーンにイノベーションを起こしたケミカル・ブラザーズ、そしてダフト・パンクやアンダーワールドはもちろん、今ではEDMアーティストによるライヴでは当たり前の光景となった。浅倉もaccessでこういったデジタライズされた先鋭的な実験スタイルでのライヴを積極的に続けている。“PANDORA”が『Ultra Japan 2017』で初ステージを行うのは必然といえるだろう。


【注目4:世界を超えていくダンスミュージック文化】

小室哲哉はかつて、trfのヒット後1994年から1996年にかけてEUROGROOVEというユニットをプロデュースしていた。海外に向けたプロジェクトであり、今振り返るならばEDM的に多国籍でメンバーが流動的なエレクトリック・ダンス・ミュージックを生み出していた早すぎた存在だ。なお、ヴォーカリストには世界的ポップスターのカイリー・ミノーグの妹、ダニー・ミノーグが参加していたことでも知られている。今回の“PANDORA”での「Be The One feat. Beverly」は日本語曲ではあるが、ヴォーカリストに英語が堪能な“Beverly”の起用していたことがEUROGROOVEを思い出させてくれた。なお、TM NETWORKも結成以前の初期コンセプトでは、オーストラリア国籍のマイクというヴォーカリストを起用してスタートしようとしていたというのだから小室のぶれない姿勢には驚かされる(※ビザの都合で実現には至らず)。


【注目5:貴水博之、小林克也という音楽的既視感】

“PANDORA”による「Be The One feat. Beverly」は『仮面ライダービルド』の主題歌だが、前作『仮面ライダーエグゼイド』では、accessのヴォーカリスト貴水博之が真のラスボス、仮面ライダークロノス役として出演していた。最終話、仮面ライダークロノスが倒され平和が戻った後の次回予告で、突如、浅倉大介らしいシンセフレーズが耳に飛び込んできたことは偶然ではないのかもしれない。ちなみに、最近の仮面ライダーのベルトは喋るのが定番なのだが、『仮面ライダービルド』では小室哲哉もリスペクトする日本を代表するDJ、小林克也(※『ベストヒットUSA』でお馴染み)が決めの変身フレーズなどのトークを担当している(※以前はクリス・ペプラー、影山ヒロノブなども参加)。あと、細かい点では『仮面ライダービルド』には政府側の役回りで“氷室”という名前が登場していたが、さすがにそれは深読みしすぎか。とはいえ、80年代~90年代文化に影響を受けてきたスタッフが制作側に増えつつあることの証なのかもしれない。
 
 
【“PANDORA”オフィシャルサイト】
http://avex.jp/pandora/

【Beverlyオフィシャルサイト】 
http://avex.jp/beverly/
 
ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
WRITTEN BYふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Yahoo!ニュース、J-WAVE、ミュージックマガジン、Spotify、KKBOX、mu-mo、音楽主義などで書いたり喋ったり選曲したり考えたりしてます。著書は『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』〈ダイヤモンド社〉
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